【隠れて?】































 十二月田 

 オタッキーでスポーツ万能な十二月田猛臣の妹。


 そんな彼女と怨み屋たちが知り合ったのは、猛臣にいつものように仕事を頼もうとしたときのことがキッカケだった。


【マクロイン王国の同士よ】


 いつもの出だし、いつものようにのどを叩きながら情報屋が携帯をとった相手に声をかける。

 猛臣だと信じて。


 しかし、返って来たのは。


『え?』


 細く柔らかな声。

 猛臣であるはずのない声。


 情報屋と、その後ろで聞いていた怨み屋は顔を見合わせた。

 怨み屋が顎をかすかに示すと、情報屋はマイクに顔を近づけ。


『すみません、今兄を起こしますね』


 それよりも先に、相手がそう答えてくれる。

 その言葉で、相手が猛臣の妹であると悟った。


「・・・・・あいつ、妹いたのか」

「そのようね」


 情報屋はマイクに手をあてて聞こえないようにしながら、ポツリ。

 聞こえる音から察するに、言ったとおり猛臣を起こしているらしい。


『兄さん、電話よ』

『ん〜?』

『えっと、マイ・・・クレヨン王国?の同士さんとおっしゃる方から』


「名前じゃねぇし、マイクレヨンじゃねぇよ」


 思わず突っ込みを入れてしまう情報屋。

 その後ろで、怨み屋がくすりと笑った。


 それでも猛臣はわかったらしく、すぐに猛臣の声が。

 その声に、情報屋も怨み屋も、耳を押さえた。


 そんな、小さな出会い。

 だからこそ、怨み屋はその日のうちに彼女のことは忘れてしまっていた。

 それを思い出したのは、何日か後に情報屋の事務所に行ったとき。


「怨み屋、これがあいつの妹だ」

「?」


 眉を寄せ、怨み屋はソファから立ち上がると情報屋が見ているパソコンに目を向けた。


【 十二月田 

 歳: 20歳。

 ○○大学に在籍している2年生 】


 パソコンに映っている、女性とも少女ともいえない、中間の地点にいるような。

 綺麗と可愛いを併せ持った、まだ大人と子供の狭間にいるような。

 そんな顔立ち。

 レベル的には、かなり高い。


「ああ、このあいだの」

「おう。一応調べてみたんだ。にしても、本当にこいつら兄妹か?」


 情報屋が険しい顔で首をかしげながら、パソコンの横に猛臣の写真を並べる。


 悪いが、まったく似ていない。

 パソコンに映っているを見ただけで、彼女が優しいであろうことが想像つけられる。

 反対に、猛臣は見たまんまオタクだ。


「しんじらんねぇな・・・・」

「そうね。不思議な兄妹。それより、頼みたい仕事があるんだけど―――」


 怨み屋はそう言って依頼へと話しを変えたが・・・・・。






































「聞いてください、咲さん」

「なに?」


 は一番仲が良いと言っても良い友達に、嬉しそうに声をかけた。

 彼女はノートから目を離さずに先を促す。


 周りにお華を撒き散らし、はそんな彼女の耳に囁いた。


「っは!?キスしたぁぁぁーーー!?」

「「「「「なにぃぃぃぃぃ!!??」」」」」

「「「「「なんですってぇぇぇぇ!!??」」」」」


 彼女の声がその教室に響き渡ると同時に、男達と女達が勢いよく立ち上がり叫ぶ。


 は周りのことなど見えていないように、頬を染めて恥ずかしそうにこくりと。

 それを見た男達&女達が一斉に頬を染め、デレっとなる。


 この反応を見ればわかると思うが、は大学でアイドルのような扱いを受けている。

 いつも浮かべている柔らかな笑み。

 性格はいたって純粋で、とても優しい。

 容姿も綺麗で、申し分ない。

 それでも女性から嫌われず、むしろ好かれているのは、が放つおっとりとした雰囲気のおかげだろう。


「あ、あんた、恋人いたの!!?」


 の友達も周りのことなど気付かないように叫ぶ。

 それにさらには頬を赤くした。


「さ、昨日、告白をしたんです。そうしたら、付き合ってくださると」

「ちょっと!付き合ったその日にキスするってどういうやつよ!!」


「いや、俺ならする」

「俺も」

「私も」

「うん」


 そんな外野は無視して、彼女はを睨むように見た。

 はそれにおっとり、頬を染めたまま微笑む。


「優しい方です」

「どこが!!っていうか、どこで知り合ったわけ!?」

「兄の上司さんのうちのお1人です」

「・・・・あれの?っていか、猛臣さんって仕事してたっけ?」


 一気にテンションが下がる友人。

 彼女が思い浮かべるのは、「チュチュ〜ン」が口癖の男。


 実は彼女、と猛臣の幼馴染。

 ゆえに、たちの家庭環境のことも知っていた。

 高校は離れたのだが、大学でまた再会したのである。


「はい。最近、上司さんからお仕事を頼まれるそうですよ」


 ふわりと微笑むに、友人は大きくため息。

 色々と不明で気に食わないところがあるが、が一番に報告してくれたことでよしとしよう、彼女はそう思うことにした。

 相手がを泣かせるようなことがあれば、即効報復してやる、とも。


「まあ、おめでと」

「ありがとうございます、咲さん」


 彼女がの頭を苦笑しながら軽く叩けば、の周りを華が舞う。


 その華に埋もれるようにして咽び泣く、外野は当然無視である。





























 都内にある、高級ホテルのスィートルーム。

 はそこで、怨み屋の肩に頭を預けながら今日のことを話していた。


 本来ならば、誰一人としてあげることのない、怨み屋が定宿しているその部屋に。

 何より、怨み屋はカツラをとり、本来の姿を晒していた。


 それはきっと、それほどに気を許しているということ。


「良いお友達じゃない」

「はい。咲さんは大切なお友達です」


 柔らかく微笑むその顔に、怨み屋はゆっくりと顔を近づけていく。

 それに気付き、は頬を赤くして目を閉じた。

 重なる唇。


「ン・・・・」

「まだ慣れない?体が強張っているわ」

「・・・はい」


 怨み屋の指が、緩やかなカーブを描いた黒髪に絡められる。

 唇を重ねるだけの行為に酔いしれるように、はうっとりと頷く。

 そんなに、怨み屋はくすりと笑った。


「なら、慣れるまで何度もしましょうか」

「・・・・・はい」


 の耳元で、妖艶に囁く怨み屋。

 それに、はか細い声で、けれど確かに頷いて返した。


 怨み屋の口元、深まる笑み。


 笑みを浮かべたまま、怨み屋は再びに顔を近づけた。



 その一週間後、大学で身体を重ねたことを報告すると。

 それに叫ぶ学生達。

 またもや展開が早い、と怒鳴る友人の姿があった。





















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