【教師とは】































 授業も一段落して、学校から帰る道。

 僕は一息つくために、オブジェのある段差に腰掛けた。


 修業とはまた違った疲れ。

 慣れないことに、やっぱり手間取った。

 明日の授業は、もっと頑張らないと。


 僕は名簿を取り出し。

 見つめる、一人の人。


 たぶん彼女は、マスターと同じヴァンパイアだろう。


「・・・・・・」


 何故、ここにいるのだろう。

 ヴァンパイアにとって、魔法使い達のいるここは安住の地ではないはず。

 けど、彼女から魔力はほとんどといって良いほど感じられなかった。

 いくら近衛さんの魔力が高いからといって、彼女は人間でしかない。

 なのに、あの人の魔力は彼女の半分さえなかった。


 封印、されている?


 僕は立ち上がり、パソコンのある部屋に行くことにした。

 否、行こうとして、受け持ちの生徒と記憶している人が、大量の本を持って階段を下りるのが視界に入った。


 嫌な予感がして、僕はすぐに彼女のもとへ。


「宮崎さん」

「っひゃっ!!」


 ビクッと、こっちが驚くくらいの反応を見せた彼女は。

 そのまま、足を滑らせてしまう。


 僕は慌てて倒れてくる宮崎さんへと駆け寄り。

 僕の体も傾いた。


「っく!」

「っきゃああぁぁぁ!!!」


 すぐに宮崎さんの頭を抱きしめ。

 僕たちの体は、階段を転がり落ちた。


 痛みなんて、鍛えている時に何度も味わったから今さら。

 そんなことよりも、宮崎さんが出来るだけ怪我をしないように。

 抱きしめる腕に力をこめた。


 ここで腕を緩めてしまえば、無責任な化け物たちと同じ。

 ただの、偽善者に成り下がる。

 何よりも、彼女は僕の大切な生徒だ。

 本には、教師は生徒を守る義務があると書いてあった。


 だから、必ず守る!


 ――― ズシャァ・・・っ


 地面に衝突する瞬間身体を入れ替えて。

 僕の体が下に来るように。


「っ!」


 体にかかった負荷から、歯を食いしばって耐える。


「ガキンチョ!!」


 聞こえた声に目を開ければ、神楽坂さんが駆け寄ってくるところだった。


「あんた、大丈夫なの!?」

「・・・はい。それより、宮崎さんは」


 鍛えてるから、これくらいはなんともない。

 少し痛い程度。

 それよりも、彼女の方が心配だ。


「ぅ・・・先生・・・?」

「宮崎さん、痛いところはありませんか?」

「あ・・・はい・・・」


 まだ混乱しているみたいだけど、痛いところはないみたい。

 僕はそれに安堵の息を吐いた。


「それは良かった。ですが、今度からは少量ずつ運ぶことをおすすめします。・・・でも、僕のせいでもあるんですよね。ごめんなさい」


 急に声をかけたりしたから。


 僕がそう言うと、宮崎さんは慌てたように両手を横にふった。


「あの!ネギ先生のせいじゃないです!!こうして助けてくれましたし!!」

「教師が生徒を助けるのは当たり前のことですから」


 彼女を立ち上がらせて、制服の埃を払ってやる。


「もし痛いところがあったら、言ってくださいね。僕にじゃなくてもかまいませんので」

「ほ、本当に大丈夫ですから!!それに、ネギ先生のほうが!!!」

「ハッ!そうよ、あんた額とかから血が出てるわよ!?」

「僕は本当に大丈夫ですから」


 擦り傷程度なら、気にするほどのことじゃない。


 それから申し訳なさそうな宮崎さんに、何度も大丈夫だと告げて。

 彼女は納得していない様子だったけど、用事もあるようだからと。


 残ったのは、神楽坂さんと僕の2人。


「・・・あんた、本当に大丈夫なの?」

「はい。・・・意外と優しいんですね。子供が嫌いって言っていたわりには」

「う、うるさいわね!」


 照れたようにそっぽを向く神楽坂さんに笑い。

 僕は放置してしまった荷物へと。

 何故か、神楽坂さんはそんな僕の後をついてくる。


 彼女は、どうやら不器用で、高畑さんの前では豹変するけど、優しい人みたいだ。


「本当に大丈夫ですよ?」

「そんな傷だらけで、説得力あると思ってるわけ?」

「ないですか?」

「あるか!」


 ペシッと頭を叩かれて。

 僕は、もう一度笑った。

























 あのあと、何かを思い出したように僕の手を引いて教室に舞い戻った神楽崎さん。

 教室についてみれば、どうやら僕の歓迎会をしてくれるらしい。


 僕は主賓の席に座らされて、なんだかお祭りみたいだ。


「・・・・・・・」

「ネギ君、何でそない傷だらけなん?」

「実は、さっき階段のところで転んじゃいまして」

「そうなん?なら、手当てせんと」


 近衛さんは小さな救急箱のような物を取り出すと、僕の傷を手当してくれた。


「すいません」

「ええよ。けど、ネギ君て落ち着いたイメージあったけど、意外とドジやなー」


 柔らかく笑う近衛さんに、僕も笑みを返す。


「幼馴染にも、しっかりしてるようで時々ぬけてる、って言われます」

「そうなんや」


 クスクス笑いながら手当てをしてくれる近衛さん。

 なんか、良いなこういう人。

 落ち着けるというか。


「・・・なぁにが、階段で転んだ、よ」

「嘘は言っていませんよ?」

「うっ。そりゃ、そうだけど・・・」

「?うっかり転んだわけやないん?」


「あの、ネギ先生」


 近衛さんに神楽坂さんが答えようとしたところで。

 宮崎さんが声をかけてきた。


「どうしました?あ、痛むところがあったとか」

「ち、違います!あの・・・・・・さっきはその・・・、危ないところを助けていただいて、その・・・」

「気にしないでください。僕が原因のようなところもありますし。それに言ったでしょう?教師は生徒を助けるものです」

「あ、あの、本当に気にしないでください!そ、それで、その・・・これはお礼です・・・図書券・・・っ」


 みんながなにやら騒ぐ中、少し考える。


 こういうのは、たぶんいけないことで。

 けど、宮崎さんと接してみた感じ、彼女は控えめな人なのだろう。

 その彼女が、みんなの前でこういう行動に出るのは、きっと凄い勇気が必要だったはず。


「・・・ありがとうございます。大切に使わせてもらいますね」

「は、はい!」


 目元が見えないけど口元が笑みを浮かべているから、笑っているはず。

 僕もそれに微笑み返して、図書兼を受け取った。


「なるほど、そういうことなんやなー」

「嘘は言っていません」

「そーやなー。けど、ちゃんと教えてほしかったえ?これから一緒に住むんやし」

「え?」

「なによ、”え?”って」


 不満なの?と神楽坂さんに睨まれて、僕は首を横にふる。


「良いんですか?朝はあんなに嫌がっていたのに」

「・・・しょうがないでしょ。学園長先生に言われちゃったし」


「(照れとるんよ)」


 こっそりと教えてくれた近衛さんと、僕は顔を見合わせて笑った。


 そのあと、雪広さんから銅像を受け取ったりして。


「・・・あはは・・・」


 雪広さんの御好意なんだろうけど・・・。


「どうしよう・・・」


 どこに置くべき?


「あはは、いいんちょおもしろいやろ?」

「・・・優しい方ではあると思います」


 けど、いつの間に作ったんだろう?

 本当に。















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