車椅子にのった怯えた様子の女の子。

 凄い剣幕で怒鳴り散らす酔っ払い。


 さあ、悪いのはどっち!


「確実にお前だぁ!」

「うごふっ!!」


 女の子の襟首をつかんでいた男の横っ面に、走りよったままジャンプして、両足でとび蹴り。

 いい具合に吹っ飛ぶ男。

 あっはっは〜、笑いが止まらないね!


 こちとら、家を追い出されたんだこの野郎!

 何が、妹か弟ほしいだろ?巳星。だ!

 これでも元18歳だぞ!?

 満面の笑みで頷ける歳じゃないんだよ!

 アバウトに言われる方がハズイわバカタレ!!

 思わず、なのはの家に泊まる、って言っちゃったじゃないか!

 あの唯我独尊バラー’sなら、3ヵ月後楽しみにしてるね?とか言いそうだけど!

 私これでも恥ずかしがり屋なつもりなんだってば!


 物分りイイ娘でごめんね!チクショー!!(八つ当たり


「はぁ・・・少しスッキリした」


 かいてもいない汗を拭う。


「え、えっと、ありがと」


 声をかけられ、そこでようやく、相手の女の子が誰であるかを悟った。


 ・・・来年のボスキャラじゃん・・・。(違います


「どういたしまして。大丈夫だった?」


 とりあえず、何も知らない子供の顔で対応。


「うん。平気や。・・・けど、アレはやりすぎちゃうん?」


 引きつった笑みでそちらに顔を向ける彼女につられてそちらに顔を向ければ、ピクリとも動かない男の人。

 たぶん、わたしが吹っ飛ばした奴。


 あれ?

 あの人、この間フェイトに絡んで奴じゃん。

 もしかして、子供以外に啖呵きれないのかな〜?


「良いの良いの。あの人、前科もちだから」

「前科?」

「前にもね、同じくらいの年の子に怒鳴ってて。その時もわたしが対応したんだけどさ」

「そ、そうなんや。あ、あたしは八神はやていうんや!」

「わたしは須加巳星。よろしく、はやて」

「うん!」


 握手を交わして、はやてが笑う。

 うん、純粋な笑顔だ。

 汚れたわたしには眩しいよ!


 こうしてわたしは、着々と原作キャラとかかわりを持っていくのだった。

 マリみてのときのように・・・・・・。


 いやいや、大丈夫大丈夫!

 まだまだ平凡!























【八つ当たりですが何か?】































 何でかわからないけど、はやての家にお邪魔しています。


 お礼、とかそんな感じ?

 初めは断ろうかと思ってたんだけどさ、すっごい寂しそうな表情をするもんだから。


 あれがもし演技なら、末恐ろしい子だ。

 まあ、本心なんだろうけど。

 頷いた時、すっごい嬉しそうだったから。


「これからどうするん?」

「次は―――」


 で、今何をやっているのかというと、はやてに料理のレシピを教えてるの。


 テレビで見たとおり、はやては料理つくるのが趣味らしくて。

 ほぼなし崩し的にだけど、毎日料理を作ってるわたし。

 共通の話題で盛り上がったわけさ。


 で、その中ではやてのやったことがない料理があったらしくて、それを今教えている最中。

 みんなも試してみて。


 まず、レモン汁。

 それと牛乳。

 +蜂蜜。

 それを混ぜて、よし一気!


 もちろん嘘。

 ちなみにそれ飲んで、わたしはお腹を下したことがある。

 便秘の人には良いかもねv


「美味しそうやね!巳星ちゃん!」

「うん、良かった」


 ホッと安堵の息をつきながら、はやてと一緒に昼食。


「・・・なあ、巳星ちゃん」

「ん?」

「また、レシピ教えてくれへん?」


 伺うようなはやての表情。

 わたしはそれに頷いた。


「かまわないよ。といっても、そんなにレパートリーがあるわけじゃないけど」

「ええんや!2人でオリジナル料理作ったりするのも楽しいやろし!」

「そうだね。それも楽しそうだ」


 本当に嬉しそうに笑い、はやてはご飯を食べる。

 それが、歳相応に幼くて。


 きっと、ずっと寂しかったのだろう。

 両親が死んで。

 いくら、見たこともない人からの援助を受けていても、結局は独り。

 まだ10にも満たない子が。


 そんな彼女を、利用しようとしている大人がいる。

 それは、世間から見れば、人一人の命で済むなら仕方がない、とされることだろうけど。

 はやても優しいから、自分だけが犠牲になるなら、なんて言いそうだけど。


「はやて」

「うん?どうしたんや?」


 ご飯粒をつけてこちらを見るはやての口元に手を伸ばし、それを取る。


「あ・・・」


 恥ずかしそうなはやてを気にせず、それを口に入れた。

 とたん真っ赤になってしまうはやてに首をかしげるけど、

 それも気にせず、わたしは言った。


「もう少し、ワガママになっても良いんだからね」

「え・・・」

「まだ、はやては子供なんだから」

「なん・・・っ。み、巳星ちゃんかて、子供やんか!」

「うん。わたしも子供。だから、はやてにワガママ言ってほしいって、我がままを言ってるの」

「巳星ちゃん・・・言ってること、おかしいわ・・・っ」


 瞳を潤ませるはやてに手を伸ばし、髪を撫でる。


「そうだね。日本語、おかしいね。でも」


 でも、今言ったこと。

 それは。


「わたしの、本心だから」

「・・・変な子やっ・・・巳星ちゃんて・・・っ」


 顔を覆い、肩を震わせるはやてのそばにより、抱きしめた。

 まだまだ小さな、その背中に腕をまわして。

 まだまだ細い、その肩を抱き寄せた。


 善人ぶる気はないけれど、わたしは彼女を守りたいと思った。

 それは、テレビで彼女を見ていたからか。

 それとも、心奥底にしまった癒えきれないソレ故にか。


 いやきっと、彼女に触れたからだと思う。

 彼女の隠し切れない、

 幼くて。

 脆い。

 そんな心に。













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