【警護仲間】































<のどか 視点>


 私は、宮崎のどかといいます。

 小さい頃から自分の意見をハッキリ言えなくて、人の陰に隠れて。

 そんな自分が嫌いで。

 それと同時に、人というものが大の苦手でした。


 そんなつまらない私と友達になってくれたのが、ゆえとパルです。


 パルは一言でいうと、欲望のままに生きる人、かな。

 漫画研究会にも所属してるパルは、同人誌っていうのを作ってる。

 私やゆえもたまに手伝わされちゃったりもして。

 あと、好奇心が凄く旺盛です。


 ゆえは凄いしっかりしてて、私たちのまとめ役みたいな感じ。

 勉強はできないって言ってるけど、本当は頭も良くて。

 それにあまり知られていないけど、私は知ってるんだ。

 ゆえが、すごく運動神経がいいこと。


 ゆえは、私の憧れの人。


 初めは、凄いなって、あんなふうに物事をハッキリ言える人になりたいなって、そう思うだけだった。

 あんなふうに、強い力の宿った瞳ができるような人になりたいなって。

 初めてその瞳を見たときから、そう思っていました。


 けど、最近気づいたの。

 私は、ゆえに憧れてたわけじゃないんだって。

 私はゆえに、一目惚れをしてたんだって。


 それに気がついたのは、ゆえとマクダウェルさんが一緒にいるのを見るようになってから。

 今まで誰に対しても冷たかったマクダウェルさんが、ゆえと笑って話しているのを見た時から。


 胸が苦しくて、2人を見ていたくないのに目がそらせなくて。

 こっちを見てって、その度に思うから。

 私に笑いかけてって、その度に思うから。


 2人の間には、私なんかじゃ入り込めないナニカがあるような気がして。


 初めて人を好きになったからわからないけど、恋ってこんなドロドロした感情が湧き上がるものなんだね。

 もっと、綺麗なものだと思ってた。

 小説にあるような、甘酸っぱい、ドキドキとワクワクばかりだと思ってた。


 勇気を出してゆえにマクダウェルさんをどう思ってるのか聞いたけど、私の求めてた答えじゃなかった。

 ううん、本当にゆえは、マクダウェルさんのこと友達として好きなんだろうなって、そう思う。


 女の子同士?

 うん、そうだよね。

 私も、そう思った。

 けど、私はゆえのこと諦められないから。


「のどか?」

「へっ?」

「ジッと見てきて、どうしたですか?」


 ひやぁ!

 私、いつの間にかゆえのことジッと見てたみたいですう!(汗


「な、なんでもないよっ///」

「それなら良いのですが・・・。パル、のどかに無理に手伝わせていませんよね?」

「さすがの私もそこまではしてないって」


 じーっとパルを見つめるゆえ。

 そんなゆえから、パルは冷や汗を流して視線を逸らしてる。

 けど、本当に無理矢理手伝わされたりなんてしてないよっ?


「パル、視線が泳いでいるのは何故ですか?私の目をちゃんと見て、否定してください」

「いっ、いいじゃん別に!今は遊ぶことを楽しもうよ!!」


 逃げるように歩き出したパルに、ゆえは大きなため息をついて。

 私はそんな2人に笑ってしまう。


「行きましょう」


 けど、ゆえに手をとられて。

 一気に、顔が熱くなった。


「・・・なんか、強烈なラブ臭がする」

「アホですか」


 //////!

 パルにバレちゃうっ///

 でも、この手は離したくなくて///


 そのまま3人で歩いていたら、前方で男の人たちに囲まれてる女の子がいた。

 その子は同じクラスの大河内さん。


「・・・2人とも、ここにいるです」

「え?ゆえ!?」

「ちょっと!危ないってば!」


 私もパルも止めるけど、ゆえはスタスタ歩き出しちゃって。

 パルと2人で慌ててどうしようって思ってたら、ゆえはスカートを少しだけめくった。

 驚く私たちに目もくれず、ゆえはスカートに隠れたそこからベルトで固定されていた3つの短い棒を外しとって。

 何するんだろうって思ってる間に、ゆえはそれを慣れたように一瞬で一本の棒にしちゃって。


 それを手にもちながら、ゆえは怯えることなく大河内さんの前に立った。

 何か話してるみたい。


「「あ!!」」


 でも、男の人達がゆえに殴りかかって。

 私達は、咄嗟に声をあげた。


 けど・・・。


「・・・夕映って、あんなに強かったんだ・・・」


 パルの呟きは、私の思いでもあった。


 1分もしないうちに、立ってる男の人はいなくなっていて。

 棒を太もものベルトに戻すゆえだけがいた。

 それからゆえは唖然とした様子の大河内さんの手をひいて、私たちのほうへ。


 それだけで胸が痛む自分に、ちょっと呆れちゃった。


「のどか、パル、お待たせしました」


 ゆえは何事もなかったかのように声をかけてくる。

 私はそれにハッとして、慌ててゆえに怪我がないか調べた。


「大丈夫!?ゆえ、怪我してない!?」

「平気です、のどか」

「・・・良かったあ・・・」


 ホッと安堵の息を吐いて。

 そうしてる間に、パルはゆえの背中を笑って叩いてる。

 大河内さんはそんなゆえに頭を下げていて。


「まさか夕映がこんな強いなんて思わなかったな〜」

「言っていませんでしたか?私は小さい頃から、中国拳法を習っていたんです」


 あ、そうだったんだ。

 けど、あのときのゆえカッコよかったなあ・・・///


 その後は、大河内さんも一緒に街をまわりました。

 今日は、ゆえの新たな一面を知ることができて良かったです。


























<夕映 視点>


 今日から、警護員として働きます。

 希望はエヴァンジェリンさんたちと一緒になのですが、実力を測りたい、ということで今日は他の人と組むこととなりました。

 その相手が誰なのかは一切聞いていません。

 ドキドキです。


 服を修行用のものに着替え、待ち合わせで待つこと数分、どうやらやってきたようです。


「お待たせしました」

「遅れたね」


 どことなく聞き覚えのある声です。

 振り返ってみると、そこにはクラスメイトがいました。


「おや、桜咲さんに龍宮さん?」

「あなたは綾瀬さん!?何故ここに!!」

「ほぉ、新人警備員っていうのは君だったのか。驚いたよ」


 いつもクールな桜咲さんが大慌てです。

 あの龍宮さんも目を見張ってるです。

 私はお2人がきたことには驚きましたが、龍宮さんも桜咲さんも裏であるとは知っているのでそこに対する驚きはありませんでした。

 ですが、まさかお2人が来るとは・・・。


「・・・予想外です」

「それはこちらも同じだ。まさか、本ばかり読んでいるあなたが中国拳法の使い手だったとはね」

「その説明だけだったですか?」

「は、はい。だから私たちは、古菲だろうと検討をつけていたんです」

「それはそれは。紛らわしいことを」

「あ、頭を上げてください!綾瀬さんが悪いわけではないのですから!!」


 頭を下げると、桜咲さんはあたふたと。


 意外と彼女は、可愛い性格なのかもしれません。

 もっと、クールで冷たい方だと思っていました。


「わかりました。ところで、これからどうすれば良いのでしょうか、先輩方」

「ふふ、先輩か。なんだか良いね。とりあえず、侵入者が現れるまで歩き回るんだ」

「了解です」

「あの、綾瀬さん。初めて警護ですから、あまり無理はなさらないようにしてください」


 む、やはり意外です。

 いつもどこか距離を置いてみんなと接していたので、そう言ってくれるとは。

 意外と慌てん坊でお優しい方なのですね。

 それに気づかないとは不覚。


 私は桜咲さんに頷いて。

 2人の一歩後ろを歩いて、彼女達についていきました。


「それにしても、本当に驚きました」

「ああ。綾瀬さんは、体育でも率先して動く姿なんて見たことないしね。騙されてしまったよ」

「騙した覚えはないのですが」

「ええ、私たちもそれはわかっているのですが。・・・そういえば、綾瀬さんはマクダウェルさんと仲良かったですね。それも、何か理由が?」


 振り返り、問いかけてきた桜咲さん。

 龍宮さんも、横目で私を振り返りました。

 私はそれに頷き。


「はい。エヴァンジェリンさんには、魔法及び体術の師匠としてお世話になってるです。もっとも、仲が良いのは友達だからですが」

「だが、彼女は真祖の吸血鬼だろう?」


 今度は龍宮さんが。

 私はそれにムッとしてしまいます。


「吸血鬼と友達になってはいけませんか?」

「いや、そういう意味じゃないさ」


 ならばどういう意味なのかと聞きたいのです。


 龍宮さんを思わず睨むように見上げてしまいます。

 そんな私に龍宮さんは苦笑を浮かべて肩をすくめ。

 その隣の桜咲さんは、目を見開いて私を見ています。


「ただ、綾瀬さんのような魔法使いは珍しい」

「そうですね。”正義”の名のもとに大量虐殺をしてもそれは”正義のためだから仕方がない”、とあまりにもイタイ納得の仕方をする魔法使いとは違いますから」


 そう告げると、お2人は驚愕したかのように大きく目を見開いて私を凝視してきました。

 私はそんな彼女達を見ずに、辺りを観察します。


「元々私は魔法を知らない一般人ですから、普通の魔法使いとは根本的な考えが違うです」

「・・・なるほど。それなら納得だ」

「ですが、自分とは違うモノを恐ろしいとは思いませんか?元一般人ならばなおさら、化生が恐ろしいとは思わないんですか?」

「そうですね。私もさすがにゴキブリのような外見を持ったヒトとは友達になれないです」


 うんうん、と頷く私。

 自分で言っていて、鳥肌が立ってしまいました。

 そういうヒトは今のところ発見されていないと聞いたので、安心ですが。


「そうではなくて―――!」

「気が合えば、それで良いと思います」

「え・・・?」

「人狼だろうが吸血鬼だろうが、悪魔だろうが、話していて楽しいと思えるヒトであれば、私は友達になりたいと思っています」


 元々、友達だなんて一切できない何もない部屋で一生を終えた私です。

 ですから、友達に対する欲求は並々ならないものがあるです。

 そういう部分は、普通の人とはかなり違うと自身でも自覚してるですよ。


「私にとって、角が生えていようが体長が2メートルを超えていようが、毛むくじゃらだろうが羽が生えていようが、一緒にいて楽しい相手ならば問題はありません」

「っ!!?」

「ほぉ、それはまた珍しい意見だね」

「それは自覚してるです」


 いつまでも立ち止まっているわけにはいきません。

 ですので、お2人の背中を押して歩くように促しました。


「ああ、すまない」


 龍宮さんは素直に歩き出してくれましたが、桜咲さんが自分で歩こうとしてくれません。

 押すのを止めると、すぐに立ち止まってしまいます。

 何故でしょう?


「・・・綾瀬さん」

「なんでしょう」

「刹那?まさか・・・」


 ?

 首をかしげて桜咲さんを見ると、唐突に彼女の背中から白い何かが・・・。


 えうっ!?

 翼が生えたですよ!!?


「刹那!!」

「・・・これを見ても、あなたは先ほどと同じことがいえ―――ってなにしてるんですか!?」


 おお!

 まごうことなく翼です!

 この手触りは本物なのですよ!(テンション↑)


「わかりました!あなたは―――!」


 ピッと、思わずノリにのって桜咲さんを指差ししちゃいます。

 気分は名探偵です。


「っそうです、私は・・・」

「天使ですね!!」

「ええ、私は・・・。って違います!!」

「隠さなくても良いのです!それほどの綺麗な翼、天使でなくてなんだと言うですか!」

「き、綺麗・・・?」


 はい!と思わず強く頷いてしまいました。

 ですが、この推理には自信アリですよ。


「・・・くっ・・・くくくっ・・・あはははははっ!」


 急に笑い出した龍宮さんに驚いて、そちらに顔を向けました。

 ありえない、と思ってしまうくらいに爆笑です。

 あのクールな龍宮さんが、身体を”く”の字に曲げて大爆笑です。

 ニセモノ・・・?


 まあ、それはともかく、私が笑われているようで若干ムッとしてします。


「綺麗だとさ、刹那!」

「いえいえいえ!良いですか綾瀬さん!私は烏族とのハーフで、これは私が化け物である証拠なんです!!」

「ふむ、言っている意味がわかりません」

「ぷっ!」


 だから何故吹き出すですか、龍宮さん。

 何も面白いことなど言ってないです。


「だから!おかしいでしょう!?こんな醜い羽を持っているだなんて!」

「桜咲さん、その物言いは認められません。その翼を醜いだなんて、眼科に行くことをおすすめします」

「くくくっ。・・・だそうだが?」

「・・・この羽を、あなたは綺麗だと?」

「綺麗に見えない人の感性を、私はまず疑います。ゆえに、あなたの感性はおかしいです」


 む、何故そんな壮大なため息をつくですか?

 呆れたように人のことを見るのは止めてほしいです。


「綾瀬さんは、変な人ですね」

「桜咲さんに言われるのは、とても納得できません」


 そして龍宮さん、いつまで笑ってるですか。


「あなたは、変な人です。・・・マクダウェルさんの気持ちが、なんとなくわかった気がしますよ」


 そういって桜咲さんが笑いました。

 初めて桜咲さんの笑顔を見ましたね。

 彼女もまたエヴァンジェリンさんと似たような諦めを、瞳の奥に宿していましたから。


 それにしても、エヴァンジェリンさんの気持ちがわかる、とはどういう意味でしょう??


「本当に、予想外だ」

「?なんですか、急に」

「ああ、綾瀬さん、あなたは本当に予想外だと、そう思ったのさ」


 龍宮さんの言っている意味がわからないのですが。

 同意するように頷くのはやめてください、桜咲さん。

 こちらこそ、あなたの感性は予想外です。


 そのあと、現れた侵入者はそれほど強くなく、あっさりと倒すことができました。

 が、桜咲さんが戦っている最中も笑顔でした。

 侵入者よりもあなたが怖いのですよ、桜咲さん・・・。


 そして、次の警備の人達と交代して寮へと帰る途中。


「そうです、綾瀬さん。この羽のことは、誰にも言わないでくださいね」

「わかっています。桜咲さんのように、歪んだ感性の方もいらっしゃいますしね」

「綾瀬さん、酷いです・・・」


 ずーん、と落ち込む桜咲さんですが、あの綺麗な翼を醜い、という時点でおかしいです。

 もっとも、ハーフである自分が嫌で、翼さえも醜く感じてしまう、というのはわかります。

 私もそこまでアホではありませんから。


「くくくっ・・・。まあ、これからもよろしく頼むよ。何の変哲もない仕事も、あなたと一緒ならば楽しそうだ。だろう?刹那」

「ノーコメント・・・」

「はははは!」


 笑うのは良いですが、今は夜中です、龍宮さん。

 もうちょっとボリュームを抑えるべきだと思うです。


「まあ、そういうわけで、これはもらっておきます」

「え?・・・それは、私の羽・・・?」

「そうです。綺麗ですから、拾っておきました」

「あなたは・・・」


 顔を片手で覆ってため息をつく桜咲さんですが、やはり失礼です。

 ですが、手の隙間から桜咲さんの口元が笑っているのが見えるです。

 体現しているほど、呆れているわけではなさそうですが。


 3人で寮へと入り、6階へと上っていきます。


「では、また教室で」

「ああ。おやすみ、”夕映”」


 龍宮さんを見上げ。

 そんな私を、彼女はニヤリ笑いで見下ろしています。

 私は、それに自然と笑みを浮かべていました。


「はい、おやすみなさい。真名さん、刹那さん」

「・・・おやすみ、夕映さん」


 恥ずかしそうに目を逸らした刹那さんに笑みが深まります。


「では。・・・それと、呼び捨てでもかまいませんよ、刹那さん」

「・・・わかった」


 頬が赤いですよ、刹那さん。


 お2人とわかれて、のどかとハルナを起こさないように服を脱ぎ、ベッドにもぐりこみました。

 シャワーを浴びたいですが、のどかたちが起きる可能性もあるですから諦めます。

 朝にでも浴びるとするです。


 初めての警護で疲れましたが、お友達が2人できました。






















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