【似ていて似ていないあなた】
廊下で、前を歩く、私と同じ髪を持つ後ろ姿を見つけ、駆け寄った。
「」
振り返るその仕草は見惚れてしまうくらい鮮麗されている。
足の運びに隙はなく。
いつでも攻撃されれば反撃するくらいの。
そんな彼女の姿は、どこかシグナムを思わせる。
「フェイト、どうかした?」
初めて彼女と出会ったとき、アルフでさえわからないほど同一だった私たち。
それは、なのはたちと一緒に小学校を卒業した辺りから、変化していった。
「ううん。が、見えたから」
「そう」
「は、これからどこに行くの?」
「担任に呼ばれて、今から職員室に向かうところ。フェイトは?」
「あ、私もだよ。一緒に、行っても良い・・・?」
うっすらと微笑むに、嬉しさで口が勝手に笑みを浮かべた。
私は、彼女の細くて長いその手を握り。
も、私の手を握り返してくれる。
そんな、些細なことが、とても嬉しい。
と私は瓜二つ。
それは当たり前のこと。
私もも、お母さんの本当の娘であるアリシアのクローンだから。
それでも、今の私達は当初ほど似てはいない。
の方が身長が高いし。
髪の長さもの方が長くて、簪って言うので纏めている。
私は戦士系で近距離系だけど、はなのはと同じ魔砲系で遠距離系。
性格も、常に冷静で、自分ひとりで何でもしてしまうタイプ。
表情も、あまり笑うこともなくて、見ようによっては冷たい表情。
それも、は本人が言うには、こことはまた違う世界の高町なのはだったんだって。
パラレルワールドか、ってクロノは言ってた。
ある日、気がついたら”時の庭園”のクローン廃棄場所で目が覚めたらしい。
ずいぶんと驚いたと、そうは聞こえない声音で教えてくれた。
そこから管理外世界に逃げ出して、私たちが地球にやってきた数日前に海鳴町にやってきたらしい。
それを聞いたのははやてたちとのことも終わった後で、私だけじゃなくてみんな驚いた。
けど、一番驚いてたのはなのはだと思う。
だって、私と同じ顔をしたが、本当は自分だったんだから。
普通は信じない?
かもしれない。
でも、は絶対に嘘は言わない人だし。
クロノたちも、嘘をつくメリットがないって認めてくれたし。
だから、私たちは今双子として生きてる。
それに、そんなことどうでもいいくらいの問題があるんだ。
「フェイト?」
「あ、なんでもない」
「そう?」
「うん。心配しないで、」
返事の変わりに、ギュッと少しだけ強い力で握ってくれる手。
私も、同じくらいの力で握り返す。
双子。
本当は、同じ人物を素に作られたクローン。
でも、は綺麗なんだ。
模擬戦の時の真剣な顔。
勉強をしてるときの眼鏡姿。
特有の、小さな、でも優しい笑み。
敵に向けるときの、冷徹な瞳。
私にはないそれらは、すっごく綺麗で。
”なるしすと”?とかそういうんじゃなくて。
何でこんなに、大好きなんだろう。
何でこんなに、一緒にいられることが嬉しいんだろう。
何でこんなに、笑いかけてもらえると心が躍るんだろう。
ううん、本当は知ってる。
なのはと一緒に、話し合ったから。
自分であり自分ではないへの感情に戸惑っていたなのはと。
「」
「なに?」
「あ、あの、ね?」
「言ってみて」
「・・・大好き、だよ?///」
恥ずかしいと思いつつそう言うと、は微笑んでくれた。
私たち、近しいものにしか向けることのない、綺麗な。
見惚れるくらい、優しい笑みを。
「ありがとう。私も、フェイトが好きよ」
躍る心。
私と同じじゃないとわかってるけど。
愛する人からの”大好き”は、誰からの言葉よりも格別。
母さんからよりも、なのはからよりも。
いつか、私を妹としてじゃなく、1人の人間として見てくれるといいな。
ブラウザバックでお戻りください。
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