【生きている、あなたが】































「・・・っ」


 青キジ。

 いつか現れると、わかっていた。

 わかっていたのに・・・。


 彼は、私を見逃すといった。

 ただ、確認しにきただけだと。


 けどそんなこと、信用できない。


 航海士さんも、いつもみたいに自然体でいながら。

 けれど、いつも見ている私からしてみれば、あれは警戒している。

 何も思っていない風を装う、その仕草。

 海賊であっちは海軍だから、そうなるのも仕方がないのかもしれないけれど。


 そしてやはり彼は、私たちを殺すといった。


「―――少数とはいえ、これだけ曲者が顔をそろえてくると、後々面倒なことになるだろう。初頭の手配に至る経緯。これまでにお前達のしてきた所業の数々。

 ―――その成長速度。長く無法者どもを相手にしてきたが、末恐ろしくおも・・・・何がおかしいのかな?お嬢さん」


 青キジが見ている先。

 私やクルーたちがそちらに目を向けると、クスクス笑う航海士さんがいた。


 硬質な瞳。

 感情の乗っていない笑顔。

 今まで見た以上に、今の彼女は何かがおかしい。


「手配に至る経緯・・・そりゃそうよね。その経緯がまさか、私の村を襲い人々を殺してきた海賊と、それを倒すべき海軍が手を組んで。ルフィたちがその海賊を倒した途端、手柄は自分のものだとか、海賊が持っていた、村から徴収した金品は全て自分のものだとか言い始めた海軍をぼこって指名手配されたなんて、ありえないもんね?」


 ・・・それが、彼女の過去・・・?


「・・・・・・」

「そりゃあ、あんた達海軍にとってみたら、自分たちがただたんに”正義”だと驕っていただけだった、って知られたらまずいし?」

「言うねェ、お嬢さん」

「ああ、ごめんなさい。海軍て、私大っ嫌いなの」


 にっこり、棘のある笑顔。

 棘なんて、そんな軽いものではない。

 たぶん、大っ嫌いなどという次元でもない。


 彼女はきっと、海軍を憎んでいるんだわ。


「・・・俺たちだって、島全てを守ることはできないの。わかるかな?」

「ええ、そうよね。人が少ないんだもの、海軍が海賊と手を組んでも仕方がないわよね?」

「・・・・・・」

「それで?”正義”の薄汚さを知っている私たちを殺しに来たんでしょう?」

「・・・軍を代表して、謝るよ」

「そんなものけっこうよ。あんたが謝っても、殺された人達は帰ってこないわ。みんなの苦しみは癒されない。自己満したいだけなら、それを望む人達にしてあげて?」


 笑顔で突き放す航海士さん。

 そんな彼女を見つめながら、青キジはゆっくりと立ち上がり。

 私は咄嗟的に、彼女を後ろに庇うように立った。


 青キジはそんな私を驚いたように見たけれど。

 それを無視して、私は彼を睨みつけ。

 みんなも、戦闘体勢にはいった。






























 私は、航海士さんの凍傷になった手を、息を吹きかけながらこする。


 あのあと、コックさん、剣士さん、船長さんの体の一部が凍らされて。

 航海士さんは、青キジから私を庇って全身を凍らされた。


 船長さんに言われるまま、私たちは凍った航海士さんの身体を運んでお風呂の中へ。

 水をかけて、氷が割れないように溶かして。


「ごめんなさいっ、私のせいでっ」


 何度言ったかわからない言葉を言いながら、水をかけて。

 涙が、滲んだ。


「ごめんなさい・・・!」

「もう良い、ロビン!ナミはすげェんだ!こんくらいで死んだりするもんか!!」


 船医さんも泣きながら。

 私も泣きそうになりながら、彼女に水をかけ続けた。

 そのすぐあと、追加された船長さんも一緒に。


 夕方、船医さんのおかげで鼓動を取り戻した2人。

 私はその場にへたり込み。

 みんなは歓声を上げた。


「・・・なんだ、お前も気が抜けたのか?」


 片眉を上げた剣士さん。

 も?


 少し視線を移せば、倒れこんでいる長鼻くんがいる。


「・・・そうね。気がぬけたわ・・・」

「ふん。あんまり気にすんなよ、結局無事だったんだしよ」

「・・・・・・」


 剣士さんが気を使ってくれているのはわかる。

 けれど、もともと私が凍らされるはずだった。

 航海士さんは、そんな私を庇って・・・。


 気にせずにいられるはずがないじゃない・・・。


「第一、あいつはたぶん気にしてねェ」

「・・・ええ、そんな気がするわ」


 本当に、一切気にしていない気がする。


「ロビンロビン!」

「どうしたの?船医さん」

「お前、ナミのこと気にしてたし、会いにいってきて良いぞ!お前なら騒がねェし」

「・・・ありがとう。行ってくるわ」


 船医さんの心遣いに感謝して、私は彼女達が寝ている部屋へと向かった。


 何事もなかったかのように眠る、航海士さんと船長さん。

 いたるところに霜焼が見える。


 まだ起きないとは思うけれど、そっと彼女へと近づいていった。

 用意された簡易ベッドの横に座り、航海士さんの頬に触れる。


 暖かかった。


「っ・・・」


 安堵して。

 凄く安堵して。

 溢れそうになる涙がこぼれないように、布団に顔を押し付けた。


「酷い人・・・っ」


 私をこんなに、惹きつけて。

 私をこんなに、心配させて。


 私なんかを、助けて・・・っ。


 なんて、酷い人・・・っ。


 安らかに眠る航海士さんの唇に、私はそっと口付けた。































 あとがき。


 ナミが青キジと戦うキッカケっぽくなっちゃいました(汗

 でも、原作読んでいてツッコミたくて。

 手配される経緯が入るのおかしくない!?と。

 というか、ぶっちゃけ”麦わら”の戦いって、軍の尻拭いじゃね?とか思うわけで。


 えっと、色々と華麗にスルーしてくれると嬉しいです。













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