「・・・うん、やっぱり作ろ」
わたしは決意して、1階に降りていった。
そこでキッチンに立って、冷蔵庫にある食材で、あの子が好みそうな料理をチョイス。
「あれ?巳星、なに作ってるんだい?まだ、晩御飯には早いよ?」
「ちょっと、欠乏症の知り合いに、料理を持っていこうと思って」
「そっか。美味しいの作ってあげるんだよ?」
「そのつもり」
わかる人はわかる。
あの、フェイト・テスタロッサのこと。
絶対、食べてないだろうし。
アニメでも、ほとんど食べてなかったみたいだしね。
それでなくとも痩せてるのに、あれ以上痩せるのは女の子としてマズイと思うわけで。
なのはと戦ってるうちに、いつか倒れると思う。
以前、シー○の如く降ってきたみたいに。
【プロテクト解除】
「はい?」
急に脳に響いたインテリの声に驚く。
どうやら、プロテクトの2つ目が解除されたらしい。
何でだ?
【歳を経て得た物はあったのか・・・】
「あ、あんた!?」
「あ、やっべ!」
「逃げるんじゃないよ!!」
駆け出すけど、さすが野生の狼。
今は、ドックフードが主食の、え?犬?、と思ってしまうような狼とは思えない!
即効掴まって、すっげー睨まれてます。
「あんた、何のようなんだい!・・・ん?」
くんくん、と鼻を動かして、わたしが持っている紙袋の匂いをかいでいる。
やっぱり犬ーーー!!
「ちょっと貸しな!」
紙袋を奪い取られ。
アルフは、慌てたように紙袋からあるものを取り出した。
「これ・・・!?」
驚いたようにわたしを見るアルフ。
わたしは、目を逸らしながら頬をかいて。
「いや〜、ご飯を作りすぎちゃって。ちょうど良いから、このあたりに捨てようかな、なんて」
「あんた・・・」
アルフが持っているのは、5つほどはいっているうちの1つ。
肉じゃがとかをつめた、フードパック。
「じゃ、じゃあ、そういうことで」
「っ待ちな!」
腕をつかまれ、逃亡失敗!
「なに?」
できれば、素直に返してほしいんですけど!
余計なこと、とは思わないけど、お節介かすら!?
「・・・入っていきなよ」
「え?」
「・・・っ入れ!///」
強制!?
ドアを開けられて、背中から押される。
思いのほか強い力だったそれに抵抗できず、結局入室。
子供には優しく!
フェイトさん、それくらい教えておいて!
フェイト自身、知らなさそうだけど!
「アルフ?・・・え・・・っ」
不思議そうに玄関までやってきたフェイト嬢は、わたしを見て動きを止めて目を見開いた。
「どうも〜・・・」
とりあえず手を振り返す。
「・・・・・・・」
気まずいわ!
アホアルフめ!
「・・・アルフ、どういうこと?」
険しい顔のフェイト嬢。
その表情で、アルフを見つめている。
アルフはそれを気にした様子もなく、紙袋を持ったままズカズカと。
いや、まあ、実際に自分の家だしね?
でも、わたしの背中まで押さないでください!
「こいつが持ってきたもの」
「?・・・これ・・・!」
あぁ〜・・・。
何この羞恥心・・・。
悪かったね、余計なことしちゃって!
「・・・なんで?」
「はい?」
「なんで、食べ物なんか持ってきたの?」
「いや〜、それは・・・」
なんて気まずいんでしょう!
あれだね!
わたしは、紫の薔薇の人とかにはなれないタイプだね!
なれなくても、何も支障はないけどさ!
負け惜しみじゃないぞチクショーー!!
「同情?」
「・・・は?」
「私が可哀想だから?可哀想な子に、こうやって恵んであげてるつもり?私たちを、下に見て」
「っ!?あんた、そのつもりで!?」
「それとも、あの子に頼まれたの?私たちを内側から壊したいから、って」
・・・・・・・・・・。
・・・なに、それ。
・・・なに、それ?
・・・なんだよ・・・それ・・・っ!
今は、アルフの殺気も気にならない。
もとより、野生の動物の殺気は慣れてる。
そんなことより・・・。
「優しい振りして、騙そうとしてるんだ。私たちを、そうやって蹴落として、ジュエルシードを手に入れようとしてるんだ」
「これにだって、変な薬が入ってるかも―――」
――― ガン!!
「「っ!!?」」
わたしは、不快な彼女の言葉を、壁を殴ることで黙らせた。
ああ、わかってるさ。
フェイトが、本心じゃないってことくらい。
傷つくのが怖いから、そうやって傷つくかもしれないことを要素を排除してるだけだってことは。
「・・・わたしのことを悪く言うのはかまわない。けど、純粋で綺麗なあの子を貶すのは、許さない・・・」
ああ、きっと今のわたしは、凄い怖い顔をしているに違いない。
もしくは、殺気が出てるとか。
でなければ、フェイトもアルフも、怯えたような顔でわたしを見るはずがないんだから。
冷静な部分で、そんなことを思った。
「それに同情?・・・くだらない」
「っ下らない・・・っ?」
「下らないね」
ああ、くそっ。
落ち着け、わたし!
冷静になろうと、息を吐き出す。
「わかってた、わかってよ。こんなこと、ただのお節介だってね・・・!」
「「・・・・・・」」
「・・・・っだからって、同情とか、憐憫とか、何でそんな風にしか思えない!?なんで、そんな俗物的なものの考えしかできない!?」
落ち着け、自分。
彼女は違う。
それは、防波堤なんだ。
自分を護るための、鎧なんだ。
だから、落ち着け。
かつての自分も、そうだったじゃないか!
なのに、言葉が止まらない・・・!
「わたしが君達と、心を近づけたいからだって、どうしてそういう風に思えない!?思ってくれない!?」
「「―――っ!!???」」
「わたしは確かに、なのはの友達で!君達とは敵の友達だ!」
でも、だからって・・・!
「それでも、わたしと君たちは知り合った!小さな、ほんの小さな出会いかもしれない!それでも、こうしてわたしと君達は出会ったんだ!」
「ちゃんと食べてるか、心配しちゃ駄目か!?君達が傷ついていないか、不安に思っちゃ駄目か!?倒れてないか、危惧しちゃ駄目か!?」
「あんた・・・」
「あなた・・・」
くそっ!
「・・・失礼するよ。これ以上は、君達を不本意に傷つけそうだからね」
拳を握り締めて。
自分に、落ち着けと言い聞かせる。
「あ・・・!」
悪いけど、フェイトの何か言いたそうな声を無視して、わたしは出て行った。
なにが、18歳だ・・・。
傷つき続けてる9歳の子供に、怒鳴り散らして・・・。
成長なんて、していない・・・。
そんな自分に、吐き気がする・・・!
家に帰って見てみると、握り締めた拳から、血が出ていた。
それがまるで、フェイトとアルフを、言葉という暴力で傷つけた証明だと思うと。
遣る瀬無くて。
あまりにも、自分が情けなくて。
吐き気が、増す。
【プロテクト解除】
無機質な。
そんなインテリの声にさえ。
ああ、吐き気がする・・・。
ブラウザバックでお戻りください。
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