【闇の中で】












 静かな、闇だけが周りを支配していた。

 何の概念もなく、何の思いもない。

 そこに、わたしは漂っていた。

 ここは、どこ?

 真っ黒な空間で、わたしは1人ぽつんと立っていた。

 孤独

 今のわたしは、まさにそれだった。

 怖い

 寂しい

 悲しい

 1人は

 嫌だ

 ここは何処?

 何処なの?

 いつも笑っている、あの人は何処にいるの?

 いつも、傍にいてくれるあの人は、何処にいるの?

 こんな所、嫌だ

 助けて

 助けてよ!

 右羽さん!!

 右羽さんの名前を、叫んだ時だった。

 明るい光が、急に辺りを埋め尽くしたのは。

 眩しさに、慌てて目を腕で庇う。

 ―――しのちゃん

 右羽さん!!

 大好きな、あの人の声が聞こえた。

 わたしは、眩しい中で、目を開けようとした。

 右羽さん!

 何処にいるの!

 右羽さん!!

 ―――わたしは、ここだよ。しのちゃん

 全体に響くような声。

 どこから聞こえているのか、まったくわからなかった。

 それでも、あの優しい声は聞こえる。

 ―――しのちゃん、そっちじゃないよ。こっちだよ

 振り向けば、右羽さんがそこにいた。

 あの、優しい笑みを浮かべて、そこにいた。

 でも、何で羽なんて生えているの?

 右羽さん、羽が生えてるわよ?

 確かに、右羽さんくらいに優しかったら、羽が生えてても違和感ないけど、なんか変よ?

 ―――えっとね、しのちゃんを迎えに来たの

 わたしを?

 それが、羽が生えている事と関係があるの?

 ―――まるありだよ〜

 ―――羽根がないと、しのちゃんを迎えに来られなかったの

 ―――だから、行こう。みんなが待ってるよ!

 うん!

 右羽さん、ありがとうね!

 ―――良いの良いの。でも、何かおごってもらわないとね〜

 うわ〜、ちゃっかりしてる

 ―――当然の報いです!

 はいはい。

 でも、どっちに行けばいいの?

 ―――こっちだよ!

 右羽さんが、わたしに向かって手を伸ばす。

 わたしは、その手をすぐに掴んだ。

 右羽さん、子供みた〜い。手を繋ぎたがるなんて

 ―――子供だも〜ん。しのちゃんだって、十分子供じゃん!

 はいはい、そうね

 ―――流さないでよ〜。本当に子供のくせに!

 わかったから、引っ張らないで

 ―――だぁめ!しのちゃん遅いんだもん!!

 そう?

 ―――そうそう!

 あ、あそこ?

 なんか、眩しいわね

 ―――そうかな?大丈夫だよ!ほら、早く!

 わかってるってば!

 でも、本当に眩し過ぎ

 ―――そんなことより、早く〜!

 もう、わかってるわよ

 ―――その扉の中に入ってね!

 ここ?

 ―――そう

 右羽さんは?行かないの?

 ―――行くけど、しのちゃんがちゃんと中に入るまで見てないと

 ―――大丈夫!後でちゃんと行くから!!

 そこまでしなくても、ちゃんと中に入るわよ

 ―――良いから良いから!

 まったくもう

 苦笑しながら、ドアを開けて中に入り、ドアを閉めようとした時。

 ―――由乃、バイバイ・・・・・

 え?

 右羽さんの方を振り返ろうとした時、向こうから急に強い風が吹いてきて、その扉は無情にも閉まっ
てしまった。

 右羽さん!!

 右羽さん!!?

 扉を叩く。

 でも、その扉は段々と透けてきて、最後には消えてしまった。

 右羽さん!!

 叫んでも叫んでも

 さっきみたいに、右羽さんは現れてくれない。

 どうして?

 何処にいるの!?

 右羽さん!!

 叫ぶと同時に、右羽さんとこちらにやってきた時よりも眩しい光が、わたしを包み込んだ。
         






 

 

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