【さりげない嫉妬?】
志摩子とは、あれ以来休み時間や昼食の時間、一緒に食べるようになった祐巳たち。
「わ、志摩子さんのそのおかず、美味しそう」
「食べる?祐巳さんも」
「良いの?」
「ええ」
「ありがとう」
志摩子から、金平をお裾分けしてもらって。
祐巳も、代わりに唐揚げを志摩子のお弁当箱に入れた。
それを受けて、顔をほころばせる志摩子。
それがあまりにも嬉しそうで。
あまりにも綺麗で。
あまりにも幼くて。
祐巳も、自然ととびっきりの笑顔を返していた。
「・・・祐巳さん、祐巳さん」
「うん?」
「私も、その唐揚げちょうだい。変わりに、祐巳さんが大好きな、甘い厚焼き玉子あげるから」
「じゃあ、交換」
桂とも、お弁当の中身を交換。
そうすれば今度は、蔦子が唐揚げと小さなオニギリを交換してほしい、と頼まれて。
祐巳もそれに笑顔で頷いて。
ふと気づけば、唐揚げねぇし、な状態。
それでも、しょうがないか、なんて切り替えて、交換した品を美味しそうに食べ始めた。
思わず、見ているものも笑顔になってしまうような表情で。
「美味しい?祐巳さん」
「うん。ちょうどいい甘さが口いっぱいに広がって、美味しい♪」
「それは良かったわ」
「オニギリはどう?」
「梅シソの、すっぱさがちょうど良くて美味しいよ♪」
「そう」
「・・・祐巳さん、金平も美味しいかしら?」
「うん。少し辛くて、とっても美味しいよ♪」
「良かったわ」
桂もご満悦。
蔦子もご満悦。
志摩子もご満悦。
祐巳もご満悦。
みんなでのんびり、昼食をとった。
まあ、色々とそれぞれ思惑はあったりするのだが。
鈍感な祐巳は、まったくと言っていいほど気づかない。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
山百合会の仕事がある志摩子はおらず、祐巳たちは久しぶりといってもいいかもしれない、3人での下校。
なのだが、何故か蔦子も桂も話しをしない。
にもかかわらず、祐巳の両隣をピッタリとくっついていて。
「あ、あの」
「「なぁに?」」
「い、いや、その、歩きづらいんだけど・・・」
そう言うと離れてくれたが、何故か今度は2人に手を繋がれて。
「え?2人とも?」
手をつないだことなど、今まで何度もあるのだが。
何故か、それとは少し違うように、祐巳は感じた。
「「イヤ?」」
「それは、ないけど・・・」
「「ならいいわよねv」」
「・・・・・・・・」
祐巳にとっては、わけのわからない状況。
そんな祐巳を無視して、2人はご機嫌。
それに、祐巳はさらに混乱してしまう。
「(・・・・何、この状況・・・・?)」
「予想外だったわよね」
無言を破ったのは、桂。
けれど、わけのわからない内容で。
「へ?」
なにが?と、祐巳はマヌケな顔で隣を見てしまう。
だが、祐巳とは違い、反対隣にいる蔦子には伝わったようで。
「ええ。自分で提案しておいて、なんだけど」
「桂さん?蔦子さん?」
「まさか、こんな風に自分自身が感じるなんて」
祐巳に名前を呼ばれるが、蔦子はスルー。
桂は、それに何の疑問もなく返し。
「狭量だな、って思っちゃうわよね〜」
「本当にね」
「あ、あの、だから、2人とも?」
「自分でも、驚いているわ」
「そうそう。ビックリよね〜」
それから、またしても沈黙。
が、今度は両隣からガン見されて、祐巳はわたわた。
「えっ?えっ?」
返ってきたのは。
「「はぁ・・・・」」
盛大なため息で。
祐巳の周りは、疑問符がいっぱい。
わけわからなさMAX。
「なに?何なのっ?2人とも〜!」
「「なんでもないわ」」
明らかに何かある返答。
それでも、答えを言う気はないらしい2人。
そして、
「「予想外」」
何度目かのユニゾンで、そう呟くのだった。
「だから、何の話し!?」
置いてけぼりな祐巳の声が、少しだけ響いた。
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