嬉しかった。 凄く、凄く嬉しかったの。 巳星ちゃんが私を信じていてくれたことも。 蓉子や聖が、私を信じていてくれたことも。 令達が、ああいってくれたことも。 最近よそよそしいクラスメイト達にいつも声をかけてくる子達。 周りで囁かれる噂。 援助交際。 何故わかってくれないの? 私が、そんな事をするように見えるというの? あなた達には、私がそういう風に見えていたの? 何度、噂をしながら私を軽蔑の眼差しで見てくる子達に、言いたかっただろう。 確かに、指導室に呼び出されてみたいと巳星ちゃんや聖に言ったことがあるわ。 それは本心。 それでも、向けられる視線に悲しくなった。 この年の頃の女の子達が喜びそうな噂。 心のない子達の噂。 胃が痛む事も、最近はあった。 ただ、唯一救いだったのは、巳星ちゃん達がその噂を知らないらしいと言うことだった。 元々、巳星ちゃんは噂に疎い子だし。 だから、みんなは普通だった。 私が普通というのも変だけれどね。 けれど、今日、私は呼び出された。 そうなれば、噂にいくら疎い巳星ちゃんでも知るだろう。 私に関して、どんな噂が流れているのかを。 なんと言われるのだろう。 指導室にいた教師達に本当のことを話ながら、そればかり考えていた。 誰も知らないかもしれないけれど、私は巳星ちゃんにあの軽蔑の瞳で見られたら私はきっと死にた いと思うだろう。 それほど、私はあの子に惚れているから。 やっと、手の届く所にきたあの子。 あの子がリリアンに現れるまでの数年間。 私はずっと、あの子のことを考えていたから。 そんなあの子に、冷たい目で見られたら生きていけない。 絶対に、そう思う。 話を終えてドアノブを握る。 その手に、汗をかいているのがわかった。 もしこのドアを開けたら、あの子はいるかしら? もしいて、私を見る時にあの目をされたらどうすれば良いの? 私は、その目で見られてもいつものように対応が出来る? その瞳を、ちゃんと見返すことが出来る? 自分自身に問いかけ、いつもの何倍もの硬い体でドアを開けた。 その途端に、聞こえてきたあの子の言葉・・・・・・・・・。 「男と一緒にいたからって、何で援助交際って思うわけ?兄弟とか、友人とか、父親とか、何で初め にそれを思い浮かばない?」 どこか、怒ったような声質。 私は下に向けていた目線をあげ、声が聞こえてきた方向へと目をむけた。 そこには、眉をよせた巳星ちゃんの姿。 「男と一緒にいる=援助交際って、その人に失礼じゃない?」 珍しい。 巳星ちゃんが、わかるくらいに怒ったその様子は。 巳星ちゃんは基本的に、感情をあまり表に出さない子だから。 この1年間、一緒にいる私達でさえも何を思っているのかわからないことが良くあるから。 そんな彼女が、私達にわかるくらいに怒っている。 「君らが見てきた鳥居江利子は、そういうことをする人物?令だって、自分の姉(スール)だろう。 由乃達だって、一緒に今までいたでしょうが。それなのに、本当かわからない噂に踊らされて・・・・・・」 バカバカしい。 そんな声が聞こえてきそうなため息を、巳星ちゃんがはいた。 その言葉に、私は今までの不安を消し去ることが出来た。 そうだったわね。 彼女は、こういう子だったわ。 自分の思いを信じる子。 周りがどれほど疑っていても、巳星ちゃんは自分の思いを信じて、そしてどこまでも人を信じるこ との出来る子。 それが、巳星ちゃん。 私は、そんな彼女を好きなんじゃない。 私は自然と微笑み、巳星ちゃんに声をかけた。 嬉しさに、泣いてしまいそうになるのを隠して・・・・・・・・。 |
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