【券の行方】


	 


「さっそくですが、時間も遅くなって参りましたので結果発表に参ります。まず、宝として隠したつ
ぼみのカードは、二枚発見されました」

 ・・・・・・絶対、わたしの見つかってないじゃん。

 小笠原祥子のカードが見つかってないんだから、必然的に残りの見つかってないカードはわたしの
ということになる。

 なんだよぅ。

 あんなに朝早く(でもないけど)学校に来て、隠した意味って何?

 歓声と、落胆の声があがる。

 うん、わかるよ。

 わたしも「えー」とか言いたい。

 むしろ「うそ〜ん」って言いたい。

「お名前を呼ばれた方は、前に出てきてください」

 ざわめいていた生徒たちが、一気に静かになる。

 やっぱり、なんか怖いよね。

「まず、白いカードを見つけた方ですが―――」

 あ〜あ。

 わたしも、一応壁に貼り付けて、わかりやすくしてたんだけどな。

「2年藤組、蟹名静さん」

 えーーーー!!?

 という、かなり大きな声が中庭に響いた。

 思わず、耳を塞いでしまう。

 ちょっと、声大きいから。

 予想してたけど、まさかこんなに大きな声だとは思わなかったよ。

 中等部の子達は、何がなんだかわかっていないようで同じように耳を塞いでいるけど。

「ところで、白薔薇のつぼみのカードはどちらで見つけられましたか?」

「委員会ボードです」

 うわっ、かなりの生徒たちがポカン顔なんですけど。

 まあ、まさかそんなところに貼ってあるとは思わないわな。

 裏をかくって、こういう事を言うのだろう。

 だって、誰もそんなわかりやすいところに貼るとは思わないから。

 けど、それが盲点だったりする。

 貼るとは思わないから、目の端に映っても気にしない。

 その上、委員会掲示板なんて余程のことがない限り見ない。

 確かに、公衆の面前にふれる場所だけれど、だからといってみんなが見ているとは限らない。

 藤堂志摩子は切れ者だね。

「それと、これも」

 蟹名静がポケットから、何かを取りだした。

「「「「「あ」」」」」

 わたし、藤堂志摩子、小笠原祥子、支倉令、築山三奈子の声が被る。

 なぜなら、蟹名静がポケットから取りだしたのは、青いカード。

 要するに、わたしのカードだったからだ。

「そ、それはっ!」

「2つ見つけたんですが、申請して良いのは1つだけでなければいけないのだと思って、言わなかっ
たんです」

 ・・・・・それで、藤堂志摩子が選ばれたというわけですか?

 ショックだ。

 いや、別にね?

 藤堂志摩子を選んだから、とかそういうのじゃなくてね?

 なんていうんだろう・・・・・。

 選ばれた人は関係なくて、落ちた、っていうことが悲しい?

 むしろ、見つからなかった方が良かったよ(泣

「・・・・・・どうしましょうか?青薔薇さま」

 申請時間はもう既に過ぎている。

 それについて、どうしようかと聞いているのだろうか?

 でもさ。

「・・・・・・貸して」

 三奈子から受けとった青いカード。

「蟹名静は、藤堂志摩子のカードがあるから大丈夫ですよね?」

「え?」

 驚いたような表情をする蟹名静を無視して、わたしはカードを4等分に破いた。

「「「「「あっ!」」」」」

 あーーーー!!

 蟹名静達と、生徒たちからそんな声があがったけど、わたしは無視してその4枚をそこかしこに飛
ばす。

「せ、せめて破れた部分だけでも!」

 そんな声と共に、幾人かが慌てた声を出して拾った。

 ちょっとビックリ。

 いや、なんか、拾う人って2人くらいだと思ってたからさ。

 それも渋々。

 まあ、気を取り直して。

「今、その紙を持ってる人、手をあげて」

 良し、4人全員あがったね。

「その人達には、わたしの半日デート券をあげる。もちろん、4人ともわたしと一緒にね」

「なんですって!!?」

 うおっ!

 声があがった方を見れば、そこにはドリル・・・・・もとい、松平瞳子が。

 ・・・・・やっぱり、いたんだ。

「と、瞳子ちゃん?」

 気づいていなかったらしい、小笠原祥子。

 驚いたように呟いている。

「って、紙拾ったんだ」

 呟くと、どうやら聞こえていたらしく松平瞳子は顔を赤くした。

「ご、ゴミになってはいけないと思ったからですわ!!」
 
「そう、仕方なく?」

 片眉をあげれば、さらに顔を赤くする。

「そ、そうですわ!仕方なく拾ってさしあげたんですわ!!」

「でも残念。親切で拾ってくれた人にも、無理矢理半日デート券が贈与されちゃうんだよね」

 言外に、諦めろ、という意味を告げた。

「しっ、仕方ありませんわね!!」

 ・・・・・凄い不満そうだね。

 ちょっと凹むよ?

「えっと、巳星さん?」

「あ、そういうことだから。別に、わたしの半日券なんていらないでしょ?なら、無理矢理に押しつ
けた方が良いかなって」

 築山三奈子と蟹名静にいえば、かなり目を見開いてわたしを見、それから顔を見あわせた。

 なにさ。

 あれですか?

 気づいてたんだ。みたいな。

 気づいてるさ!

「ってわけだから。わたしの半日券を押しつけられた人は、ご愁傷様」

 口端を上げ、手をあげている4人を順に見ながらいう。

 すると、何故か紅くなる松平瞳子達。

「?」

「・・・・私、2つ申請すれば良かったわ」

 蟹名静の呟きが聞こえたけれど、何を言っているかまでは聞こえなかった。

「あ、あの。それで、何処に隠してあったんですか?」

 築山三奈子が問うと、蟹名静は笑う。

 何、その笑い。

「志摩子さんと同じような場所です。2年生の階のトイレのドアの、内側に貼ってありましたから」

 そう。
 
 わたしは、トイレの出入り口のドアの内側に貼ったのだ。

 ここも、意外と盲点だと思ったから。

 小笠原祥子達が、驚いたようにわたしを見る。

 生徒たちはポカン顔だ。

「意外と、見ないもんでしょ?そんなところ」

「ええ。私が気づいたのも偶然だもの」

 それに、トイレなんて行かない人もいる。

 時間が1時間だから。

 その後、支倉令のカードを見つけた数人が現れ、結果「田沼ちさと」になった。

 嬉しそうに笑ってる。

 島津由乃は・・・・・・。

 ・・・・・なんか、こっち睨んでるんですけどーーー!!

 見る方向ちがくない?

 怖いって!

 こっち見ないで!!

 目で射殺される!

「は、支倉令。アレ、どうにかして」

 目を逸らし、支倉令へと助けを求める。

 もしかしたら、意味がないかもしれないけど。

 一応。

 一応、姉(スール)なのだし。

 という期待を込めて。

「もう無理」

 やっぱりか!

 でも、もう無理ということは、少し前なら助けてもらえたってこと!?

 ・・・・・いや、無理かも。

 ヘタレだし。

「そ、そっか」

 いや、でもさ。

「なんでわたしがあんなに睨まれてるわけ?田沼ちさとを睨むべきじゃない?」

 そういうと、呆れた表情で見られた。

 うわっ、凄いムカツク v

「巳星ちゃん。もっと、自分のこと理解した方が良いよ?」

「何それ」

 ため息をつくな。

「由乃は、巳星ちゃんのカードがほしかったの。だから、巳星ちゃんが破った紙を自分の方に投げて
くれなくて、怒ってるわけ」

「は?なんでほしいのさ」

「だから〜」

「別に、カードなんてほしかったら書いてあげるし、遊びに行くにしても誘ってくれればいつでも行
くし」

 なぜか、驚いた表情でわたしを見てくる支倉令。

 なにさ!

 今日、驚いた顔で見られ過ぎ!!

「なに?」

「いや。そうだよね。わたし達は、いつでも遊びに行けるもんね」

 今更なに言ってるかね、この子は。

「当たり前でしょ?仲間なんだから」

「そうだね」

「令。あなた、由乃ちゃんに睨まれてるわよ?」

「えっ」

 支倉令が驚いたように島津由乃の方へと顔を向けると同時に、わたしも目を移した。

 そこには、先ほどよりも鋭い目で支倉令を睨む島津由乃が見える。

 チョー、怖っ!

「み、巳星ちゃんっ」

「もう無理」

 わたしは先ほどの支倉令と同じように返したのだった。



「さっき、カード拾った人集まって」

 チョコを渡した後、収集をかける。

 駆け寄ってきてくれた、松平瞳子達4名。

 2人が中等部で、2人が高等部だ。

「とりあえず、自己紹介。わたしは、須加巳星」

「あ、わたしは中等部2年の土田尚子です!」

 肩までの髪の、まだ幼い顔だの子。

「私は、中等部3年の松平瞳子ですわ」

 とりあえず、ドリル。

「私は、高等部1年の玖珂姪です」

 何処か、大人しそうなメガネをかけた子。

「私は、高等部3年の水菜弥生よ」

 水野蓉子よりも少し長い髪の子。

 その4人も名乗ってくれた。

「じゃあ、松平瞳子」

「なんですの?」

 チョコを渡し終えてすぐに紙切れに書いた、わたしの携帯番号を松平瞳子に渡す。

「これ、わたしの携帯番号。土田尚子には、松平瞳子から連絡をしてくれる?」

「・・・・わかりましたわ」

 なぜそこで顔を赤くする。

「玖珂姪、水菜弥生にはわたしから直接、連絡を入れるから」

 そういうと、頷く2人。

 それに頷いて返し、4人をみる。

「まあ、わたしと半日デートについては、運が悪かったと思って諦めてね」

「1つ良いかしら?」

 水菜弥生が手をあげた。

「なに?」

「巳星さんは、自分の容姿に気づいていないの?」

「普通だと思ってるけど?」

 そういうと、4人とも驚いた表情で顔を見あわせた。

 だから、今日驚かれるの多いって!

「それ以外に、質問は?」

 唖然としたように首を横に振る4人に頷く。

「なら、今日は解散っていうことで。松平瞳子は土田尚子と何がしたいか話し合って、電話して。こ
っちもこっちで、話し合っておくから」

「わ、わかりましたわ」

「じゃ、終了」

 困惑した様子で解散する4人。

 と、わたしはあることを思い出して松平瞳子に声をかけた。

「なんですの?」

「小笠原祥子のカードの居場所、知りたいだろうと思ってね。多分、温室にいるから行ってみれば。
そこに小笠原祥子達もいると思うし」

 すると、微かに眉をよせる。

 ・・・・・癖になるぞ?

 小笠原祥子みたいに、眉が生きているように見えちゃうぞ?

「大丈夫ですわ」

 そういってズンズンと歩きながら去っていってしまう松平瞳子。

 ・・・・・何が大丈夫なのさ。

 君、小笠原祥子のファンじゃなかったの?

 なんかさ、やっぱり。

 薔薇の館に来る子って、不思議だらけだ。

 この一言しか思いつかないよね。



          

 

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