【心はきっと、伝わった】
<フェイト 視点>
「・・・怒らせちゃったね・・・」
あの子を怒らせた。
まさか、怒られるとは思わなくて。
まさか、あんなこと言われるとは思わなくて。
まさか、あんなに泣きそうな。
悲しそうな顔をするなんて、思わなかった。
「・・・・・・」
アルフは答えない。
ただ、あの子が出て行ったドアを見つめてるだけ。
それに、私も何も言えずに見つめた。
「・・・これ、どうする?」
沈黙を破って、アルフは紙袋を差し出す。
先ほどみたそれは、良い匂いを漂わせた。
美味しそうな、食べ物の入った入れ物が入ってる。
「うん・・・」
捨てる、何てこと絶対にできない。
でも、怒らせちゃった相手が作ってくれたものを食べるのも、なんだかしちゃいけないような気がして・・・。
「・・・怒らせちゃったね・・・」
結局、そう返した。
結局、それが気になってしまう。
お母さんに怒られるのとは違う。
変だ、私。
だって、怒らせたのに。
怒らせちゃったのに。
胸が、凄く暖かいんだ。
お母さんに怒られた時は、胸が苦しくなるのに。
頑張らないとって、思うのに。
何で、こんなに嬉しいんだろう・・・。
「・・・変な人・・・」
「・・・そうだね・・・」
あの子の友達を、悪く言っちゃったから。
だから、怒ったんだよね。
それも、あると思う。
でも。
でも、それだけじゃない。
それだけで、あんなに怒ったわけじゃないんだ。
≪心を近づけたいからだって、思ってくれない!?≫
≪ちゃんと食べてるか、心配しちゃ駄目か!?君達が傷ついていないか、不安に思っちゃ駄目か!?倒れてないか、危惧しちゃダメか!?≫
心配してくれた。
私たちのこと。
私のこと。
「変だよ、アルフ・・・」
「フェイト?」
「胸が、暖かいんだ・・・」
「・・・そうかい」
「凄く、嬉しいんだ・・・」
「・・・ああ」
「怒られたのに・・・」
「・・・・」
「変だよ、私・・・」
「ああ・・・あたしもだよ・・・」
アルフも、一緒なんだ。
それに、ちょっと安心した。
でも、何でこんなに。
こんなに、嬉しいんだろ。
何でこんなに。
心が、暖かくて、熱くて。
何でこんなに。
泣きたくなるんだろう・・・。
お母さんの願いを叶えられなくて。
全然ダメな自分に、泣きたくなることあったのに。
たくさん、あったのに。
こんな風に、幸せなのに。
すっごく嬉しいのに。
泣きたくなったことなんて、なかった。
「これ・・・食べようよ、フェイト」
「・・・良いの、かな・・・?」
変な薬、入ってるかもなんて言っちゃった私が・・・。
「わざわざ作ってくれたもの、食べなかったもっと怒られるよ?」
それは嫌だな、と思う。
怒られて嬉しかったけど。
でも、あの子にはいつもの無表情で。
けど、暖かいあの表情を浮かべていてほしいから。
こんなこと思う私、変だ。
「うん・・・」
椅子に座って。
アルフと、一緒に食べた。
暖かい、あの子が作ってくれた料理。
もっと、泣きそうになったのは何でかな?
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