【はじめまして】






「今日付けで、東方司令部勤務になりました。です」

 右目眼帯をした自分と同じ位の身長の女性。

 というよりも、少女と言った方が良いかもしれない。

 その雰囲気は、どこかしらやる気のなさが伺える。

「彼女の階級は、少佐だ」

 自分よりも下の、それも女性がくる事に初めて聞かされたときはかなり驚いた。

「若輩者なんで、仕事以外では敬語とか要らないです。本音は、仕事でも止めてほしいんですけどね」

「こらこら。それだと、示しがつかないだろう」

「そうなんですか?」

 めんどくさそうにマスタング中佐を見る少佐。

「そうなんだって」

 それに苦笑して返すマスタング中佐。

 会話を聞く限りでは、どうやら知り合いのようだ。

「若輩ものって。少佐はいくつなんスか?」

「17ですよ」

 その言葉にざわめきが起こる。

 それはそう。

 私だって驚いたんだもの。

 少佐という位の人が、まさか20にもなっていない人だなんて。

 マスタング中佐でさえ、25歳前に中佐になって、それさえも若いといわれている位なのに。

「良くそんなんで、少佐にまで上り詰めましたね」

「まあ、おじが大統領だからじゃないですかね?」

 言外に、自分の実力ではないといっている。それで良いの?

 ほら、みんな驚いてさっき異常にざわざわと騒ぎが起こる。

「自分で言うか?そういう事」

「だって、本当の事ですから」

 確かに、見ているとそんな気がする。

 マスタング中佐みたいに、大統領になりたくて上に上がった。と言うような目もしていないし、どちらかというとめんどくさがり屋っぽい。

 でも、それが妙に彼女に似合って見えるのは気のせいだろうか。

 そんな風に思う自分に気づいて、私はハッとする。

 だって、私は彼女のように七光りで上に上がる人間が嫌いなはず。

 なのに、彼女には何故か憤りは感じない。

「まったく。相変わらずだな、君は。それじゃあ、自己紹介だ。ホークアイ少尉、まずは君からだ」

 大佐の言葉で、私は慌てて思考を現実に戻すと頭を下げた。

「リザ・ホークアイです。階級は少尉です。よろしくお願いします」

 
 それが、私と少佐との出会いだった。


「マスタング中佐!ちゃんとやってください!!」

 今日も今日とて、ロイは逃げる事に躍起になっている。

 今日も、デートがあるらしい。

「ホークアイ少尉、許せ!!」

 そういって窓から逃げようとするロイに、リザはすばやく銃を構えて撃とうとする。

 けれど、それよりも早く窓枠に小刀が突き刺さった。

「「・・・・・・・・・・・・」」

 どこから投げられたのかわからない小刀に、ロイとリザは沈黙して目を見開く。

 それは、ハボックたちも同じ。

 けれど、今までこんなものを投げてきたものがいないため、必然的に最近やって来たへと目が向けられる。

 の手は小刀を投げたままの手で止まっており、タバコを咥えた状態で書類を見ていた。

「い、今の少佐っスか?」

「はい。そうですけど?」

 書類から目を放し、冷や汗を流しているハボックを見る。

 その顔は、とてもめんどくさそう。

 ハッとするロイとリザ。

!上司に武器を投げるとは何事だ!」

「上司なら、上司らしくしてください。中佐が仕事しなかったら、こっちが迷惑なんです」

 欠伸をかみ殺したような動作をしながら、サラリと言う。

 書類から、目さえ放さない。

「というか!君は未成年だろう!タバコなんて吸うんじゃない!」

 ロイは話題を変えるかのように怒鳴る。

 けれど、は涼しい顔。

「嫌ですよ。目の前でタバコを吸っている人がいるのに、我慢なんてできません」

 目の前と言うと、ハボックの事である。

「はぁ、まったく・・・・・」

 思いため息をついて、ロイは額に手を当てる。

「んなことより、早く仕事してくださいよ。2投目行きますよ?」

 やはり書類から目を放さずに、はどこからか小刀を出して手だけ構える。

 それにハッとしたように、リザがロイを見た。

「マスタング中佐」

「わ、わかった。だから、投げないでくれ。睨まないでくれ」

 とリザに言い、ロイは渋々席についた。

 ロイが席についたのを見届けたりザは、の隣の席、自分の席に座り書類を見ているを覗き見る。

 その手には、すでに小刀はなくなっており新しい書類を持っている。

 先ほどのの小刀の素早さが、リザはどうしても気になっていた。

「(本当に、七光りなのかしら・・・・・・?)」

 リザは違うのではないだろうか。と思った。

 彼女は、17歳だけれど実力はちゃんと持っているように感じたから。








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