【夜伽】
「それで、わたしは一体何を?」
「そうね。とりあえず、服を脱いで」
・・・・・・・・・・・は?
この方、笑顔で何を仰いました?
「お母様、ちゃんと説明しないでそのようなことを仰っても、さまには伝わりませんわ」
「そうかしら?」
祥子さまに首を傾げる清子奥様。
この方、本当に奥様?
「さんのお仕事は、大きくわけて2つよ」
「あ、はい」
蓉子さまに言われ、わたしはそちらへと体を向けた。
「まず一つ。私達のお話相手」
「え?」
そんなので良いの?
楽な方じゃない?
なんて、人生そんなに甘くない。
「2つ目。こちらが主流ね。私達の、夜伽相手」
「はいぃ!!?」
よ、夜伽って、あれですよね!?
夜の相手、ってことですよね!?
「理解したみたいね。そういうことよ。5億円の価値、あるでしょう?」
江利子さまがニヤリと笑う。
に、逃げたいっ。
すっごく逃げたい!
両親の借金なんか、倍になっても良いから逃げたい!!
とにかく、わたしが助かるなら、両親あげる!
「大丈夫よ。全員初心者だから」
笑顔で言わないでください!清子奥様!
そんな報告いらない!!
っていうか、意味ない!
効果皆無!
「まあ、一人はそうではない子がいるけど」
全員の視線が、聖さまへと向けられた。
「まあね〜」
にへら、と笑う聖さま。
なんて締まりのない笑顔!
嫌過ぎ!
「あ、逃げようとしたら、この子が変わりにそうなるわよ」
江利子さまはそう言って、祐巳さまを指さした。
・・・・・・・・・姉妹じゃないんかい!!
そんなこと言ってられない!
唯一、隣にいて落ち着けそうなこの方が人質・・・・・・っ。
「・・・・・・・わかりましたっ」
こんな方を人質に取られて、わたしは清水の舞台から飛び降りる気持ちで江利子さまに答えた。
両親だったらいくらでも好きにしても良いのに!!(心の叫び
「あ、けれど、明日からは、屋敷内であれば好きなだけ逃げて良いわよ。その方が面白いし」
気分は逃げまどうウサギですか。
どこの世界も、食物連鎖が厳しいね(涙
「そういうわけだから、いらっしゃい」
るんるん気分の清子様に手を引かれて、わたしは歩き出す。
「お母様との夜伽が終わったら、年上順に部屋に来てね」
そういってウィンクする蓉子さま。
って、年上順!?
「全員の方とやるんですか!?」
「あら、当たり前じゃない」
当たり前じゃないですから!由乃さま!
「カメラ持って、待ってるわね」
「撮影禁止です!!」
それ、絶対にヤバイですから、蔦子さま!
「銀杏用意して、待ってるわ」
「銀杏はやめてください!!」
何に使うんだ、銀杏!!
さようなら、わたしの青い春。
まさか、こんな形でメイド初日を迎えることになるなんて・・・・・・。
というか、こんな形で、初めてを迎えるなんて(泣
っていうか、体力持たない・・・・・・。
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