【外見なんて】
































 04’ 3月20日。

 足の裏が擦り切れて、血が出ても走り回ったけど、誰一人として助けてはくれなくて・・・・。


 泣きながら家に戻った私が見たのは、母を抱えた1人の人。


「・・・・・・・誰・・・?」

「おや、この方の娘さんですか?」


 振り返ったその人は、真っ黒い仮面。

 真っ黒なローブ。

 真っ黒な帽子。

 真っ黒な服。

 真っ黒な手袋。


 すべて、全てが真っ黒で、でも、声はとても綺麗な、ハスキーボイスだった。



「リオ!」

「ママ!」


 慌てて駆け寄る。

 ママに、怪我は一つもなかった。


「こちらの方が、助けてくださったのよ」

「あなたが・・・?」


 驚いて見上げると、その人は頷く。


「ただならぬ気配を感じたので。ですが、すみません。玄関のドアを壊してしまいました」


 その言葉に玄関を見ると、上の止め具だけで何とか支えられている、ブランとしたドア。

 それが、この人がどれだけ焦っていたのかを、表している気がした。


「いえ、ドアなんて良いんです。・・・・ママを助けてくれて、ありがとうございましたっ」


 ママと一緒になってその人に頭を下げると、その人の手が頭に。

 ゆっくりと動く手。


 ママとはまた違ったその優しい手に、止まっていた涙が溢れだしてしまう。


「おや、足が。まずは、その足を治療しましょうか」


 差し出された手。

 私は、何かを理解するよりも前に、その手を握り締めていた。


 その人はママを軽々と抱き上げ、私が案内したベッドに寝かせ、その横に椅子を移動させた。


「座って、こちらに足を出してくださいますか?」


 言われたとおりに足を差し出すと、その人は鞄を開く。

 その中には、私の知っている薬品、知らない、けれど薬品であろうものが、たくさん詰まっていた。


「お医者さんなのかい?」

「一応、医者です。大したことはできませんけれど」


 ママに、その人は笑いを含めて答え、私の足に液体をかけた。


「っ!!?」


 形容しがたい痛み。

 聞こえる、シューシュー、という音。


「痛いでしょうが、我慢してくださいね。今、雑菌を除去していますから」

「っはい・・・っ」


 反対の足にもそれをかけられ、そっちの足も激痛が走る。


「これからは、してはいけませんよ?素足で路上を走るなど」

「っすみません、急いでいたので・・・っ」

「あなたのお気持ちはわかりますが。・・・・さて、消毒はこれで良いでしょう」


 そう言って、その人は足の裏にガーゼを張り、慣れたように包帯を巻いく。


「ありがとうございます」

「いえいえ。これくらい、誰でもできることですよ」


 仮面のせいで見えないけれど、たぶんこの人は今、微笑んでいる。


「あの、お名前をお聞きしてもよろしいですか?」

「ああ、そういえば、名乗っていませんでしたね。私の名前は と申します」

「私は黒鳥理緒と言います」

「ではリオさん、なるべく歩かないようにしてくださいね?」


 その人は鞄に薬品をしまって閉めると、立ち上がった。


「あ!待ってください!」

「何か?」

「泊まっていったらどうだい?お礼もしたいし。それとも、もう宿屋はとってしまったのかい?」

「いえ、宿屋にはこれから行くつもりですが・・・・」

「でしたら、泊まっていってください!」


 私とママとで頼み込むと、その人は少し困ったように仮面を撫でた。


「・・・・では、お言葉に甘えさせていただきます」


 その言葉に安心して、私とママは笑いあった。







































「先生!」

「・・・・またですか」


 先生の部屋に飛び込むと、先生は帽子のつばをおさえてため息をはいた。


 あれから半年、先生はいまだに我が家にいる。

 私たちが、引きとめたから。

 今は、ママの治療をしてくれる、専属医になってくれている。


 先生は本当に素晴らしい先生で、ママの病気は日に日に治ってきている。

 けど、そのせいでママは動きたがって、先生の薬の副作用(というべきなのか)が発動してしまう。


 先生の薬は本当に特異で、言うことを聞かないと、先生曰く、「大変なこと」になる。

 初めてのときなんて、動き回らないように、という言葉をママが無視して動き回った時は、マッチョになった。

 ・・・・あれは、本当に”大変なこと”だと思う。


「まったく。黒鳥さんは」


 読んでいた本を閉じて、先生は棚から薬を取り出すと、部屋を出て行った。

 私もその後を追う。


 リビングには、足が異様に膨れたママがいて、そんな自分の足を見てコロコロ笑っている。


「黒鳥さん、少しは自粛してください。治ってはいますが、あなたの場合副作用を面白がる特質がある」


 そうなのだ。

 ママはどうやら、バリエーションが豊富な副作用を、楽しんでいる。


「言うことを聞かない患者を戒めるための副作用を、楽しんでどうするんです」

「でも、先生のお薬、面白いんだもの」


 何度も言われなれた言葉だからか、ママは笑いながら返した。

 それに、私と先生はそろってため息。


「あなたの性格は、どんな薬を用いようとも治りようがありませんね」

「それはそうよ。性分だもの」

「・・・・リオ、あなただけは私の言うこと、聞いてくださいね?」

「もちろんです」


 若干疲れたような先生に、私は強く頷いた。

 すると、先生の周りが明るくなる。


「それを聞き、安心しました」


 ホッとしたような先生は、そう言ってママに副作用を消す薬と水を。

 ママは相変わらず楽しそうに笑いながら、それを口に入れる。


 私にはいまだ、先生の性別さえもわからない。

 顔だって見たことがないし、ローブだって着たまま。

 それでも一緒にいる時間が長い分、先生の放つ雰囲気はわかるようになった。


 ・・・・言ってしまうと、私は先生に恋をしていた。

 ママを助けてくれて、私の怪我を治してくれて、今もママの病気を治すために夜遅くまで起きて薬の調合をしている。


 気がついたら、先生を目で追っている自分がいて。

 一緒にいたいと、思う。


 先生の好きなところをあげれば、きりがない。

 柔らかな物腰が好き。

 私が魔具を制作している時は家事一切をやってくれる、その優しいところも好き。

 頭を撫でてくれる手が好き。

 実は甘いものが好きで、コーヒーを飲むと気持ち悪くなるという変わったところも、好き。

 学校から帰ってきた私を、出迎えてくれるところも好き。


 性別がわからないのに、変だと自分でも思う。

 いい歳しながら、そんな乙女な自分を変だと思う。


 それでも、先生が男性でも女性でも、たぶんこの気持ちは変わらないと思う。

 それは、断言しても良い。


 あなたが好きです、先生。










































 先生の素顔を初めて見た。

 それは、先生がやってきて1年を少し過ぎた頃。


 ムヒョや弟子のビコたちと、先生も同伴して魔監獄に行った。


「リオ!ビコ君!」


 私とビコを、ソフィーから庇った時だった。

 ソフィーの念動力で、先生の仮面が割れてしまったのだ。


「「「っ!!??」」」


 私たち、そしてソフィーもそろって、あらわれた素顔に目を見開いた。

 その素顔は、あまりにも綺麗だったから。


【・・・・綺麗な顔・・・羨ましいわ・・・!!】

「・・・・・愚かな」

先生!!危険です!!」

「先生!!」


 凄い速さで先生に向かうソフィーに、先生は恐れることなく、いつも着ていたローブを投げた。


【きゃっ!!】


 私達は、またしても息をのんだ。

 ローブに隠れた服から見える素肌には、何かの文字と思しき模様が所狭しと彫られていたから。


「リオと、そしてその弟子、ビコ君を怪我させたこと。後悔させてあげましょう」


 その後は、一瞬だった。

 何をしたのかというと、ただ先生は空中に何かの模様を書いただけ。

 それだけでソフィーは鎖に縛られ、燃えた。

 大きな叫び声をあげながら。


 後からやってきたムヒョたちが驚くくらい、あっさりと。


「魔法律とは違う、霊の処し方・・・。お前、まさか【幻の処罰師】・・・・!?」

「・・・・ムヒョ、何、それ・・・?」


 ロージー君はわからないようだったけれど、私たちは知っていた。

 神出鬼没の、魔法律を使わない執行人。

 協会でさえその人物の居場所を把握できず、その特異な力は無限ともいわれている、事実上、最強の執行人。


先生が・・・・?」

「懐かしい名前ですね。ですが今は、黒鳥さん専属の医師ですよ」


 微笑むその瞳は煌いていて、とても綺麗だった。


「さあ、帰りましょう、リオ。黒鳥さんが、待っていますよ、きっと。・・・・首を長くして」

「・・・・・・・はい、先生」


 そう言って苦笑をこぼす先生の、差し出す手。

 私はやはり、迷うことなくその手をとった。


 たぶん、今の言葉は比喩ではないのだろう。

 ああ、今度は首が長くなるのか。

 ・・・わかっていても、怖くなってくるわ。


 あなたは凄い人で。

 本当ならば、私には手の届かない人で。

 本当ならば、共になんていられない人で。


 けれど、事実として、私の隣にいてくれる。

 私の手を、握ってくれている。


 今よりも、もっと魔具師として力をつけたら。

 その時は、あなたに想いを伝えることにします。


「黒鳥さん、私たちがいない間くらい、大人しくしていてくださいよ」

「でもね、先生。とっても遠くまで見渡せるの」

「ママ・・・・」

「それより、先生って女性だったのね」

「気づきませんでしたか?」

「ええ。なら、リオと結婚することは無理かしら?」

「ママ!!?」


 慌ててママの口をおさえようとして、全然背が届かないことに気づく。

 けど、もう丈夫になったママを叩くことで、意思表示。

 返っていたのは、楽しそうな笑い声。


「おや?私は、今すぐにでもリオと結婚できますが?」

先生!!?」

「おやまあ。なら、両想いかね?」

「ママ!!!」


 その一ヵ月後、私は先生のパートナーとなった。

 しばらく伝えられない、と思っていた想いは、私の予想を超えて成就した。


「あなた達ぐらいなんですよ、私のこの姿を気にせず、共にいてくださったのは」









 あとがき。


 もはや、原作なんて無視です。

 だって、リオ可哀想なんですもん!!

 というか、これはかなり自己満作品なので、読んでわかると思いますが激しく駄文です。

 載せるかどうか悩むくらい、ヤバイ作品です。


 ボツなので、基本的に苦情は受け付けません(汗

 というか、本当にすみません!!(激汗










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