【デートだ 上 】

	



 デート。

 K駅の改札口に集まったわたしを含めて7人。

 なんていうか、多いよね?

 まあ、今更だけど。

「それじゃあ、まずは色々なお店を見て回ろう」

 それに各々が返事をくれる。

 なんか、引率の先生になった気分。

 とりあえず、K駅の周りにあるお店をみんなで見て回ることに。

 が、その前に。

「お金、出してもらえる?」

「巳星さま、その言い方では借金取りのようですわ」

 突っ込まれた。

「そう?」

 とか返しつつ、ちょっと凹みました。

 借金取りって。

 だいたい、松平瞳子は借金取りにお金を徴収された経験があるんですか?

 ないのにそんなこと言ったのか?
 
 テレビの見過ぎだ!

 なんて事は心にとめておいて、封筒を取りだす。

 その中には、わたしが前もって入れておいた野口英世が入っている。

「「「「はい、巳星さん」」」」

「「どうぞ、巳星さま」」

「どうも」

 全員から英世を受けとり、封筒の中へ。

 それから、言った通りわたし達はお店を見て回った。

 途中で欲しいものを見つけた場合は、それぞれがもちろん払う。

「あ、あのっ、巳星さま、これなんてどうですか?」

「巳星さま、見てください」

「巳星さん、似合う?」

「どうかしら?巳星さん」

「似合ってますか?」

「どうかしら?」

 松平瞳子、土田尚子、蟹名静、水菜弥生、玖珂姪、藤堂志摩子の順で問いかけてきた。

 全員はやめようよ、全員は。

 っていうか、何でみんなわたしに聞くのさ。

「良いんじゃない?」

 似合うよ?

 そりゃあ似合うさ。

 みんな、可愛い系綺麗系だから似合うんだよ?

 似合うんだけど、何でみんなしてわたしに聞くかな。

「「「「「「それだけ(ですか)?」」」」」」

 ・・・・・・・他に何を言えば?

 えっと・・・・・・・。

「いや、似合うよ?本当に」

 そういうと、嬉しそうにその服をレジへと持っていく6人。

 買うんかい。

 いや、買うことに文句はないけど、ねぇ?

 ・・・・・・・・うん、考えないようにしよう。

 今までの経験上、考えるだけ無駄だからね。

 うん、そうしよう。

 お店を出た後、他の見てまわった。

「巳星さまは、何か好きなものがありますか?」

 お店をでて少しした時、土田尚子にそう聞かれた。

 思わず松平瞳子を見てしまう。

 だって、以前も松平瞳子に似たようなことを聞かれたことがあるから。

「・・・・・・・なんですの?」

 睨まれた。

「いや。好きなものは果物全般かな」

 松平瞳子に返した後、土田尚子に答える。

 なんていうか、最近わたし睨まれてばかりじゃない?

 ほとんど島津由乃からだけど。

「趣味は?」

 今度は玖珂姪に問われる。

 これまた似たような質問だな。

「趣味は体を動かすこと。運動するのが好きだからね」

「ということは、巳星さんは文武両道なのね」

「どういう事?水菜弥生」

「だって巳星さん。入学して初めてのテスト以外、全て学年1位じゃない」

 ああ、確かそうだった。

 藤堂志摩子に言われ、一応学年主席なのだと思い出す。

「それも全て96点以上でした」

「いや、そんな報告いらないから」

 っていうか、そこまで見てるんだ。

 須加さん、ちょっとビックリ。

 見過ぎだよ、玖珂姪。

「さすが巳星さまですね!」

 うわ、キラキラした目で見られてるんですけどっ。

 松平瞳子は松平瞳子で、かなり目を見開いてこっち見てるし!

 だからね?

 目玉落ちるんだって!

 落ちるんだって!

「そう?」

 そう返すけど、わたしの心はドッキドキ。



「あ、あのお店見ても良いかしら?」

 蟹名静の言葉に、わたし達は頷きそのお店の中へ。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・なんでここにおんねん!!

「しばっていうお店、何処にあるとだすか?」

「し、しば、ですか?」

 わたしは店員さんと話をしている人物を見て、両手足を床に着けそうになった。

「し・ば」

「あら?」

 唯一、その人物を知っている藤堂志摩子が頬に手をあて、わたしを見た。

「綺麗な方ね」

「何処の国の方でしょう」

 口々に、蟹名静達がそんなことをいっている。

 店内にいるお客達も、チラチラとその人物を見ている。

 このお店から逃げたい(泣)

「声をおかけしなくても良いの?」

「・・・・今行く」

 それも、藤堂志摩子の言葉によって崩れ去る。

 逃げることも許されないらしい。

 マジ、泣きたい。

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・母さん』

 ちょっとした抵抗をして、わたしはその人物、母さんに声をかけた。

「「「「「え?」」」」」

 蟹名静達が驚いたように、わたしを見てきたけれどこの際無視。

 というか、無視させてください。

『巳星!』

 嬉しそうに駆け寄ってくる母さん。

 ・・・・・声かけたこと、早くも後悔してます。

『良かったわ!店員さんに聞いても、全然わからなくて』

 そうだろうさ。

 この人の怪奇行動は、血の繋がったわたしでも不明だもん。

 もしかしたら、誰にもわかんないかもね。

『・・・・どこに行きたかったの?』

『しばよ、しば!』

 ・・・・・・どこよ、『しば』。

『なんていう字書くの?』

『〜市(し)の市に、場所の場よ』

 ・・・・・・絶対にバカだ、この人。

 知ってはいたけど、思わずにはいられない。
 
 うん、バカだ。

『それ、市場、っていうの。い・ち・ば』

 パン、と手を叩き顔をかがやかせる母さんに、わたしは頭痛がしてきた。

 何年日本に住んでるんですか?

 家では確かに英語だけど、もう少し日本語覚えようよ。

 もう、日本に住んで10年は経ってるでしょうが!

 そこまで考えて、無理だと悟る。

 だって、間違った日本語をいまだ直すことなく使ってる人に、日本語覚えろといっても無理だろう
から。

『さすが巳星!』

『さすがじゃないから。だいたい、こんなところまでなに買いに来たのさ』

 そう問うと、待ってました、とでもいうような表情をする母さん。

 聞かなきゃ良かった。

 絶対下らない理由だもん。

『挽肉を買いに来たのよ。ハンバーグが食べたいんだもの』

 ・・・・それって、作るのわたしだよね?

 なんか、私が作るの、みたいにわたしに話されても。

 な、なんていうか、なぜか凹む。

『そ、そう』

『だからね?100キロくらい、どーんと買っちゃおうと思って!』

 ニッコリと微笑む母さん。

『へー。・・・・・・・・・・・・は?』

 今、なんか変な言葉聞こえた気がしたんですけど。

 今一瞬、流しかけたけどさ。

 絶対、聞き捨てならない言葉いったよね?

『えっと、何キロ買うって?』

『だから、100キロ v 』

 ・・・・・・・・・・・・・・。

『キャッ!』

 笑顔で言い切った母さんの頭をチョップした。

『痛いわ、巳星』

『痛くしたんです。良い?100キロなんてあっても、困るだけ。わかる?』

 というか、わかれ!

『なんで?買い置きしておけば、後々買いに行かなくても良いじゃない!』

 逆ギレするな!

『100キロあっても、腐る!』

『腐ったものは、体にいいのよ!!』

 悪いわ!

『納豆だって、腐ってるじゃない!』

『納豆は別でしょう!?とにかく、1キロで十分!』

 わたしはそういって、母さんの背中を押す。

『巳星のイジワル!!』

『イジワル違うし!』

『カバ!!』

『ちょっとまてぇーい!』

 カバとはなんだカバとは!

 っていうか、その言葉は2回目だ!

 最後の捨てゼリフにちょっと待ったコールをかけるけれど、母さんは舌を出して走っていってしま
った。

「・・・・・・・・あの女」

 低い声で呟き、ハッとする。

 藤堂志摩子達へと顔を向ければ、ポカン顔の蟹名静達。

 藤堂志摩子は、唯一母さんを知っているので口に手をあて、肩を震わせていた。

 笑ってやがる・・・・・・・・。

「巳星さんのお母様、相変わらずね」

「ソウデスネ」
 
 それだけしか返せない。

 他になんと言えと?

 アッハッハ。そこが母の良いところ☆

 ・・・・ありえない。

 色々とありえない。

 っていうか、思ってもいない。

 あれが、母さんの良いところだなんて。

「み、巳星さま、今のお母様だったんですか?」

「そう。母はイギリス人で、父親が日本人のハーフだから、わたし」

 松平瞳子に答え、わたしは重い、重いため息をついたのだった。

 ああ、視線が痛い。

 それこそ、本当に禿げそうです。

 というか、ストレスで死にそう。

 嘘だけど。




          

 

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