【口下手な君】































 目の前では、仕事をしているフェイトがいる。

 空中に浮かんだモニターを見つめて。


 いや、それは別にイイと思うよ?

 中学生でお仕事とか、ここなら上司しょっ引かれるよね、とか思わないでもないけど。

 私こと も、実はさりげなくデバイスのマイスターとかですし。


 まあ、フェイトたちには言ってないんだけど。


 言わない理由?

 別にない。

 全員部署?違うけどどっかで会うでしょ。


 ビックリした時の表情を見たい、とかではなく、ぶっちゃけめんどくさいだけなんだけどね。


 で、だ。

 言いたいのはそこではなく。


 テメェが呼んどいて放置とはどういう了見だ、コラ。ってこと。


 なのはさんはお仕事。

 はやてさんもお仕事。

 すずかさんとアリサさんは習い事。

 フェイトさんはお暇で、同じくお暇だった私に一緒に遊ぼう、と声をかけてきまして。


 で、放置ってなに?

 なに?嫌がらせ?

 つーか、マジでこの子は何がやりたいのかすらね〜?

 仕事あるなら誘うなよ。

 仕事が急にきたら、メールしやがれ。


 確かに今日は暇だって言ったけどさ。

 けどさすがに、フェイトの仕事する姿見つめ続けるほど変態さんでも、やることが何も無いわけでもないんだけどね。


「帰ろっかな・・・」


 ポツリと、呟く。

 いる意味ないし。


 すると、凄い勢いでフェイトがこちらを振り返った。


「ごごごごめん、!もうすぐで終わるから、ちょっと待ってて!」


 凄いね。

 集中してたっぽいけど、聞こえてたらしい。

 いや、もしかして集中してなかったってオチ?


 まあ良いや。


「本当だね?」

「え?」

「本当にあとちょっとだね?1時間以内に終わらなかったら、今度こそ帰るよ?」

「あ・・・うぅ・・・頑張る・・・」


 そんな沈んだ表情されても。

 まるで、こっちが悪いみたいじゃないか。


 天然系美人って、本当やっかい。


 ため息をつけば、チラチラとこちらを見るフェイト。

 いや、こっち見てる暇があるなら仕事やりなさい。

 1時間たったら、マジで帰るよ?


「そうだフェイト」

「あ、なに?」

「ベッドに寝ても良い?」

「え・・・?・・・・ええ!?」


 大げさなほどの反応をするフェイトに、私はベッドに上がろうとした体勢のままフェイトをみた。


「なんでそんなに驚いてるわけ?前借りた時は、別にそんな風に驚いてなかったのに」

「あっ、だ、だってそれはっ///」

「それは?」

「そっ、それは・・・っ///」


 なにやらもじもじし始めたフェイトを訝しみながら、ベッドに座る。


「まあ良いけど。ベッド、借りても平気?駄目なら床で寝るけど」


 別にそんなに眠いわけじゃないけど、やることもないし。


「ゆ、床でなんて駄目!・・・良いよ、ベッド///」

「?ありがと」


 変なフェイト。

 最近はいつも変だけど。


「1時間たったら、起こしてもらっても良い?」

「う、うん」


 何故か顔を赤くしながら私を見てくるフェイトに首を傾げつつ、布団の中にもぐりこんだ。


 う〜む、やっぱりフェイトのベッド、気持ち良いね。

 リンディさん、きっと奮発したんだな。



































<フェイト 視点>


 5分もしないうちに横の方から聞こえ始めた、の寝息。


 うぅ・・・。

 どうしよう、集中できないよ・・・///


 チラッ。


 あ、顔むこう向いてる。

 残念だな・・・。

 って、仕事しなくちゃ仕事!


 熱い顔を叩いて、気合を入れた。

 1時間でこれ終わらせないと駄目だし。

 終わらせられなかったら、は帰っちゃう。

 それは、嫌だ・・・。


 集中集中・・・。


 頑張って意識がに向かないようにしながら、仕事を片付けていく。

 って、これって明後日までに終わらせられれば良いんだったっけ?


「・・・でも、緊張してなに話せばいいかわからないし・・・」


 はやてが言ってたな・・・。

 これは、恋なんだって・・・。


 一緒にいるとドキドキして、

 なに話せばいいかわからなくて、混乱するし。

 なのはたちとが話してるのを見ると、すっごく胸がモヤモヤする。

 それに、離れてるとなんだか気分が沈む。


 これが、恋・・・。


 本で読んだけど、確かにそうなのかもしれない。

 の一挙一動に喜んだり悲しんだり。


 なのはたちと友達になる前は、全然予想もしてなかったな・・・。


 いつからだったかな?

 私が、をなのはたちと違うと思うようになったの。


 初めは、不思議な人だと思ってた。

 落ち着いてて、たまに同年代に見えないときがあって。

(はやては枯れてるんだって言ってたけど、どういう意味だろう・・・?)


 でも、遊んでる時たまにが無邪気になる時もあって。

 その時のは、凄く可愛いと思う。

 それを言ったら、フェイト鏡見たことある?って凄い呆れた目で見られるけど・・・。


 ・・・気がついたらだった。

 気がついたら、を目で追うようになってた。

 一緒にいたくて。

 けど、一緒にいる間ドキドキして、落ち着かなくて。


 でも、幸せな気持ちになるんだ。


 ちらりと、へと目を向けた。


「ん・・・」

「っ!」


 同時にの顔がこっちを向いて、体がビクってなった。

 心臓もうるさい。


・・・」


 小さい声で声をかけるけど、返事はない。


 寝てる、よね・・・?


 私はそっと。

 そぉっと、ベッドで寝てるに近づいていった。


 なるだけ体重をかけないようにしながら、ベッドに両手をついた。

 少しだけ鳴るベッドに、またドキッとする。

 でも、は起きなくて、ホッと息を吐き出した。


「・・・・・・」


 駄目なこと。

 いけないこと。

 わかってても、私の目は逸らせない。


 小さく開いた、の唇。


 まだ、私たちは中学生。

 もう、私たちは中学生。

 どっち、かな・・・?


(チャンスがあったらいかんと!は鈍感やし、それくらいやらんと気づかんよ!うん、女は度胸やで、フェイトちゃん♪)


 ふと、以前言われたはやての言葉が思い浮かんだ。


「女は、度胸・・・」


 どうしよう・・・。

 喉が渇く。

 口の中も。

 それに、心臓がうるさくて、苦しいくらい。


(それはね、ちゃんにしか治せないんだよ)


 自分の症状をなのはに教えたとき、言われた言葉も浮かんだ。


 なら治せる、恋の病。

 恋した相手にしか治せない、病。


 私は、眩暈がするほどの苦しさを押し殺して、に顔を近づけた。

 ゆっくり。

 心臓の音に押しつぶされそうになりながら。


 柔らかさを唇に感じた瞬間、世界が止まったように感じた。

 苦しみも、消えたように感じた。


「・・・・・・・・・・」


 どれくらいたったかわからない。

 1時間?

 1分かもしれない。

 1秒、ではないと思うけど。

 私は、の唇から自分の唇を離した。


 そのま、布団に顔を押し付ける。


 だって、顔が熱い。

 さっき感じた顔の熱さなんて、足元にも及ばないくらい。


「・・・なのはの嘘つき・・・」


 さっきより、苦しいよ・・・。































 が目を覚ますと、何故か顔の真横で布団に顔を押し付けるフェイトの姿が見え。

 さらに、見えた耳が真っ赤に染まり。


 不思議に思いながら顔を上げれて時計を見れば、すでに寝始めてから2時間が。


 フェイトは、に眉間をぐりぐりされ。

 違う種類の苦しみを味わうことになるのだった。






















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