【表の顔、裏の顔】
「ちょっとばかし、傷が深いね〜」
「どれくらいで治りますか?」
「2,3日で治るから、安心していいよ」
「良かった・・・」
ホッと安堵の息をつくアレンに、治療をしていた女性、 はにっこりと笑った。
アレンはその笑みに、恥ずかしそうに頬を染めてしまう。
173センチ、47キロのほっそりとしたスレンダーな体をした、25歳の美人医療班員。
それに反して笑う顔は幼く、言われなければ10代後半に見えるは、リナリーに負けず劣らずの人気がある。
そんな彼女の唯一の欠点をあげるならば・・・・・。
――― バン!!
「美緒君、聞いてよ!僕のリナリーが!!」
――― シュッ
――― トスッ
「ここは怪我をした人が来るところです。元気な方は即刻立ち去ってください」
「ハイ」
それは仕事中、怪我人以外には容赦がないこと。
もっとも、そんなところも人気の一つなのだが。
解説するならば、【バン!!】がコムイが勢いよくドアを開けて入ってきた音。
【シュッ】が、コムイに向けてがメスを投げた音。
【トスッ】は、コムイの右頬を軽く削って壁に刺さった音である。
姿勢を正し、回れ右をして部屋を出て行ったコムイ。
それを見届けることなどせず、は何事もなかったようにアレンの右腕に負った傷に、包帯を巻いていく。
そんなを見つめるアレンの目には、尊敬の色が。
コムイのせいで、何かと酷い目にあっているからと思われる。
「はい、これで良いよ。けど、水にぬらしたりしないようにね」
「はい。ありがとうございました」
立ち上がって頭を下げたアレンに、は笑顔で手を振って見送る。
その25歳とは思えない可愛らしい笑顔に、アレンはまたしても頬を赤くしながら医療室から出て行った。
「ん〜〜にゃ」
立ち上がり、可愛らしい声をもらしながら伸びをして、
「這唐チ∂∽★£っ$!?」
両脇から現れた腕をみて叫び声をあげた。
その腕は気にすることなく、の腰辺りにまわり、きゅっと抱きしめた。
それによって、自分が誰かに抱きしめられていることを理解し、は顔を後ろに向ける。
「リナリー・・・・」
酷く安堵したような声。
両腕の主、リナリーはクスクス笑いながらを見ている。
「ビックリしすぎよ、」
「だって、誰もいないと思ってたから」
「そんなだから、こうやって私に抱きしめられちゃうのよ」
「別に、リナリーだったら良いよ」
にっこりと微笑む。
リナリーはそれに見惚れるように軽くつま先を伸ばし、顔を近づけ。
もそれに答えるように、そっと目を閉じた。
離れてはキスをし、キスをしては離れて。
それを何度も繰り返し、とリナリーはなかなか過ごせない2人きりの時間を取り戻そうとするかのように口付けを交わす。
リナリーからのキスは範囲をまし、瞼、頬、額へと。
それから戻って唇にキスをして、下へと降りていく。
「ま・・・って・・・・」
「いや?」
首を傾げるリナリーに、は首を横にふって答えて、ちらりとリナリーの後ろに目を向けた。
そこにあるのは、用の仮眠ベッド。
「来て」
リナリーはそれに気づいて笑みを浮かべると、の手を引き、仮眠ベッドに押し倒した。
「愛してるわ、」
「リナリー・・・」
「髪の毛一本一本でさえ、を形成する細胞一つでさえ、愛してるの」
耳たぶにキスをしながら、リナリーは囁く。
「私も、リナリーが好き、大好き。愛してるなんて言葉じゃ、表しきれないほど」
リナリーは嬉しそうに顔をほころばせると、そっと口付け、の着ていた白衣の下にある服に手をかけた。
リナリーが戻った後、は医療室の鍵を閉めた。
白衣を羽織っただけの、艶めかしい姿で。
「何の用?ロード・キャメロン」
振り返ることもせず、抱きついてこようとしたものに向かって問いかけた。
リナリーに抱きしめられた時は驚いていたのに、だ。
相手はそれを気にした様子もなく、そのままを抱きしめてくる。
リナリーや他のエクソシストがいたときとは天と地の差ほどある、静かな表情のを。
「ずるいなぁ〜」
「答えてくれない?」
「僕、リナリーは好きだけど、はもっと好きなんだよね〜」
先ほどのリナリーのように、ロードはつま先を伸ばし、の顔を後ろに向かせ、そのままキスを。
はそれに、抵抗するそぶりさえも見せない。
「そう。ありがとう」
「だからさ〜、の体に香りを残せるリナリーに嫉妬しちゃう」
の素肌を這う、ロードの手。
はそれを気にした様子もなくその手を振り払い、椅子に座り脚を組んでロードを見た。
「あなた、そのためだけに来たの?」
「もちろん♪」
ロードの両手が伸び、けれどその両手は、がデコピンをするように指を弾いたとたん、吹き飛んだ。
両手のなくなったロード。
けれどその手は瞬く間に再生してしまう。
しかし、はそれに驚いた様子もなく、むしろそうなることを知っていたかのように、静かにロードを見つめていた。
「さすが、永劫の護り手。凄ぉい威力」
「千年伯爵も、相変わらず頭がゆるくて困り者だね。何度同じことを繰り返せば気が済むのか」
膝に肘を、頬杖をつく。
そこには、リナリーたちに見せていた可愛さはなく、艶やかな雰囲気を放っていた。
「ねえ、〜。なんでエクソシストたちと一緒にいるのぉ?僕と一緒にいてよぉ」
「悪いけど、それは無理。私はあんたたちの戯言に付き合う気なんて、毛頭ないから。私はね、いつだってあなたたちの敵なの」
にこりと笑うは美しく、そしてどこまでも妖艶だった。
「それじゃあ、ばいばい」
が笑みを深めてそう言ったとたん、ロードの後ろに扉が現れた。
それは、何十もの鎖が巻きついた、異様な扉。
扉は嫌な音を響かせながら、鎖を引きちぎり、開いていく。
「うわぁ、まじぃ?」
ロードは彼女には珍しく、どこか慌てたような表情で部屋の窓から飛び出し。
扉から這い出した白い手が、空気をきる。
「残念」
そうとは思っていないように、はクスクスと笑う。
扉は役目を失ったように霞んでいき、消えた。
残ったのは、白衣を羽織り笑うだけ。
「けど、憶えておきなさい、ノアの一族。もしリナリーを傷つけたり悲しませたりした場合、私は本気で、あなたたちを滅しにかかるから」
1人であるというのに、は紡ぐ。
まるで、聞こえているのだと信じて疑わないように。
「再生する間もなく、悲鳴をあげる間もなく、命乞いさえする間もなく、ね」
の瞳が、一瞬だけ黄金色に煌いた。
あとがき。
きっと、原作とは違う方向にいっているんでしょうね、このお話。
いや、いってて当然ですが。
原作、5巻くらいしか持ってないし、それ以降のお話知りませんし。
なら書くなよ、なんてツッコミをくださる方には、とりあえずごめんなさい。
ブラウザバックでお戻りください。
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