【オッドアイ】


	



「旅行といったら、これです!」

 そういって島津由乃が取りだしたのは、

「花札・・・・・」

「由乃、それ持ってきたの!?」

 渋い!

 渋いよ、島津由乃!

 今時の高校生が、花札て!!

「当たり前でしょう!」

 イケイケ青信号。

 もう、姉妹(スール)だということさえ、彼方に忘れていそうだ。

 まあ、旅行なのだから、お姉さま、なんて呼ぶ必要ないけど。

「花札?なぁに?それ」

「さあ?」

「トランプみたいなものかしら?」

「カードの形してますし、そうだと思いますけど」

 ほら!

 トリオでさえ知らないじゃん!

 福沢祐巳はわかるとして!

「・・・・・薔薇さま方、祐巳さん、知らないんですか?」

 驚いたように島津由乃が問う。

「いや、今時の高校生は、花札とか普通は知らないって」

「そういう巳星ちゃんは、花札を知っているの?」

「まあ、祖父の家がお寺だし。遊びといえば、花札とかしかなかったからね」

 小笠原祥子の問いに、わたしは肩をすくめて答えた。

「あの、でしたらこれなんかどうですか?」

 暗い影を背負って部屋のすみに移動してしまった島津由乃を無視して、二条乃梨子がトランプを取りだした。

 頑張れヘタ令。

 島津由乃が復活するかどうかは、君にかかっているぞ。

「トランプなら、知っているわ。というか、王道でいえば、UNOかトランプよね」

 さりげなく、島津由乃を攻撃する鳥居江利子。

 あんた、悪魔だ。

 知ってたけどさ。

「変わった模様ですね」

 藤堂志摩子の言葉に、わたしは二条乃梨子がもってきたトランプを見た。

「ぶっ!」

 思わず吹いてしまう。

「「「「巳星ちゃん?」」」」

「「巳星さん?」」

「何で買ってるの!?」

 理由は簡単。

「だって、他の神社やお寺では売ってないですから」

 二条乃梨子が持ってきたトランプは、祖父の家のお寺で売られている、仏像の写真が貼られたトランプだったから。

「だ、だからって!」

 わかる!

 わかるよっ?

 二条乃梨子が仏像マニアだってことは、わかってる!

 見た時、あ、二条乃梨子なら買いそう。とか思ったけど!!

 本当に買わなくったって良くない!?

「ということは、巳星ちゃんのお爺さんの神社で売られているトランプなのね?」

「恥ずっ!」

 両頬に手をあてる。

 絶対、顔赤い!

 冬とは思えないくらい、顔が熱いんですけど!

「・・・・・・可愛い」

「は?」

 顔の熱さなどを忘れ、声の聞こえてきた方へと顔を向ける。

 そこには、なぜか目を見張ってこちらを見る福沢祐巳達の姿が。

 いつの間に戻ってきたのか、その中には島津由乃と、島津由乃を宥めていた支倉令の姿も。

 全員が全員、わたしを見ていた。

「な、なに?」

 なんか、見つめられるような事した?

 一人焦っていると、やっと全員が我にかえってくれた。

 けれど、その途端に顔を赤くしてしまう。

「ど、どうしたのっ?」

 何で急に顔を赤くしたの?

 風邪?

 風邪か?

「なっ、なんでもないわっ」

 何でもなくなさそうなのですが、藤堂志摩子さん。

「み、巳星ちゃんでも、照れたりするんだな〜って」

 佐藤聖の言葉に、わたしは眉をよせた。

「するでしょう、普通」

 なにか?

 わたしは人間ではないと、そういうこと?

 君らには、わたしが人外の存在に見えたりするわけ?

 わたしだって人間だ!

「巳星ちゃんが照れる所って見たことないから」

 いまだ赤い顔で笑う、支倉令。

「そうだっけ?」

 そう問うと、全員が頷いた。

「そうかな?」

 しばらく、彼女たちの顔の赤みは消えなかった。

 っていうか、わたしが照れるところを見たことがないから、顔が赤くなったの?

 

 朝、朝食を食べたあとわたし達はゲレンデへ。

「滑ったことがない人って、いるの?」

 全員を見渡して問うと、島津由乃、支倉令、藤堂志摩子、二条乃梨子の4人が手をあげた。

「支倉令も滑ったことないの?」

 ありそうなのに。

「由乃がスキーにいけないのに、わたしがいけないよ」

 うわお。

 さすが、島津由乃第一少女。

「令ちゃんがスキーに行ってれば、色々と教えてもらえたのに」

 ため息をつき、呆れた表情で支倉令を見る島津由乃。

 うわ。

 報われない子。

 とか思いつつ、笑うわたし。

「なら、4人はわたしが教えるよ。水野蓉子達は勝手に滑ってて」

 そういうと、何故か嬉しそうな顔をする島津由乃達。

 で、不満そうな顔をするのは水野蓉子達。

「どうしたの?」

「狡い」

 その言葉、今回で何度目さ。

 わたしは眉をよせ、佐藤聖へと顔を向ける。

「狡いって、何が?」

「だって、教えてもらうっていうことは、志摩子達は巳星ちゃんとずっと一緒にいるってことでしょ?」

「そうなるね」

 意味がわからず首を傾げていると、腕を島津由乃につかまれた。

「仕方ないですよ。わたし達は、スキーに来たことがないんですから」

 ・・・・・・・・・なんか、その笑顔が鳥居江利子にもろ被りなんですが。

 さすが山百合会ファミリー。

 鳥居江利子の遺伝子は、確実に島津由乃へと受け継がれているぞ!

「さ、行きましょう。巳星さん」

「あ、うん。それじゃあ、怪我しないようにね」

 わたしは相変わらず不満そうな表情をした水野蓉子達にそう言い残し、島津由乃に連れて行かれた。

 島津由乃に連れて行かれたのは、初心者用の軽い坂になっている場所。

「へー。良いところ知ってるね」

「調べたんだ。滑り方とかわからないのに滑っても、他のお客さんの迷惑になるし」

 確かに。

 わたしは支倉令の言葉に頷いて返したあと、4人へと顔を向ける。

「とりあえず、基本的なことね」

 4人が頷くのを見てから、わたしはスキー板を下に置いてスキー靴にはめた。

 それから、ハの字に。

「止める時、スピードを落とす時、基本的にはこの姿勢ね」

 それから、横に並列させるように足の位置を変える。

「わかると思うけど、抵抗がないからこの姿勢にするとスピードがでる。でも、初心者は慣れるまではハの字
走行じゃないと危ないからね」

 頷く4人。

「多分、4人とも運動神経良さそうだから、すぐに上手になると思うよ」

 軽い、本当に軽い説明を終えて、わたし達は初心者用のリフトに乗り込んだ。

 4人は恐がりながらだったけれど、ちゃんとリフトに乗ることが出来たようだ。

 リフトから降りたあとは、山側の人が少ない方へと移動する。

「じゃあ、これからわたしが先に滑るから、良いって言ったらわたしがいる場所まで滑ってきてね」

 緊張した様子で頷く4人。

 わたしはそんな様子に笑い、50メートルほど滑り4人へと体を向けた。

「藤堂志摩子」

「は、はいっ」

 はいって、先生じゃないんだから。

 まあ、それほど緊張しているということなのだろうけれど。

 スキー板をハの字にして、ゆっくりとおりてくる藤堂志摩子。

「そうそう。上手上手」

「と、止まらないわっ」

 その速度で止まらないって、どうよ。

「足に力入れて」

 そういうと、わたしの少し前で藤堂志摩子は止まった。

「と、止まった・・・・・」

 安堵の息を吐く藤堂志摩子に、わたしは苦笑する。

「もう少し、早く滑れるようにね」

 藤堂志摩子をわたしの横に移動させ、島津由乃へ。

「島津由乃」

「行くわよ!」

 ・・・・・なんか、嫌な予感。

「よ、由乃ハの字にして!」

「ならないならない!」

 やっぱりか。

 ため息をつきつつ、わたしはステッキを雪にさした。

「由乃、そのままわたしの方に来て」

「あ、危ないわよ!」

「良いから」

「「巳星さん!」」

「巳星ちゃん!」

 藤堂志摩子達が声が叫ぶような声をあげるけれど、わたしは突っ込んできた島津由乃を簡単に受け止めた。

「あれ・・・・?」

「チャレンジャー過ぎるのも考え物だね。志摩子と由乃を足して2つに割った感じが、初心者には良いんだけど」

 抱きとめたまま、わたしは藤堂志摩子と島津由乃に言う。

「巳星さん!大丈夫ですか!」

「大丈夫!巳星ちゃん!」

 慌てたように、二条乃梨子と支倉令が近づいてきた。 

 滑って。

「・・・・・・・・・・2人とも、普通に滑ってるんだけど」

「「え?」」

 わたしが声をかけると、2人はそこで初めて気づいたように体を見下ろす。

 それから、目を見開いた。

 気づいてなかったんかい。

「な、何で滑れるのよ!!」

 あ〜、島津由乃が支倉令に八つ当たりしてるし。

「そ、そんなこといわれても!」

 慌てると、さらにヘタレ度が増すね、支倉令。

「よ、由乃さまっ」

「由乃さん、落ち着いて!」

 そんな島津由乃を宥めようとする二条乃梨子と藤堂志摩子を見ながら、わたしは小さくため息をつきながら呟いた。

「とりあえず、島津由乃と藤堂志摩子は続けて練習だな」

 

「巳星さん!今日で最後なんだし、一緒にお風呂に入りましょう」

 島津由乃の誘いにわたしは少し悩み、頷いた。

 いつまでも隠せるわけじゃないし、ここでオッドアイだってことばらしちゃおう。

 タオルと着替えをもって、わたし達は大浴場へ。
 
 部屋にはお風呂もついているから、そこで済ましたい人はそこで済ませられるようになっている。

 昨日は、そのお風呂に入ったのだ。

「今日は沢山滑ったから、マッサージもした方が良いわよ」

 いつもは唯我独尊ぶりを発揮する水野蓉子も、この時ばかりはリーダーっぽい。

「誰が?」

「自分でに決まってるでしょうが」

 佐藤聖が不思議そうに問うと、水野蓉子は呆れた顔。

 なんか、ここの掛け合いってたまに漫才みたい。

 浴場に入ったわたし達は、隣同士で服を着替える。

 と、なんとなく視線を感じて振り返れば、何故かこっちをチラチラと見てくる周りのお客さん達。

 ・・・・・あれか。

 美少女は、女性相手でも威力を発揮するのか。

 なるほど。

「巳星さん、三つ編み解くの手伝ってくれる?」

「あ、うん」

 島津由乃の言葉に頷き、わたしは三つ編みを解いていく。

「島津由乃の髪って、細いんだね」

「そうなのよね。だから絡まりやすくて」

 ため息をつく島津由乃に笑って返し、わたしはすべての三つ編みを解いた。

「終わったよ」

「ありがとう、巳星さん」

「どういたしまして」

 笑顔の島津由乃に笑って返し、わたしはふと周りへと目をむけた。

 ・・・・・・あの、凄い見られてるんですけど。
 
 特に、水野蓉子達から。

「なに?」

「いえ。何でもないわ」

 何故か不機嫌そうにそう返す水野蓉子に、わたしは首を傾げつつ服を脱ぎ、腰にタオルをまく。

「じゃ、先に行くね」

「みっ、巳星ちゃん!」

 支倉令に呼ばれて振り返ると、何故か全員から目を逸らされた。

 それも、皆顔が赤い。

 どうした?

「う、上も隠してほしいのだけれど」

「何で?」

 隠す必要ある?

 さすがに下は隠さないとダメだと思うけど、上は、ねぇ?

「め、目のやり場に困りますからっ」

 二条乃梨子にまでいわれた。

 仕方なく、わたしはもう一枚のタオルを胸にまいた。

 すると、何故か安堵のため息。

 ・・・・・・・そんなに見たら危ないか?わたしの胸は。

 それとも、彼女たちは女同士でも裸は恥ずかしい?

 いや、それだったら大浴場には誘わないだろうし。

 まあ、良いや。

 彼女たちがおかしいのは、いつものことだし。

「巳星さん。お風呂にも、メガネをかけていくの?」

「あ、忘れてた」

 福沢祐巳に指摘されて、慌ててメガネを外して服を置いたカゴの中へ。

「み、巳星さんっ」

 予想通り、驚いたような声。

 島津由乃へと顔を向ければ、かなり目を見開いている。

 ああ、目が落ちそう。

 閉じた方が良いと思うけど。

 それでなくても、皆目が大きいのに。

「その目っ」

「うん。オッドアイなんだ、わたし。日本人と、イギリス人のハーフだから」

 小笠原祥子にそう答えると、ハッとしたように納得する皆。

 そんな彼女たちを残して、わたしは浴場へと入っていった。

 うわっ。

 すんごい見られたんですけどっ。

 そんなに女子高生って珍しい?ここ。

 いやむしろ、わたしという存在が珍しい?

 ・・・・・・・いってて凹んだ。

 うん、もう言わない(涙)

 その後を追ってくる水野蓉子達。

「それにしても、その瞳、綺麗ね。メガネをかけるなんて勿体ないわ」

 勿体ないって言葉も、良く言われるんですけど。

「そう?ありがとう」

 とりあえず、そういってくれた水野蓉子に、わたしは笑って返した。





  あとがき。  今までで一番、どうでもよさげな内容・・・。  巳星のオッドアイをばらそう、という趣旨でこの話はかいたので意味がわかんないものに。  駄文、すみませんでした。

 

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