【デート計画 下 】

	  



【では、白薔薇のつぼみと静さまもご一緒、ということですのね?】

 ・・・・・不満そうなんですが。

「いや?」

【なっ!別に嫌なんて事はありませんわ!巳星さま以外の山百合会の方がいらっしゃれば、比較出来
ますもの!!】

 いや、声でかいって。

 思わず、受話器から耳を放す。

【聞いてらっしゃいますの!?】

 20pは話してるのに、なぜ明瞭に聞こえる。

 さすが演劇部か?

「聞いてる聞いてる。それと、お金の関係で、K駅周辺を歩き回ることになったから」

【ええ。それは理解していますわ】

 どうやら、向こうもそれは思っていたらしい。

 にしても、一気に静かになるんだね。

 お姉さん、そのテンションの高低についていけないことが判明だよ。

「そう。なら良いけど。それと、悪いけど一応一組3千円だから、600円持ってきてね」

 今更だけど、5人で3千円はちょっとキツイ?

 まあ、藤堂志摩子と蟹名静もいれたら6千円になるけどさ。

 ・・・・・いっか。

【わかっていますわ。白薔薇さまや静さまの方は含めないんですの?】

「だって、あそこはあそこで一組でしょ?それに、7人で3千円は辛すぎる」

 だって、一人400円強しか使えないんだよ?

 さすがにそれはヤバイだろう。

 ケーキと紅茶セットで飲んだら、自腹きらないといけない値段になるって。

【一人600円も変わらないと思いますわ】

 それを言わないで。

 わたしだって、それは感じてるんだから。

 でも、そうなんだよね。

 ・・・・・・・ヨシ。

「わかった。一人1000円にしよう。それだと、まだ余裕あるしね」

 藤堂志摩子達も1000円に。

 そうすれば、7000円になる。

【そうですわね。尚子さんにも、言っておきますわ】

「よろしく。もし払えなかったら、(きついけど)わたしが立て替えるから心配しないで、って伝え
ておいて」

【・・・・・・・・・・・・・・】

 なぜ黙る!

 わたし何か言った!?

 別に変なこと言ってないでしょっ?

【私が払えなかった場合も、立て替えてくださるんですの?】

「え?あ、うん。そうだけど?」

 え?

 なに?

 実は、松平瞳子1000円なかったとか?

 だったら、その値段に同意しないだろうし・・・・・。

 ・・・・・・ああ!

 もうよくわからん!

 気にしない!

 どうせ、不思議っ子達ばっかりなんだから!

【なら、構いませんわ】

「いや、意味わんないから。っていうか、何が?」

【みっ、巳星さまにはまったく関係ありませんわ!!】

 ええ!?

 キレられたんですけど!

【それでは、ごきげんよう!!】

 切られた・・・・・。

 色々と、切られた。

 キレられたし、電話も切られたし。

 もう、何が何やら。

 ・・・・・・・・・・・要は、不思議っ子なんだよ。

 うん。



「で、一人1000円という事になったわけなのね?」

「そういうこと」

 水菜弥生の言葉に、わたしは頷いて返す。

「確かに、一人600円は辛いものがありますしね」

「うん。さすがにキツイからね。―――で?さっきから、なに?」

 玖珂姪に返した後、こちらをジッと見つめてくるファミリーへと目をむけた。

 実は、薔薇の館だったんだよね、ここ。

「あら、気づいていたの?」

「それだけ見られれば、誰だって気づくと思うけど?」

 水野蓉子へと体を向け、呆れた視線を向ける。

「別に〜、楽しそうだなぁ〜、って思っただけ」

 口を尖らせるな、佐藤聖。

 いつもの10倍くらい、幼く見える。

「ソウデスカ〜」

 って、凄い睨んでるよ、島津由乃。

 バレンタインデーの時並に、こっちを睨んでるんですけど。

 やめて、禿げるから。

「言いたいことあるなら、ハッキリと言ってね」

「っ巳星さんのバカ!!」

「巳星ちゃんのカバ」

「いや、そこさりげなくよしのんに便乗するなよ!」

 カバとはなんだ、カバとは!

 バカも聞き捨てならんが、カバも嫌だ!

「あら、ごめんなさい」

 久しぶりに、似非笑顔で謝る鳥居江利子。

 全然謝られた気がしないっ。

 当たり前だけど。

「こんな凸っぱちよりも、わたしの発言に反応してよ!!」

「よっ、由乃ぉ!?」

 情けない声をあげる支倉令。

 ミスターリリアンの姿は、ここにはないね。

 ・・・・・・というか、支倉令のミスターリリアン姿を見た事なんてないけどね(微笑)

「由乃ちゃん、それは私に対しての挑戦状だと受けとっても良いのかしら?」

 あらニッコリ。

 いつもより、当社比5倍の似非笑顔を貼り付けております。

「おっ、お姉さまぁ!?」

 ・・・・いつもより、当社比7倍のヘタレさを醸し出しております。

「勝手にどうぞ!!」

 こっちも、いつもより当比社5倍のイケイケですな。

「あら、そんなこと言っても良いの?後悔するわよ?」

 片眉をあげ、楽しそうに挑発する鳥居江利子。

 それに怒鳴り返そうとした島津由乃の口を塞ぐ。

「たんま」

 そして、傍観体制でいるな、紅薔薇白薔薇ファミリーよ。

 唯一慌ててるのは福沢祐巳だけじゃん。

 まともなの、福沢祐巳だけじゃん。

 まともだと思ってた藤堂志摩子は、黒い人だったし。

「いい加減落ち着け」

「んー!んー!!」

 凄い眼力ですね、島津さん。

 わたしを睨むその姿が、なぜか阿吽像と被ります。

 ごめん、言い過ぎた。

 でも、ちょっと似てる。

「えっと、わたしがカバなんだっけ?」

「それは私よ」

 あ、そうだった。

 わたしをカバ呼ばわりしてきたのは、そこの凸っぱちだった。

「わたしがバカだって?なんでさ」

「ぷはっ!そのまんまの意味よ!この間からずっと、その子達と話してわたし達と話してくれない
じゃない!!」

「そんな事ないでしょうが。教室、よしのんと一緒だし、今朝も話したじゃん」

「そうよ、由乃さん。私なんて、デート関係以外ではお昼休みしかお話ししてないわ」

「ごめんなさい」

 だから、微笑みながらカッターの刃を伸ばすのはやめてください。

 福沢祐巳が泡を吹いて失神しそうです。

「そんなの良いじゃない!デート関係では沢山話してるんでしょう!」

「それはそれ、これはこれだわ」

 なんかおかしくない?言ってること・・・・・。

 それはそれって。

「とりあえず、わかった。明日からは、ちゃんとみんなと話す。これで良い?」

 そういうと、島津由乃はそっぽを向いてしまった。

 とりあえず落ち着いた、かな?

 にしても、相変わらずファミリーは予想外なことをしてくれる。

 そこまでして、わたしと話したいか?

 う〜む、よくわからん。

「巳星さんって、愛されてるのね」

「は?」

 愛されてる?

 何が?

 節穴か?

 君の目は節穴なのか?水菜弥生。

「私もそう思います。みなさんは、巳星さんをとても大切にしているように感じます」

 玖珂姪まで・・・・・。

「そう思う理由は?」

「だって、みんな楽しそうだもの。巳星さんと一緒にいることが」

 そういわれ、ファミリー達へと目をむける。

 いやいや、島津由乃がいまだわたしのこと睨んでるですけど!

 あれの何処を見て、わたしを大切にしているように見えるのか激しく聞いてみたいのですが!!

「・・・・・まあ、よしのんからはお弁当ない時にお弁当もらったりとかしたし」

 そうだったね。

 よしのんに、お弁当もらったんだった。

 自分で言って思いだした。

「そうよ。あげたのよ」

「なぜ君が言う」

 なに、私があげたのよ、みたいな顔でそんなこと言ってるかな、鳥居江利子。

 最近、わたし鳥居江利子にそんなツッコミばっかりしているような気がする。

「そうです!巳星さんにお弁当をあげたのはわたしなんですよ!?」

「由乃。そういう反応するから、お姉さまが由乃をからかうんだよ?」

「からかってるんですか!?」

「だから、由乃!」

「あら、今更気づいたの?」

 ふふんって笑ってる。

 なんて似合うんだろう、あの凸。

「皆さん、面白いんですね」

「本当ね」

 そういって、楽しそうに笑う玖珂姪と水菜弥生。

 わたしはそんな2人に、苦笑した。

 この人達は、個性強いからね。

 そりゃあ、たまに見る分には面白いだろう。

 ・・・・たまに見る分には、ね。




          

 

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