【失った信頼】
刹那が泣きながら駆け寄ると同時に、粉塵が落ち着き始め。
見えたのは、血に濡れた。
血の海ともいえるほどのそこに、身体をうつ伏せに横たえた千雨の姿。
そしてその紅は、じわじわと領土を広げんとし。
「え・・・っ」
そうもらしたのは、明日菜かネギか。
「っ千雨ちゃん!!!」
「っ千雨さん!!」
顔面を蒼白にした木乃香と、ガイノイドであるのに顔色が悪く見える茶々丸が刹那に続く。
けれど木乃香は、地面に転がった血に濡れた腕を見つけ。
その引きちぎられたかのような傷口から除く、紅に染められたピンク色の肉と白いナニカを見てしまい。
知らず足を止め、木乃香は口元を押さえ胃の中のモノを吐き出した。
平穏な生活をしていた木乃香にとって、それは許容できる光景ではなく。
大概のことは笑顔でのんびりスルーする木乃香も、グロテスクなソレを見ていつもと同じ対応をとることなど不可能。
刹那とて吐いてしまいそうなのを押し込めているのだ、木乃香が受け入れられるはずがない。
「っすぐに学園長の下へ!!」
「ベストで千雨さんを隠し、連れて行きましょう!」
さすがの刹那もこの時ばかりは木乃香を宥める余裕はなく、転がった腕を拾い上げて。
茶々丸は着用していたネクタイで、にの腕の半ば辺りから無くなっている左腕を止血するため縛り。
彼女の言葉に頷き、刹那も腕と耳を自らのベストで包み。
吐くだけ吐いたのだろう、青を通り越して白くなった顔色の木乃香が自分のベストも差しだし。
そして、もう一つ差し出されたベスト。
それを持つ手は震え。
全員がその主を見れば、身体自体を振るわせている顔面蒼白の明日菜で。
ネギはいつの間にか、そこにはいなかった。
「っ今は、借りておきます・・・っ」
千雨をこんな風にした相方。
そんな相手にモノを借りるなど、刹那はしたくはない。
けれど、今は一刻の猶予もないのだ。
あきらかに致死量の血を失っている千雨を、これ以上放置しておくのもマズイ。
近右衛門のもとへ向かう前に警察なんぞに呼び止められるなど、それこそ時間の無駄だ。
刹那は唇を噛みしめ、けれど明日菜を睨みつけてベストを受け取り。
茶々丸に抱き上げられ、ぐったりとした様子の千雨を隠すためにつかった。
彼女達は駆け出し、学園へと逆戻り。
その途中で会ったのは、幸いにして警察ではなく巡回していたらしい高畑。
「っ高畑先生!!」
「・・・どうしたんだい?」
刹那達の切羽詰った様子に、高畑の表情が真剣味を帯びる。
それも、ベストで隠されていた千雨を見た瞬間強張りへと変貌。
すぐに険しい表情へと。
「保健室につれていってくれ!!僕は学園長と治癒を扱える者を呼んでくる!!!」
携帯を取り出して駆け出した高畑に言われたとおり、茶々丸は保健室へと足を進め。
それを、刹那、木乃香、明日菜も追いかける。
保健室へつくと、そこには慌しい教師や生徒が数人すでに集まっていて。
茶々丸が千雨をベッドに寝かせ、ベストをとる。
「っこれは酷い!!」
「っ腕は!?」
「ここです!!耳も一緒に!!」
「おい、わき腹の傷も酷い!人が足りないぞ!!」
千雨の状態を見て一気に騒がしくなる室内。
刹那たちは邪魔しないように部屋の端へとより。
そのすぐ後、学園長と、彼と話しをしていたらしいエヴァを連れた高畑が駆け込んできた。
「っおい茶々丸、どういうことだ!!」
ネクタイの外れた襟首をつかみ、エヴァが怒鳴る。
茶々丸はそんな彼女に、猫に餌をやっているときに襲われて、それを千雨が庇ってくれた、と説明。
そこに自分達の状況などを入れなかったのは、周りに魔法先生たちがいるから。
ではなくて、”混乱”と”恐怖”で頭がごっちゃになっている今の茶々丸には、それ以上の説明が出来なかったのだ。
一瞬、室内が静止した。
英雄の息子が、自分の生徒を殺しかけ、逃げた。
それは、魔法使い達にとって衝撃の事実であった。
それが魔法使い相手だったならばまだしも、相手は一般人だと認識している生徒。
ましてや、逃げたとなれば・・・。
「・・・なあ、アスナ」
静まり、それから無言で治癒魔法をかけ始める教師と生徒達。
そんな中響いた、木乃香の震えた声。
明日菜は肩を震わせ、俯いたまま顔をあげない。
否、あげられない。
「なんで・・・なんでこんなことしたん・・・なんでなん・・・っ」
「・・・っごめん・・・!」
「謝ってほしいわけやない!理由を聞いてるんよ!千雨ちゃんがあないならんでも、茶々丸さんがあないなってた!・・・アスナ、2年間も一緒にいたクラスメイトに何しとるん!!?」
「っ!!」
初めて向けられた、木乃香からの叱咤。
いつもニコニコしていて、初等部の頃から一緒にいたけれど、木乃香が怒ったところなんて明日菜も見たことがない。
同じように、泣いているところだって。
けれど、それは当たり前のことで。
明日菜は涙をこぼしながら唇を噛みしめることしかできなかった。
「アスナちゃん、ネギ君がどこに行ったかわかるかのう?」
明日菜はそれに首を横に振ることで答えて。
近右衛門は、そうか、と呟いた。
「なあ、おじーちゃん・・・」
「なんじゃね、木乃香」
「・・・ウチ、ネギ君ともう暮らせん」
「・・・・・・」
「アスナは・・・アスナはな、平気や。ずっと一緒におったから、なんや事情あるんやろって思う。けど・・・けど、ネギ君とは、もう、暮らせんわぁ・・・っ」
「木乃香・・・っ」
それは木乃香にとって、当然のことであった。
荒事なんて今まで関わったことのない木乃香に、今回のことはあまりにも衝撃がありすぎたのだ。
これが木乃香でなくとも、このような結末になるだろう。
誰が、自分の友達を殺しかけた相手と共に住めるだろうか。
同じ部屋で寝起きできるだろうか。
茶々丸を殺そうとしたように、寝ている間に自分を殺そうとするかもしれない。
それをありえない、で切り捨てるには、今日の出来事は木乃香にとってあまりにも悪い意味で衝撃的過ぎた。
「そうじゃな・・・」
近右衛門は事情を知っている。
まさか、ネギがこんな強行を実行するとは思ってもいなかったけれど、戦法としては間違っていないと理解している。
あくまで、魔法使いとの戦いであれば、だが。
けれど、実際にそれで傷ついたのはエヴァや茶々丸ではなく、茶々丸を庇った千雨で。
今もこうして、生死の境をさまよっている。
階段から落ちての怪我、というような単純な事故ならばまだいい。
けれど、千雨目的ではなかったとしても、教師がその力をもってして生徒を殺しかけるという事実。
いや、本当に千雨が一般人であれば、すでにショック死をしているだろう。
それは、教師として誰がどう見ても失格だ。
それこそ、弁解の余地などなく。
近右衛門は、刹那と泣きながら抱き合っている木乃香を見て。
それから、俯き唇を噛みしめ、泣いている明日菜を見て。
目をつり上げ、治癒魔法を受けている千雨を睨むように見ているエヴァを見て。
一目でわかるくらいに沈んでいる茶々丸を見て。
高畑と顔を見合わせ、ため息を吐いた。
予測していた以上の事態じゃ・・・
気づかぬうちに耄碌したかのう・・・。
近右衛門は今日だけで、10歳年をとったような気がした。
<刹那 視点>
ちーちゃんの治療は、誇張ではなく、本当に一晩中行われた。
終わったのは、朝の4時を少し過ぎた頃。
ようやく落ち着いた保健室。
私たちはやっと、ちーちゃんの顔を見ることが出来た。
けれどその身体は、今だ血濡れで。
一時期失った、温かい左手をそっと握る。
魔法先生が言うには、くっつけた部位はしばらく機能が著しく低下するだろうとのこと。
ただ幸いにも、腕のほうはリハビリをすれば以前のように動かせるらしく。
けれど、耳の方がもとの状態に戻るかどうかはわからないという。
耳が弾き飛ばされた時鼓膜の方も破れてしまい、治しはしたものの鼓膜への被害はあまりにも酷く、難聴になる可能性が高いと。
最悪、聞こえないまま、ということもありえると。
そして、腕の傷はあまりにも切り口が粗過ぎて、痕も残ってしまった。
元々ちーちゃんは、魔法は使えるけれど魔抗力が高くないとかつて聞いたことがある。
だからこそ、ちーちゃんは魔導師ではなく剣士として育てられたと。
魔法は避けることが可能だから気にならないと言っていたけれど、まさかこんなことになるなんて・・・!
ああ・・・苛々する・・・!
「桜咲刹那、その殺気をしまえ。・・・私とて、今すぐ嬲り(なぶり)殺しにしたいのだからな」
エヴァンジェリンさんの言葉に、意図せずに出てしまった殺気をあわてて抑える。
隣を見れば、顔色を悪くされたこのちゃんが。
何たる失態・・・!
「すみません。このちゃん、大丈夫ですか?」
「・・・うん、平気や」
深呼吸をして、微笑みかけてくださる。
私はそれに安堵して、怒りが外に出てしまわないようにと改めて自制。
こんなやり取りも、少し前では考えられなかったこと。
これも、強引ではあったもののちーちゃんのおかげだ。
彼女には助けられてばかりだと、昔を思い返して思う。
「あの・・・さ、エヴァちゃん。エヴァちゃんと千雨ちゃんは、どうして仲良くなったの?」
「何?」
「あ、いや、カモのやつが、2人は仲間なんじゃないかって言ってたから・・・」
伺うような、いつもの元気な神楽坂さんらしからぬ様子で。
けれど、それは仕方がないだろう。
彼女はネギ・スプリングフィールドの未熟さのせいで初日に魔法の存在を知ったが、それだけでしかない一般人だ。
ゆえに、魔法が人を殺せるほどのものだとは知らなかったし、そういう説明も受けていなかったという。
ただ【ボコる】としか聞いていないため、ちょっとした喧嘩のようにとらえていたらしい。
神楽坂さんもまさか、自分が殺人未遂の片棒を担がされるとは思ってもみなかっただろう。
ましてや、相手はちーちゃんにしろ茶々丸さんにしろ、クラスメイトであることに変わりはない。
もしあのまま死んでいたら・・・、神楽坂さんはそう呟いて先ほど泣いていた。
そのため、神楽坂さんは茶々丸さんと同様に酷く落ち込んでいる。
私やエヴァンジェリンさんは、ネギ・スプリングフィールドに対する怒り及び憎しみの方が強いけれど。
もしちーちゃんが(想像だけで体が震えてしまうけれど)死んでしまっていたら、私は今すぐにでもあいつを探し出し、殺しているだろう。
そしてそれは私だけではなく、エヴァンジェリンさん達も同じだと思う。
それにしても、あいつはもしちーちゃんが、茶々丸さんが死んだとして、そのあとも教師を続けるつもりだったのだろうか?
そんなことをさせるつもりはないが、ちーちゃんが目を覚ましたら聞いてみたい。
任された生徒を殺して、そのあとどうするつもりだったのか。
とても、興味がある。
ああ、とても・・・。
「仲間?ふん、小動物らしい短絡的な思考だな」
「違うの?」
「千雨は・・・本当に単純に、私の友人だ」
そういって、エヴァンジェリンさんは眠っているちーちゃんの髪を撫でた。
先ほどあいつを殺しにいこうとして、必死に学園長に止められていた人とは思えない。
あのとき彼女から発せられた殺気で、このちゃんや神楽坂さんのように私も気を失ってしまいそうだった。
まさしく、世界中から恐れられた【闇の福音】だった。
そのおり、学園長があいつと戦える場を設けるとエヴァンジェリンさんに約束していた。
出来れば自主性に任せたかったようだけれど、その結果が今の状況だ。
学園長もそれに責任を感じているようで、見守っていては今度こそ誰かを死なせてしまうかもしれないと、エヴァンジェリンさんにあいつを殺さないという条件で。
もともと、あいつの試練のためだったらしいのだが。
神楽坂さんがそれを聞いた時、学園長に怒鳴り。
彼女が怒鳴らなければ、私がしていただろう。
だが私としては、学園長にはもっと早く行動してほしかったと思ってしまう。
「こいつは、見た目では想像つかんだろうが和菓子、特に上生菓子を作るのが趣味でな」
「っそうなんですか!?」
「うるさいぞ、桜咲刹那」
「あ、す、すみませんっ」
私は慌てて口を押さえ。
けれど、私だけではなくこのちゃんも同様に驚いてらっしゃった。
「はじめに声をかけてきたのはこいつからだ。自分の作った和菓子を、茶道部でお茶請けとして食べてみてくれないか、とな」
そ、そうだったんですか。
確かに、ちーちゃんがエヴァンジェリンさんに声をかけたのは見ていましたけど。
まさか、そういう内容だったとは。
「あ。ということは、いつもちーちゃんがエヴァンジェリンさんに渡していた白い箱は・・・」
「ああ。千雨の作った上生菓子だ。茶道部用や新作の試食としてな」
「千雨ちゃん、そんな趣味があったんやー」
う、羨ましい・・・!
ちーちゃんの手料理なんて、私も食べたことがないのに!
「じょうなまがし?」
「簡単に言えば、上等で高価な、和生菓子の一種だ。ちなみに、和生菓子は【もちもの、蒸し物、焼きもの、流しもの、練りもの、揚げもの】のことだ。日本人なら知っていろ」
「う゛っ」
「ともかく、私は日本贔屓でな。京都やそういったところが好きで、茶道部や囲碁部に入っているんだ」
そうだったのか。
それなら、エヴァンジェリンさんが和菓子を好むのも頷ける。
ちーちゃんの腕がどれほどかは知らないが、彼女が友人と認めるほどちーちゃんを気に入っているのならよほど美味しいんだろうな。
しかし、それを以前のように作れるのだろうか・・・。
「・・・といっても、今回のことで繊細な上生菓子など作れなくなるかもしれんがな」
どうやらそれは私だけではなく、エヴァンジェリンさんも思ったようで。
神楽坂さんの表情が強張り。
茶々丸さんは俯き。
エヴァンジェリンさんからは、殺気ではないものの威圧を感じる。
やめてください、エヴァンジェリンさん。
私もつられてしまいます。
「エヴァンジェリンさん」
「む、すまん」
このちゃんの手を握り、声をかける。
すると、先ほどの私のように自制してくださった。
「そういえば桜咲刹那、龍宮真名には連絡したのか?」
「あ、そうでした」
羨ましいことに、龍宮はちーちゃんの相棒だったな。
・・・このまま連絡せずに・・・。
いやいや、そんなことをしたら朝夜関係なく背中に気をつけなければいけなくなる。
いつものゴム弾じゃなく、実弾で向かってきそうだ。
反対に私がされたら同じことをするが。
それから数十秒後。
寮の自室にいると言っていた龍宮が、凄い勢いで保健室に駆け込んできた。
電車はどうした?
走ってきたのか?
確かに、私もちーちゃんが怪我をしたなんて聞けばわき目もふらず。
それこそ羽根さえ使って、文字どおり飛んでくるが。
「千雨は!!」
その様子は、2年間一緒に住んでいた私でも初めて見る、切羽詰ったもの。
「無事だ。怪我の方は全て先生たちが治してくれた」
「・・・そうか」
一気に落ち着きを取り戻し、龍宮は足早に私たちの集まっているベッドへ。
そこにはメガネもしていない、髪も結っていない。
私の知る、知っているちーちゃんがいた。
余談だが、この姿を見た時、私以外の全員が驚いていた。
ちーちゃんは本当はとても綺麗だから、それも仕方がないけど。
「・・・相手は誰だ?」
「ネギ・スプリングフィールドです」
「・・・彼が何故」
鋭い目で、龍宮は答えた茶々丸さんを見て。
茶々丸さんは、昨日エヴァンジェリンさんに告げた内容に、自分達の事情もふまえて説明をし。
それと、ちーちゃんの腕と耳についても。
ちなみに、このちゃんにはちーちゃんを治している間に説明済みだ。
ここまで色々なことが起こって誤魔化されるほど、このちゃんは鈍くはない。
それでも、説明は軽くされた程度で、このちゃん自身の立場などといったものはされていないが。
「・・・私としては、あなたたちにも原因の一端があるように思うけれどね」
「はい、重々承知しています」
「・・・ああ、わかっている・・・。人気のないところでは魔法など使わないと楽観視していた部分も、こちらの落ち度だ」
「・・・いや、近衛さんと刹那や千雨がいたにもかかわらず魔法を使ったのは、向こうの落ち度だ。もっとも、敵に対しての一点突破は常套手段だけどね」
「え!?」
「何を驚くんだい?神楽坂さん。2人だって、それを理解していたから人気云々を言っているのさ」
淡々と。
神楽坂さんはそれに驚き、目を見開いた。
それはそうだろう、彼女は初めて自分達の行動を肯定されたのだから。
このちゃんも信じられない、といった顔で龍宮を見上げ。
だが私は、その後に続く龍宮の言葉が予想できた。
それは多分、エヴァンジェリンさん達も同じで。
「しかし、教師という役職についている時点で、その方法は間違いだ。ましてや、全然関係ない千雨に重態を負わせ、その上逃げた彼を許す気は一切ないけどね」
どこからか取り出した2丁の拳銃。
それは龍宮が接近戦で使うもので。
慣れたように弾数を確認し。
「ちょっちょっと!龍宮さんどこに行くのよ!!?」
「なに、ちょっとばかり両手足に玉を埋め込んでくるだけさ。多分死にはしないよ」
「・・・ならば、私も行こう。大丈夫ですよ、神楽坂さん。多分殺しません」
「多分!?相手は子供なのよ!?」
神楽坂さんのその言葉に、目の奥が血走った。
それは、抑えていた。
抑えられなかった怒りによるもの。
「・・・では聞きますが、子供ならば人を傷つけても罪にならないと?殺しても罪にはならないと、そうおっしゃるのですか?・・・ちーちゃんを傷つけた彼に、罪はないと。子供なのだから、許してやれと。・・・ちーちゃんの耳が、これから一生聞こえなくなるかもしれないのにですか!?」
「え、あ、そ、そういう意味じゃないけど・・・っ」
「なら、どういう意味なんです!?」
「それは・・・っ!」
確かに、子供は護るべき存在だ。
これから芽吹く命。
むしろ、神楽坂さんのように子供だからと優しくあれるのは美徳だろう。
(それでも私は、人を殺した子供にも同じことが言えるのかと、彼女に問いかけたくなるけれど)
けれどそれは、表の法則でしかない。
表の理でしかない。
そう、裏にはそんな甘いこと通用しないんだ!!
「裏にはね、裏のルールというものが存在するんだ。裏を知らない一般人の理が、まかり通る世界じゃなのさ」
「人を殺しうる力を持ったならば、子供大人など関係ない。裏のものは、それを理解していなければいけない。たとえ理解してなかったとしても、許されるものでもない。神楽坂明日菜、子供なんだから、などという言葉は、裏には通用しない免罪符なんだよ。
ただ今回のことに関しては、私のほうにも原因がある。ゆえに、千雨に友人関係の破棄を申しだされれば素直に受け入れるつもりだ。殴られることも、それ以上もな」
龍宮やちーちゃんはもともと、紛争地帯で活動していた組織に組していたと聞く。
それこそ、3,4歳の頃から人を殺す道具を手にとり、生きてきたのだと。
だからこそ、ちーちゃん達は知っている。
人を傷つけることの、人を殺すことの重さを。
そして、そういう場所で”子供”と”大人”に違いなどなく、殺されるときは当たり前のように殺されるのだということを。
それは、エヴァンジェリンさんも同じはず。
「通常の子供ならば親の責任になる。けれどね、彼は裏側の人間で、かつ自分の意思で力をもち、自分の意思でその力を行使したんだ。当然、その罪は親ではなく彼自身が負わねばいけない。それが、力を持った者の責任さ」
龍宮の言葉に、神楽坂さんは完全に沈黙した。
だがそれも仕方がない。
神楽坂さんは裏を少し知っているだけでしかないのだから。
「知っているか、神楽坂明日菜。悪の魔法使いには、魔法を知った一般人を秘匿のために殺す奴もいる」
「っ!?」
「言い換えればそれは、善悪関係なく、それほど魔法使い達が秘匿を徹底しているということだ」
「じゃあ、なんで私・・・っ」
「貴様をぼうやのパートナーにしたいからだろうな。大方、近衛木乃香もパートナー候補だったんだろう。だからぼうやを、貴様らの同室にしたんだろう。まあ、それは今回のことで無理になったようだが」
「え、ウチ・・・?」
エヴァンジェリンさんの言葉にこのちゃんは驚く。
けれど、それは私もだ。
冗談でも許されることではありませんよ?
「どういうことですか?」
「近衛木乃香の父親はぼうやの父親と仲間であり親友だった。・・・その2人の娘と息子が出会い、パートナーになったら面白いだろう?」
な!?
そんな理由で!?
「ジジイにそんなことを言われたら、詠春も反論できんだろうよ。そう、面白いを、運命、に言い換えればことさらな」
「ウチは・・・嫌やなぁ・・・」
「ああ、だから言っただろう。今回のことで無理になった、と」
「うん。ウチ、仮契約とかよくわからんけど、ネギ君とは無理やわ・・・」
その言葉に安堵する。
このちゃんがあんな奴のパートナーだなんて、神が許しても私が許さん!
「大丈夫です、このちゃん。このちゃんの従者は、私とちーちゃんが勤めます」
ちーちゃんには事後承諾になりますが、文句を言いならも優しいちーちゃんだから受け入れてくれるはず。
そんな私の額に押し当てられた銃口。
その先を睨めば、笑っていない目で微笑む龍宮。
「ちょっと!?」
「何の冗談かな、刹那。私から千雨を奪う、という宣言かい?」
「どうとでもとれば良い。だが、ちーちゃんはきっとしょうがねー、とか言いながら受け入れてくれる」
「ふふ、彼女は身内に甘いからね。・・・けれど、私としては許可できないな」
「龍宮の許可など必要ない。必要なのは、ちーちゃんの許可だけだ」
「そうだね、正論だ」
神楽坂さんに答えず、龍宮は微笑みながら、私は淡々と言葉を交わす。
お互いに睨みあいながら。
その後、さらにそこにエヴァンジェリンさんも加わり。
しかし、彼女からもたらされた情報に私は愕然としてしまう。
いや、私だけではなく、このちゃんや神楽坂さんにも衝撃を与えた。
まさか龍宮とちーちゃんが、その・・・えっと・・・そ、そういうことをすでにしていたなんて!
許せん、龍宮!!
ブラウザバックでお戻りください。
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