【オバちゃん】


































「スナコちゃーーん!!」


 休日、昼食を食べているとき、バン!と勢いよく食堂のドアが開いた。

 やってきたのはオバちゃん。


 オバちゃんは料理を運んでいたスナコに抱きつくと、唖然としている恭平たちにウィンクを向けた。


「久しぶりね、みんな」

「・・・・相変わらず、神出鬼没だよね、オバちゃんて」


 雪之丞がしみじみと呟けば、3人も頷いている。

 スナコに恋人が出来たためか、4人とも余裕だ。


「それで、スナコちゃん。恋人の子は?」

ちゃんは、今日は乃衣ちゃんと一緒にもう少しで来るって」

「さっき電話があったんだよね、スナコちゃん」

「はい」

「楽しみだわ♪」


 うきうきなオバちゃんに、ミニマムスナコもかすかに雰囲気を明るくさせる。


「スナコちゃーーん!ちゃんがきたわよーー!」


 ばっと、スナコが駆け出した。


「・・・・・彼女が来ると、スナコちゃんていつもああなの?」


 それを唖然と見ていたオバちゃんは、スナコのありえない行動に目を見開いたまま、昼食を食べている恭平たちを見た。

 4人とも、そろって頷く。


「誰よりも早く駆け出すよね」

「俺たちが先に行こうとすると、邪魔してきたりするんだよね」

「さすがのオバちゃんも、見たことないでしょ」


 にっこり笑顔の雪之丞、苦笑する武長、にやりと笑う蘭丸。

 それに、オバちゃんの顔が一気に輝きだす。


「やっぱり、恋をするとスナコちゃんも変わるのね!」

「変わるってもんじゃねぇよ。変わりすぎだろ、ありゃ」

「たとえばどんなところよ、恭平」

の頭とか撫でるんだぜ?あいつ」

「そうそう。最近は、ちゃんと出かけたりとか、ね!(ホラービデオ借りに行くだけだけど)」

「それに、乃衣っちとちゃんを取り合ったりとかもするんだよ」

「たまに2時間くらい部屋から出てときもあるし。あれは、絶対にヤってるね」


 恭平に続いて、雪之丞も武長も、蘭丸もオバちゃんに楽しそうに報告している。

 さらに輝くオバちゃんの顔。


「そう、やっぱり恋したらそうでなくちゃ!」

「あ、ちゃんきた」


 雪之丞の言葉にオバちゃんが勢いよく振りかえる。

 オバちゃんの目に入ったのは、スナコと乃衣と手をつないでやってくる、黒服を着た、前髪がギザギザでメガネをかけた可愛い女の子。

 喪服のようなものを着ていて、前髪も乱雑だし黒縁メガネだが、それでも十分目を奪われるくらいに可愛い少女だ。

 スナコにむける笑顔もあり、さらに可愛い。


「・・・・可愛いーーー!!」


 乃衣のように飛びつくオバちゃんに、は目をぱちくり。


「オバちゃん、駄目」


 むぅっと眉を寄せて、スナコがが取り戻すように抱き寄せた。

 乃衣と取り合い、いつも似たような状況になるくせに、相変わらず慣れないらしいは顔を赤くする。


「「可愛い!!」」


 オバちゃんも乃衣も、声をそろえて叫ぶ。

 それを無視するように、スナコはの手をとってさっさと自室にこもってしまった。

 2人は、その後ろ姿を見て口に指をあてて不満そう。


「もう行っちゃうなんて、つまんない」

「本当よね。もっとあの子のこと堪能したかったのに」


 だが、オバちゃんはうっとりと頬に手をあてた。


「けど、スナコちゃんが本当にああなるなんて・・・・」

「俺たちも予想外だったよね」

「「「うんうん」」」


 武長に3人も同感らしく、頷いている。


「ところで、あの子の前髪なんであんなにギザギザだったの?」

「ああ、それは恭平が無理やり切ったからね」

「うん。押さえつけて、ね」

「・・・・・・なんですって?」


 ビクッと、笑いあっていた4人が肩を震わせ、オバちゃんを見た。

 オバちゃんは背中から黒い靄をはなっており、かなり怖い。


「恭平、あなた、スナコちゃんの恋人を無理やり押さえつけたの?」

「だ、だって、そうしないと暴れて仕方なかったんだよ!それに、切ったのは俺だけど、押さえつけたのはこいつらだぞ!!」


 恭平が怯えながら雪之丞たちを指差す。

 その間に、乃衣はそそくさと離れていく。

 そのとき、助けようとするスナコを押さえつけていたのは乃衣だから。


「あ〜ん〜た〜た〜ち〜?」

「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」


 家に響く4人の叫び声。

 乃衣は聞こえてくる声に、手を合わせた。












































 夕食時間、キッチンではスナコとが一緒に料理を作っている。

 その後ろ姿さえも、オバちゃんはうっとり。


「新婚さんみたいだわ・・・。ねえ、ちゃん」

「あ、はい」

「あなた、こっちに住んだらどう?ご両親には、あたしからお話しておくから」

「え、良いんですか!?」


 嬉しそうにオバちゃんに問うに、オバちゃんも笑顔で頷いている。

 だが、すぐに困ったような顔をする。


「ですが、私月5万円ほどしか、お金が出せないのですが」

「ああ、それならいらないわよ。スナコちゃんの恋人ですもの」

「「「「ずるい!!」」」」

「なに言ってんのよ。あんたたちは下宿人じゃない。3割引にしてやったんだから、それだけで十分でしょ」

「初めはタダでも良いって!」

ちゃんを押さえつけた時点で、それは無理な相談ね。スナコちゃんが切ったのならまだしも、あんたたちがやったんじゃ、話が別よ」

「「「「そんなぁ〜・・・」」」」


 うなだれる恭平たち。


「あ、あの、本当に良いんですか?」

「もちろんよv」


 ぱあっと、の顔が明るくなり、それからミニマムスナコに抱きついた。


「これから一緒ですよ!スナコさん!」


 キャッキャッと喜ぶに、スナコはかすかに口端をあげ、の頭をなでる。

 それを、きゅん、としながら見ているオバちゃんと乃衣。


「兄さんと義姉さんにも見せてあげたいわ♪」


 と、思い出したように雪之丞がオバちゃんに耳打ちした。


「オバちゃんオバちゃん」

「なに?」

ちゃんのご両親に電話、しなくてもいいからね」

「「「「あ・・・」」」」

「なんでよ?」


 雪之丞の言葉で思い出したように、乃衣たちが顔を見合わせ、オバちゃんが驚いて雪之丞を見る。

 乃衣たちが気まずそうな顔をしているのを見て、オバちゃんは首をかしげた。


ちゃん、捨て子なんだ。だから、今は施設から出て一人で暮らしてるの」

「それも、どうやら両親に虐待を受けてたみたいなんだ」

「・・・・・それ、本当なの?雪ちゃん、武長」


 オバちゃんが珍しく真顔で問うと、2人だけではなく全員が真顔で頷き返してきた。

 オバちゃんはいまだに抱き合っているカップル2人へと目を向け、それから何かを考え付いたように頷いた。


「「「「オバちゃん?」」」」

「いいわ。あたしがあの子を引き取る」

「「「「「え!?」」」」」

「なによ、なんか文句でもあるわけ?」

「いや、ないけど!でも、それだとオバちゃん、恋人見つけるの苦労しない?」


 蘭丸の言葉に、全員が頷く。

 オバちゃんは、それに髪をかきあげてにやりと笑った。


「子供がいるから駄目なんて言うような器の小さい男、こっちから願い下げよ」

「「「「オバちゃん、カッコイー!」」」」

「素敵です!」


 乃衣たちの声援に、当然でしょ?といった笑みを返すオバちゃん。


「というわけだから、ちゃん!」

「あ、はい!」

「これから、あなたはあたしの娘ねv」

「・・・・・・・はい!!?」

「良し、返事ももらったことだし、明日からはあなたはあたしの娘になるから、よろしくね♪」

「え!?今のは、返事では!」


 何も聞いていなかったため、慌てふためくの横で、両頬に手をあててムンクの叫びのような格好をしているミニマムスナコ。


「それじゃあ、あたしやることがあるからこれで帰るわ!、スナコちゃんをよろしくねvそれと、次に会ったらお母さん、て呼ぶのよv」

「ええ!!?」


 オバちゃんは笑顔での頬にキスをし、ミニマムスナコは再びムンク。

 それから、慌てたようにを奪還。

 で、急な展開と、頬にだがキスをされたことにより固まっている。


「また来るわ、、スナコちゃんv」


 慣れたようにの名前を呼び捨てにして、迎えに来た執事のヘリコプターで帰っていった。


「・・・・あ、あの、私、何がどうなったのか、よくわからないのですが・・・・」

「大丈夫、俺らもだから」

「あの人はいつも唐突だからね」


 ため息をつく武長と蘭丸。


「とりあえず、飯食おうぜ」

「賛成」


 ということで、たちはわけがわからないが気にしてても仕方がない、ということで席に着いた。


 のだが、後日、本当にオバちゃんが言ったとおりはオバちゃんの養子に入っており、やって来たオバちゃんをお母さんと呼ぶように強制され、呼ぶようになるのだが、このときのたちはそんなこと知らないのであった。























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