【デートだ 下 】

	



「巳星さんのお母様が、あんなに若いとは思わなかったわ」

「綺麗な方ですし」

 蟹名静おすすめの喫茶店に入ってすぐ、水菜弥生と土田尚子がそういった。

 若い。
 
 まあ、若いけどね。

 叩いたら可愛く『キャッ』とかいうしね。

 あれは真似出来ないよね。

「母は、14でわたしを産んだからね」

「「「「「「14!?」」」」」」

 まあ、驚くことかな。

 14は若いもんね。

 今年31だったかな?

「うん。父も同じ歳。確か、留学している時に知り合って、付き合うようになったらしい」

 凄いよね。

 両親14で、子ども育てちゃうんだもん。

 それも、親の手を借りずに。

「母の家は大会社を経営してて。でも、母がわたしを身ごもったことを知られて、勘当されたんだ。
それで、父は学校を辞めてバイトを始めた」

 ま、今は勘当を取り消してもらって、父さんが会社を継いでるけどね。

 だから、父さんは今イギリスに単身赴任中。

 週一で帰ってくるけど。

 良いのか、社長。

「・・・・凄いのね」

「まぁね。その部分は、尊敬してる」

 あんなボケボケの母さんだけど、14歳でしっかりとわたしを育ててくれたんだからね。

 うん、『その部分だけ』は、尊敬してる。

 いつもの母さんをみると、まったく見えないけどね!

 ツッコミどころ満載で、毎日疲れるけどね!

 ファミリーが家にいるような感じがするけどね!

 ・・・・・そう考えると、わたしって休めるところなくない?

 不幸じゃない?わたし。

 やっぱり幸薄だよね(泣)

「あら、巳星さん達じゃない!」

 声かけられ、そちらへと顔を向ける。

 そこにいたのは、武嶋蔦子、築山三奈子の両名。

 そういえば、彼女たちは盗撮にきていたんだった。

「盗撮、ご苦労様。武嶋蔦子」

「盗撮だなんて酷いわ、巳星さん」

 君の行動が盗撮ではなくて、なんなんだ。

 正当とでもいう気か?

 そのつもりなら、法律の辞書を読め。

 まあ、読んでもやめないだろうけど。

 怖い人だ、この人達。

「本当のことでしょうが」

 わたしは呆れ、ため息をつく。

 そんな武嶋蔦子の首にはカメラが掛かっているが、残念なことにこのお店は撮影禁止。

「あ〜、撮りたいわこの光景!」

 両手をわなわなと動かす武嶋蔦子に引き、視線を逸らす。

 ちょっと危ない人みたいだ。

 いや、かなり危ない人だ。

「それで、デートかしら?」

「デート以外の何に見えますか?」

 笑顔で問いかけてきた築山三奈子に即答する。
 
 いや、だってねぇ?

 本当に、何に見えるのか気になるじゃん?

「い、いえ。デートにしか見えないわね」

 なら問う必要もないだろうに。

 変わった人だ。

 まあ、リリアンにまともな人はあまりいないだろうけど。

「それで、お二人はどうしてここへ?」

 苦笑し、藤堂志摩子が問う。

「それが」

「まあ、色々とありまして」

 築山三奈子と武嶋蔦子が顔を見あわせ、複雑そうな表情をする。

「おおかた、デートの瞬間の写真を取りにでも来たのでしょう」

 それ以外で、この2人が一緒に連むなんてありえないと思うけど。

 だって、写真部と新聞部だよ?

「おほほほ」

「あははは」

 誤魔化し笑いをする彼女たちに。

 今時、『おほほ』は無いだろう、築山三奈子。

「それで、収穫ありましたか?」

 玖珂姪が問うと、思いっきり落胆する両名。

 が、すぐに築山三奈子は復活。

「だけど、巳星さん達に会えただけでも十分に収穫よ!白薔薇のつぼみのデートも、見ることが出来
たし!」

「後で写真撮っても良いかしら?」

 二人して嬉々とした顔でいってくる。

 なんていうか、目が輝き過ぎ。

 かなり怖い。

 再び顔を見あわせ、わたし達は頷いた。

 写真を撮られても、何かが減るもんでもないんだし。

 というか、嫌だといっても、きっと無理矢理撮るか、盗撮するに違いない。

 意味ないね〜。



「これからどこに行きますか?」

「どこ行きたい?」

 土田尚子にそう問い返す。

 というか、どっか行ける場所あるっけ?

 だいたいは行ったよね?

 まあ、ぶっちゃけこれ以上ここにいて、我が母に会いたくないんだけどね。

「問い返すのは禁止ですわ」

 なんで?

 というか、土田尚子に返したのに何故松平瞳子にダメ出しされるわけ?

 っていうか、禁止なのか?

 色々と不思議が一杯だ。

「了解。なら、みんなはどこに行きたい?」

「銀杏を拾いに」

 ・・・・・・何処にさ。

「却下」

 ほら。

 水菜弥生達が、驚いた表情で君を見ているぞ藤堂志摩子。

 知らないからね、彼女たちは。

 藤堂志摩子が銀杏好きだって。

 むしろ、銀杏狂?

 ダメだ、怖い。

 『狂』は普通に怖い。

 言って後悔した。

「カラオケ、というのはどうかしら?」

 蟹名静の言葉に、わたし達は顔を見あわせた。

「わたしは構わないよ。銀マニ達は?」

「私も構わないわ」

 藤堂志摩子を筆頭に、全員が頷いてくれた。

 というわけで、カラオケへGOー。

 近くのカラオケへとやって来たわたし達は、大部屋へと入った。

 さすがに7人は大部屋だろう。

 ギュウギュウ詰めは嫌。

「では、歌いま〜す」

 土田尚子が先手。

 ・・・・・すいません、聞いても良いですか?

 あの、なんで『テントウ虫のサンバ』なんですか?

 意味あるんですか?

 それを普通に受け止めている君達は、何者ですか?

 一応、彼女一番年下だよね?

 良いの?この選曲。

 この曲が悪いとかはないけど、どうだろうとか思わないわけ?

 ナチュラルに受け止めすぎじゃない?みんな。

「素敵だったわ、尚子さん」

 お前は誰だ、松平瞳子。

 何か思い入れがあるのか?

 拍手しすぎと違います?

 あ〜、ダメだ。

 なんか、色々とダメだ。

 一曲目がこれって、かなりダメだ。

「では、不肖ながら藤堂志摩子、歌わせていただきます」

 随分な敬語で歌い出した藤堂志摩子。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 何故に『一休さん』か。

 『好き好き好き好き、好きっ好きっ♪』て・・・・・。

 お前こそ誰だ。

 ノリノリだよ、藤堂志摩子。

 嬉しそうだね。

 そして、笑顔で受け止めるな、君ら。

 絶賛し過ぎじゃない?

 今から不安になってきた。

 まともだと思っていた土田尚子でコレで、藤堂志摩子でコレ。

 どうよ?

 いや、文句はないよ?

 良い曲、なんじゃないですか?

 藤堂志摩子は満足そうだし。

 ・・・・うん、もうどうでも良いかも。

「次は私ね」

 そういって歌い始めたのは水菜弥生。

 まともであれ。

 ・・・・・・・やっぱり、無理だった。

 何故に『ドレミの歌』か。

 っていうか、入っていることにビックリだよ。

 そんでもって、ほとんど音符の音ばっかじゃん。

 間奏か?

 間奏なのか?

 ドシラソファミレド は間奏なのか?

「次は、私が歌わせていただきます」

 ・・・・・・・・・ぷっちんプリンの歌だ。

 ヒゲの生えたオジサンが歌う、早口の歌だ。

 無表情に早口で歌わないで、玖珂姪。

 普通に怖い。

 かなり、怖いから。

 なんか、ここまできたら期待とか、ないよね。

 要するに、リリアンにまともな子はいないって事だよね。

 だって、リリアンの代表があれなんだもんね。

 生徒が、まともなはずないよね。

 ごめん、夢見てたかも。

 おかしいのは、ファミリーとその周辺だけだと思ってた。

 やっぱり、リリアン全体がおかしいんだね。

 今更気づいちゃったよ。

 それにしても、みんな凄いノリノリだね。

 楽しそうですね。

 わたしは、突っ込みすぎて疲れたかも。

 まだ歌ってもいないのに。

 歌う前に、体力とかなくなりそう。

 若さがほしい。

 切実に・・・・・・。

「次は私ですわね!」

 元気だな〜、松平瞳子。

 須加さん、ちょっと体力が心配。

 ・・・・・・お?

 お?お?

 予想外にまともだ!

 松平瞳子が歌ったのは、
 
 ある有名外国人歌手の、冬定番ソング。

 ちょうど2月だし、季節的にもギリギリ間違ってはいない。

 良いんじゃない?

 でも、ぷっちんプリンの後にこの歌っていうのも、なんか微妙だよね。

 変、変、変、変、まとも、って。

 ちょっとつまらない、なんてわたしは思ってない!

 鳥居江利子なんかに、感化されてない!

 ファミリー(福沢祐巳抜き)なんかに、触発されてないぞ!

 気をしっかり持つんだ、須加巳星!

 ファミリー(福沢祐 ry)に染まったらダメだ!

「次は私よね」

 蟹名静がニッコリと微笑み、立ち上がる。

 ちょっと注目。

 だって、あの蟹名静だよ?

 リリアンで、一番の美声(かどうかはわからないけど)を持つ蟹名静だよ?

 興味あるよね。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 そこに行くか!?

 松平瞳子でまともにいったと思ったら、そこか!?

 その歌の上手さで、『初めてのチュウ』を歌うのか!?

 それも振りつきか!?

 っていうか、振りがあったのか!?

 ノリノリだぞ、おい!

 どうしたリリアン!

 まともっぽくない松平瞳子が一番まともで、まともっぽい君らがまともじゃないのか!?

 おかしいぞ、リリアン!

 コレが普通か?リリアン!

 この次に、わたしが歌うのか!?

 無理だよ!

 わたしには無理だよ!

 松平瞳子みたいに、普通の歌なんて歌えないよ!(号泣)

 誰でも良いから誰か助けてっ!

 この部屋に、まともをください!





 疲れた。

 何が疲れたって、ツッコミどころ満載過ぎて疲れた。

 反対に、彼女たちは満足そう。

「久しぶりに、気持ちよく歌えたわ」

 そういうのは、2曲目で『ドナドナ』を歌った水菜弥生。

 ・・・・・・・・・・・良かったですね。

 それしか言えないね。

 それしか言うことないよね。

 須加さん、明日元気な状態で学校に行けるか?っていうくらい疲れたよ。

 もしこれがリリアンの普通だったら、泣くかも。

 っていうか、泣きたいよ。

 ・・・・・誰か、まともをください!! 








 
   あとがき

 しばらく【いとしき歳月 前後】にはいかないかも・・・・。
 だって、原作持ってないから(爆
 書いたとしても、きっと原作とは会話が違かったりすると思います。
 それか、原作を手に入れて書くまで待ってください。
 熊男の位置を、お楽しみにw
 熊男の設定、かなり変わると思うので♪ 

 




          

 

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