<欲のないあなた、強欲な私(みちる×うさぎ)>






 今日は、うさぎと遊ぶ約束をしている。

 といっても、外に出ることを好まない彼女だから、私の家で、だけれど。


 元気で快活。

 それはうさぎの仮面に過ぎない。


 本当のうさぎは、騒ぐのも好きではなく。

 人と一緒にいることも好きではない。

 1人で本を読むのを、どちらかというと好み。

 基本的に”欲”というものを持っていない。


 それを知っているのは、私たちセーラー戦士だけ。


 初めは、私やはるかにも本当を見せてはくれなかったけれど、心を許してくれたのか、今では素で接してくれる。

 知ったときは、本当に驚いてしまった。

 だって、あんなに笑顔の似合う子が、まさか。と。


 ――― ピンポーン


 ハッと顔をあげて、玄関へと急ぐ。

 北風のふくなか、うさぎを待たせたくはないから。


「いらっしゃい、うさぎ」

「うん」


 まるで寒さなど感じない、とでもいうように頷く彼女を中へと促し、鍵をかける。


「寒かったでしょう?コーヒーを入れるわね」

「ありがと・・・」


 かすかな声に、心踊る私。

 おかしいだなんて思わない。

 だって、他のみんなもそうだもの。


 それは別に、うさぎがプリンセスセレニティだったからではない。

 前世は関係ないわ。

 彼女が、月野うさぎだから。

 だから、私たちは彼女が好きなの。

 愛してやまないのよ。


「それじゃあ、お湯が沸くまで、私が暖めてあげる」


 抱きしめると、少し驚いて、けれど目を閉じてくれる。


 ねえ、そんな無防備な姿を、私以外にも見せているの?

 ねえ、そんな風に、私以外にも身をゆだねているの?


 湧き出る思いを言葉にしないのは、わかりきっているから。

 だって、この子はみんなのうさぎ。

 だってこの子は、みんなのセーラームーン。


 それでもたまに、あなたを閉じ込めてしまいたくなるの。

 うさぎと違って、強欲な私は。













<キスマーク(みちる×うさぎ)>





 腕の中で眠るうさぎ。

 無防備なその姿は、いつもの姿とは程遠い。

 それでも唯一証明するところは、眠りについたときの体勢のまま眠り続けるところ。

 物静かで、本を読み出すと数時間同じ体勢でい続ける、この子らしい部分。


 数時間前、この子を抱いた時に見つけた、耳の裏にあったキスマーク。

 それは、誰がつけたもの?

 やはり、亜美、かしらね?


 この子の心を、一番最初に癒した子。

 この子が壊れるのを、一番最初に止めた子。


 うさぎの、特別。

 私たちでは、辿り着けない位置にいるのは亜美。

 あの子、ただ1人。


「・・・・・」


 声ももらさず、ゆっくりと覚醒していく、この子特有の目覚め。

 私は思考を隠して、うさぎに微笑みかけた。


「おはよう、うさぎ。よく眠れたかしら?」


 少しだけ寝ぼけた目で、うさぎは小さく頷いた。

 そんなこの子の額にキスをして、


「耳の裏に、キスマークがあるわよ」


 囁いた。


 微かに強張ったうさぎの体を、ギュッと抱きしめる。

 記憶があるのね、うさぎ。

 といっても、亜美は無理強いをしないから、あなたは素直に受け入れたんでしょうけど。


 責めているわけではないわ。


 そう囁いて、そこに口付けた。

 だって、私以外のキスマークなんて、いらないでしょう?

 だって、あなたは私だけのもの。


 少なくとも、この瞬間は。


 一歩外に出れば、あなたはみんなのリーダー。

 私たちの命を握る人。

 私たちの、心を握る人。


 だから、2人きりのときは。

 今、この時間だけは。


 私以外の誰にも、心を向けないで。


「愛しているわ、うさぎ」












<たったそれだけでも(まこと×うさぎ)>





 うさぎちゃんは、あたしらのリーダーで。

 何よりも、大切な存在なんだ。

 昔好きだった先輩なんて、目じゃないくらい。

 あたしは、彼女が好きだ。





「うさぎちゃん」

「まこちゃん」


 なに?とゆるく微笑むうさぎちゃん。

 うさぎちゃんが感情という仮面を外して微笑むことは、あまりない。

 その状態で微笑むのは、あたしらに対してだけ。

 そう、言っても良いよね?


「チョコケーキ作ったんだ。うさぎちゃんが好きな、甘さ控えめの」

「ありがと」


 差し出した箱を受け取ってくれて、あたしは満足。


「じゃあ、また明日ね」

「待って」

「ん?」

「あがってけば?」


 その嬉しい誘い。

 嬉しいけど、もう8時だし、中学生なら家に帰るべき時間。


「良い、の?」

「嫌ならいいけど」

「全然!あがっても良い?」


 うさぎちゃんは小さく頷くと、さっさと中へと入っていく。

 あたしは嬉しさを隠さず、彼女の後を追った。

 連れてきてくれたのは、うさぎちゃんの部屋。

 家族の前でも仮面をつけているんだから、当然と言えば当然なんだろう。


 でも、あたしは凄く嬉しかった。


「なんか、食べて来たの?」


 うさぎちゃん特有の静かな問いかけに、あたしは頷いた。


「うさぎちゃんは、もう夕飯終わった?終わってなかったら、帰るけど」

「平気」


 短い返答にも、答えてくれることが嬉しくて笑顔になる。

 うさぎちゃんがそんなあたしを訝しげに見るけど、抑えられない。


「なに?」

「なんでもないよ」


 うさぎちゃんが箱をテーブルに置いたのを確認して、その腕をつかんで引き寄せた。

 腕の中に、大好きな彼女を抱きしめる。

 華奢な、その身体を。


「なに?」

「大好きだよ」

「そう・・・」


 それだけ。

 それでも、やっぱりあたしは嬉しいんだ。










<ツンデレー(レイ×夢主)>




「レイちゃん!」


 その声に振り返る。

 いたのは、嬉しそうに駆け寄ってくる恋人。


 誰にも秘密だけど。


「あなたも、今帰りなの?」

「うん!」


 とても嬉しそうに笑う彼女。

 いつだったか、そんな彼女に問いかけたことがある。

 どうして、いつも嬉しそうなの?と。

 返って来たのは、”レイちゃんに会えたから”なんていう言葉で。


 思わず、紅くなった頬を隠すために、頬をつねってしまった。


「レイちゃん、手をつないでもいい?」

「・・・好きにすれば」


 嬉しいはずなのに、それを言葉に素直に出すことも。

 身体で表現することも出来ない。

 彼女とは真逆な、素直じゃない私。


「えへへ♪」


 それでも、この子は私の手を嬉しそうに握り締めてくれる。


 そんな彼女の手を、軽く引き寄せた。

 それが、私の精一杯の行動。


 私のそんな稚拙な行動に、この子は逐一嬉しそうに笑ってくれる。

 まるで、私の心を理解してくれているように。

 まるで、私の感情をわかってくれているように。


「レイちゃん、好き」


 囁かれる言葉。

 連動して紅くなる頬。


 答えることは出来ないから。

 握る手に、力をこめる。

 それが、私なりの答え方。


 素直じゃない私は、言葉には出来ないから。

 本当は、今すぐにでも抱きしめたい。

 私がそれを、ここで実行に移すことはないけど。


 2人きりになったら。

 恥ずかしさをぎゅうぎゅうに抑えこんで、抱きしめるから。


 少しのあいだ、我慢してちょうだい。


「我慢するよ」

「え?」


 驚いてこの子を見る。

 にっこりと、満面の笑み。


 思わず、苦笑。


「馬鹿みたいな笑顔ね」

「うん。レイちゃん馬鹿だもん、わたし」


 恥ずかし気もなく、そう言ってくれるこの子。

 私の、素直じゃない心をわかってくれる子。


 愛してるなんて、言えはしないけど。

 心はいつも、あなたを想ってるわ。

 いつも、あなたに言っているわ。





<火野レイ夢?>











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