【いない、大好きな人】










 眩しさに、うっすらと目を開ける。

「ん・・・・・」

「「「由乃!!」」」

 わたしのお父さん、お母さん、令ちゃんの声が聞こえた。

 それを聞きながら、わたしは初めて右羽さんと会った時も、こんな感じだったな。と思い出す。

「「「「由乃ちゃん!!」」」」

「「由乃さん!」」

 あれ?

 他のみんなの声も聞こえる。

 目を開ければ、そこにいたのは懐かしいメンバー。

 でも

 違和感。

 大切な人が、足りない。

 あの人がいない。

「・・・・右羽さんは?」

 令ちゃんへと顔を向けて聞いたその瞬間。

 皆の顔が、一気に強張った。

「・・・・・右羽ちゃんは、手術中なんだ」

「え?」

 どういう事?

 手術中って、どういう意味?

「なんで?」

 自分でもビックリするくらい、わたしの声は震えていた。

「だって、最後にあった時、言ってたんだよ?手術が終わったら、お見舞いに、来てくれるって・・・・っ」

 さっきだって・・・・・

 そうだよ!

 さっきだって!

「さっきだって!右羽さんは行くって言ったのよ!?」

「「「「「「「「「さっき?」」」」」」」」」

「さっきだよ!わたしが暗い中にいて迷ってた時!右羽さんが迎えに来てくれて・・・・・・・!!」

 そこで、はたと気づく。

 さっきって、何処・・・・?

「迎えに来てくれたって・・・・、どういう事?由乃さん・・・」

 志摩子さんが、わたしに近づいてきた。

 その瞳は、縋るようだった。

 わたしは、その瞳を見る事が出来なくて、目を逸らしてしまった。

「目が、覚める前。わたし、闇の中にいて、周りに何も見えなくて。暗くて、寂しくて、独りぼっちで、
嫌だった・・・・・。助けてって、叫んだの。右羽さん、助けてって・・・・そうしたら・・・・・・・」

 手が、震えた。

「そうしたら、右羽さんが来てくれたの。右羽さん、迎えに来たって・・・・。みんなが待ってるから、行
こうって・・・・・」

 なぜだか、涙が溢れてきた。

 違う

 理由なんて、わかってる

 認めたく、ないんだ

「右羽さんと一緒に歩いてたら、扉があって・・・・・右羽さん、わたしがその扉の中にちゃんと入るまで、
見てるって・・・・。一緒に行こうって言ったら、後でちゃんと行くから、大丈夫だよって・・・・・っ」

 誰も、何も言わずに、わたしの話を聞いていた。

「そしたら、ドアが閉まる瞬間に・・・・・・・『由乃、バイバイ』って・・・・・・・」

 わたしの両親以外、全員が下を向いた。

「・・・・・ドアが閉まって・・・・右羽さんを呼んだのに、答えてくれなくて・・・・・・ドアを叩いたのに・・・・答
えてくれなくて・・・・・・ドアが・・・・・消えちゃったの・・・・・」

 違う、よね?

 わたしの、思い違いだよね?

 こんなの、夢だよね?

 実際には、関係、無いよね?

 右羽さん・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・

 ああ、そうよ。

 これは、現実じゃないのよ。

 わたし、きっとまだ夢の中にいるんだ。

「・・・・・・・これは、夢だよね?令ちゃん」

「由乃・・・・・」

 なんで?

 何で、そんな哀しい顔をするの?

「明日になったら、右羽さん、いつもみたいに笑ってくれるよね!」

 令ちゃんは、答えてくれない。

「おめでとうって、言ってくれるよね!?」

「・・・・・・・・・・・・・・っ!」

 やめて!

 泣きそうな顔をしないで!!

「令ちゃん!そうだよね!!」

 なんで!

 何で答えてくれないの!?

「答えてよ!!令ちゃん!!!」

 言ってよ!!

 そうだね。って、言ってよ!!

「令ちゃん!!!」

 何で、答えてくれないの!!?

 その瞬間、わたしの意識はブラックアウトした。

 
 真っ白な空間の中で

 わたしは、右羽さんの笑顔を見た気がした

『おかえり、由乃』

 そう言って、微笑んでいてくれた気がしたの   






       

 

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