【祐巳たん出会う】































 めでたくリリアン高等部に上がりました。

 クラスは3人同じ。

 桂に強制されて、掲示板の前で3人してハイタッチ。

 志摩子が恥ずかしそうにしていたけど、嬉しそうだったからまあいっか、ということで。


「祐巳〜」


 ・・・なんか来た。


 ざわめくクラスメイト達。

 まあ、かの有名な白薔薇さまが終礼直後に現れたら、そりゃ驚くわな。

 ましてや、呼び捨てでなんて。


 驚いてないのも何人か。

 そのほとんどは、中等部で同じクラスになったことがある人達。

 一時期、桂に最上の優しさをもって接していた人達。

 今度はなにしたんだろー、的な生(なま)な優しい笑顔でこっちを見ている。


 何もしてませんよ?

 本当だよ?


 とりあえず出入り口に立っている佐藤さんの腕に自分の腕を引っ掛けて廊下の隅に移動。


「何の用ですか?」

「用がなくちゃきちゃ駄目?」

「もちろんです」

「即答!?」


 誰?

 この人が、原作の祐巳が山百合会に入る前まで鞘のない刃物、的なこと言った人。

 もうすでにオヤジなんだけど。


「祐巳さん、白薔薇さま」


 やってきた志摩子と桂。

 佐藤さんは2人に気楽な感じで片手をあげて。


「どうなさったのですか?」

「祐巳達のこと、みんなに紹介したくて薔薇の館に誘いに来たの♪」

「あ、私テニス部のほうに行きたいので、すみません」

「わかった。志摩子ちゃんは?」

「私には聞かんのか」

「祐巳は強制」


 にっこり笑うその頬を引っぱる。

 わー、凄い伸びるー。


「ふふ、祐巳さんが行くのでしたら、私もお邪魔させていただきますわ」

「ひょうひゃーい」


 ため息をついて、仕方なく桂とわかれて志摩子と一緒に薔薇の館へと向かった。


 ギシギシいう階段。

 今落ちても、私は納得できる。

 そんな描写、原作では一切なかったから大丈夫なんだろうけど。

 不安だ・・・。


「これで落ちたら、入院費って自腹ですか?」

「・・・そんな質問してくる人って、薔薇の館が建てられて以来初じゃないかな?」


 いや、絶対誰でも一度は思うって。

 少なくとも、崩れないかな?とかは思う人絶対いるって。


「佐藤さんは一度も考えたことありません?崩れんじゃないか、とかでも」

「それくらいは何度かあるけど、入院費の心配はしたことないかなー?ね、志摩子ちゃん」

「そうですね」


 クスクス笑う佐藤さんと志摩子。

 っていうか今さらだけど、佐藤さんが志摩子をちゃん付けって違和感ありまくりですな。


 そんな会話をしながら2階に上がり、あるドアの前へ。

 佐藤さんがドアを開けて中に入るのに習って、挨拶と共に中に入る。


 いたのは3名。

 ヘアバンドをした人、顎まで黒髪を切り揃えた人、腰まで届きそうな黒髪の人。

 多分彼女達が鳥居さんと水野さん。

 ・・・と、誰?

 あきらかに小笠原さんではないと思う。

 微笑む顔がどっちかというと志摩子より。


 ・・・・・・・・・まさかぁ(汗


「紹介するね。紅薔薇さまの水野蓉子、黄薔薇さまの鳥居江利子。で、この子は私の妹(プティ・スール)の久保栞」


 そのまさかだったーーー!


 と、とりあえず落ち着こう。

 不審に思われてしまう。


「・・・初めまして、福沢祐巳です」

「初めまして、藤堂志摩子です」

「あなた達のことは聖から聞いているわ。桂さんはご用事かしら?」

「桂ちゃんは部活だって」

「そう、残念ね」


 水野さんに佐藤さんが答えると、うっすらと微笑んでこっちを見てくる鳥居さん。

 凄く期待のこもった目でこっちを見るのはやめてください。

 面白いことなんて出来ませんから。


 私は佐藤さんの腕を引いて、志摩子の背中に隠れるように。


「佐藤さん、彼女達に何を言ったんですか?」

「別に大したことは話してないよ?出会った時のこととか、メールでのやり取りとか」


 なるほど。

 喧嘩売られて買っちゃったあの出来事か。

 あれは確かにリリアンっぽくない行為で、面白い物好きの鳥居さんならあんな目をしそうだわ。


「あら、仲が良いわね。さっそく内緒話?」

「あ、そう見える〜?まあ、私と祐巳は学年をこえて親友だし」

「え?」

「えっ?」


 佐藤さんを見れば、彼女も私の声に反応して、私もしているだろうきょとん顔で私を見。


「え?あれ?そう思ってるの私、だけ?」

「・・・・・・・冗談です」

「その間は何!?」

「アハハ」

「ちょっと、こっち向いてよ!なんで明後日の方向いてるの!?」


 ガクガクと肩を揺らされつつも、佐藤さんを見ることなく。


「いや〜、いい天気だなーと」

「なんで今天気の話し!?それに今日は朝から曇りだよ!」


 いやいや、良いツッコミをお持ちで。

 尊敬しますなー。


 ガクガクされながらそう思った時、吹き出す音が。

 それから大きな笑い声。

 発生源は鳥居さん。

 見れば、彼女だけではなく水野さんと久保さんも口に手をあてて、肩を震わせている。

 それと志摩子も。


「祐巳さん最高!!」

「本当に・・・ぷっ・・・親友みたいね・・・くく・・・」

「ええ、本当に・・・ぷっ」


 ペシペシと机を叩く鳥居さん。

 そんな彼女につられるかのように、笑いが大きくなっていく水野さんと久保さん。

 志摩子は私の肩に顔を押し付けて肩を震わせ。

 そして佐藤さんは。


「えへへ」

「何故照れる」


 思わず私がボソリと呟くと、再び、鳥居さんが吹き出した。


 そんな感じの、私と彼女達の出会い。




















 薔薇の住人達と対面を終えた数日後、私はマリアさまの前で呆然としていた。

 何故か、何もしていないのにポニーテールにしていた、志摩子からの誕生日プレゼントである青色のリボンが切れたのだ。


 なんて不吉・・・。


 戦々恐々としながらリボンを拾おうと・・・。

 視界に入った、漆黒の艶のある髪。


「そこのあなた」


 ――― stand by ready


「あなたのお名前を―――」


 ――― go!


「え?・・・ちょ、ちょっと待ちなさい!」


 聞こえませーん!!


 シスターや生徒達のいない、人気のないほうへ。

 後ろから声が聞こえる気もしないでもないけど、きっと空耳。

 うん、そうに違いない。


 草木で出来た腰あたりの高さの柵をハードルのように飛び越えて。

 裏へ裏へ。


 それから角を曲がってすぐの、校舎側から裏庭へと続く用と思しき扉から中へ。

 そばの階段を駆け上がり。

 人の気配がするあたりで、走りから歩みへと変え。


「・・・ごきげんよう」


 何事もなかったかのように教室に入り、挨拶をしてくれるクラスメイトたちに笑顔を向けて挨拶。

 みんな私が髪をおろしていることに驚いているようだけど、今はそんなこと気にしている余裕などはない!


「ごきげんよう、祐巳さん、リボンは?」


 リボンの送り主である志摩子が首を傾げながら問いかけてきた。

 同じようにやってきた桂も不思議そう。

 私はそんな2人に、綺麗に真ん中で切れたリボンを見せて。


 真ん中っていうところが、更なる恐怖を感じるね。


「あら・・・」

「え?なんで?」

「いたって不明。マリア様の前にきたら、急に切れてビックリした」


 口に手をあてて驚きを示す志摩子と、目を見開く桂。

 私が答えれば、さらに驚いたような顔で。


「・・・なんか怖っ」


 激しく同感です。


 っていうか、あれは小笠原祥子だよね?

 雰囲気っていうか、声質(?)っていうか、”お嬢様”って感じがしたし。

 いや、確認せずにダッシュで逃げちゃった私が悪いんだけどね。

 けど、本能が逃げろと告げていた。

 そう、福沢祐巳の体が逃げろと!


 そのお昼休み、【紅薔薇のつぼみ、ご乱心!?】なる噂が。

 何でも朝、小笠原さんが徒競走の如く走っている姿を見たものがいるらしい。

 あらあらうふふ・・・vv


















 あとがき。


 転生物を書くにあたって何よりも先に思いついたのが、祥子に声をかけられてそっこう逃げる、というもの。

 結構満足vv







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