【滑稽な】
































「阿東天和、か・・・・」

「調べてみた方が良いな。血の臭いがするなんて、おかしいだろ」

「そうね。・・・・血の臭いと祐巳ちゃんが聞いた呟き。・・・・・もしかしたら、その子は綺麗な子を飾って楽しむ、殺人快楽者なのかもしれないわ」


 祐一郎、祐麒、みきがつげ。

 祐巳も、それに真剣な顔で頷いた。


 そういう人間は、初めてではない。

 今までの仕事の中で、少ないけれどいた。

 だから、祐巳たちはそういう結論を出しているのだ。


「とにかく、まだ確証はないからその線だけで考えるわけにはいかないな」

「わかってる。視野を狭くして勝手に決め付けてたら、足元すくわれる可能性もあるし」

「だな。とりあえず、仕事の期間は、祥子さんだけじゃなくて他の人たちも守ることにする。あそこは、結構綺麗どころが多いからな」

「そうしてちょうだい。祐巳ちゃん、志摩子ちゃんは目をつけられているみたいだから、ちゃんと護るのよ?もちろん、他の人たちもね」

「もちろん。わたしが護らないで、誰が志摩子さんを護るっていうの?」


 片眉をあげて笑う祐巳に、それもそうだ、なんてみきたちは笑いあう。


 油断はしない。

 けど、志摩子を不安にはさせないように。

 だから、祐巳はさらに修行に精を出した。

 その時の祐巳は、天和よりも鋭い瞳をしていた。


















「薔薇の館?」

「そう!行ってみたいのぉ、だめぇ?」


 顔を覗き込み、上目遣いで見つめてくる天和。


 自分が可愛いと知り、それを最大限に使う方法を知っているようだ。

 そして、相手に安心と気を許させるための方法も。


「う〜ん。今日から来てほしいって言われたから、たぶん大丈夫だと思うよ」


 祐巳は笑顔で頷く。

 当然、天和の術中にはまるなんてことはしない。


 祐巳は外見で人は判断しない。

 自分の勘で判断し、それに従う。

 危険だと感じた相手に気を許したように見えるのは当然フェイクで、実際攻撃されればいつでも反撃できるように警戒しているのだ。

 そこらへん、祐巳の線引きははっきりしている。


「本当!?嬉しぃ!これでぇ、志摩子さんとも一緒にいられるねぇ」


 ニコニコと笑う天和は、けれど志摩子を狙う獲物の目をしている。


「ええ、そうね」


 志摩子も、それを感じつつも違和感がないように返している。

 心を隠すのは、祐巳と会うまで志摩子がいつもしていたこと。

 初めは怯えを若干表に出していたが、今では完璧に隠れていた。


 志摩子の腕に自らの腕を絡め、甘えるように話しかける天和。

 それを困ったような笑顔で見ていた祐巳は、袖を軽く引かれて振り返った。


「蔦子さん?」


 蔦子は一瞬ちらりと天和を見ながら、祐巳の耳に囁く。


「祐巳さん、あの子には気をつけたほうが良いわよ」

「どういう意味?」


 小声に祐巳も小声で返し、もちろん不思議そうな顔をする。


「ほら、私ってカメラで人を撮るじゃない?私が求めるのは、外見だけの美しさじゃなくて、内面の美しさも含めた輝きなのよ」

「うん?」

「だから、レンズ越しからその人を見ていると、その人の内面の美しさも、私にはなんとなくわかるの」

「凄いね」

「ありがとう。でね、彼女を気をつけてって言ったのは、彼女は何か普通じゃないのよ」

「普通じゃない?」


 カメラやってると、そういうのもわかるんだ。

 そんなことを思いながら、祐巳はやはり首をかしげた。


「何が、っていうのは上手く言えないんだけど、彼女をレンズ越しにとらえると、なんか怖いって思っちゃうのよ」

「怖い・・・・」

「ええ。だから、気をつけてね。まあ、薔薇さまたちもいるし変なことにはならないだろうけど」

「うん、わかった。ありがとう、蔦子さん」

「どういたしまして。それじゃあ私、行くわね」

「うん、ごきげんよう」

「ごきげんよう」


 手を振りあってわかれ、祐巳は志摩子と天和に近づいていく。


「そろそろ行こう。あんまり遅くなったら、お手伝いの意味がないし」

「さんせぇ!」

「そうね」


 志摩子、天和、祐巳の並びで薔薇の館へと目指す。

 まるで、自分の物だと主張するように。

 まるで、自分の方が親友に相応しいと主張するように。

 まるで、祐巳になんて興味がないと、体現するように。

 志摩子の腕に、天和は腕を絡めたまま。


 その道中、祐巳は2人を見て微笑みながら思う。


 蔦子さん、薔薇さま方がいるから平気、じゃなくて、彼女の目的は、薔薇さま方なんだよ。

 きっとね。


 と。

































「彼女は、私の妹(プティ・スール)ですわ!!」

「ええ!?」


 声をあげる祐巳、とかいう奴の声を聞きながら、あたしは内心笑った。


 キヒヒ、今回はぁ、楽にいきそぅ。

 少なくともぉ、この外見だけは綺麗な女とぉ、志摩子はぁ。


 外見が綺麗ならぁ、見てて楽しいしぃ。

 だってぇ、殺すんだからぁ。

 口うるさくてもぉ、殺せばそんなの関係なくなるしねぇ。


 それにしてもぉ、みんな綺麗だなぁ。

 コレが全員そろえばぁ、きっと凄いことになるよぉ。


 これでぇ、祐巳なんてブスがいなければぁ、ここで手に入れてたんだけどなぁ。


 キヒヒ。

 でもぉ、手に入れるまでが長ければ長いほどぉ、手に入れたとき凄い快感を感じるんだよねぇ。

 愛するものに殺されるって感じて絶望したらぁ、本当に良い声あげるしねぇ。

 ここにいる物たちはぁ、どんな声で啼くんだろぉ。

 ここにいる物たちはぁ、どんな顔で泣くんだろぉ。


 やっぱりぃ、志摩子が先かなぁ?

 志摩子はあんなブスよりもぉ、あたしに気を許してくれてるしぃ。

 やっぱりぃ、あんな何の特徴もないブスよりぃ、あたしを選ぶよねぇ。


 キヒッ、キヒヒヒッ。

 それともぉ、あのブスを殺してぇ、悲しんだ志摩子の隙をついた方が良いのかなぁ。

 うん、そうしよぉ。

 あんなブスぅ、視界に入ってくること自体が目障りだしぃ。

 あたしのコレクションにならないような奴ぅ、あたしにしてみたら生きる価値もないしぃ。


 キヒッ。

 そうしようっとぉ。

 いつ殺そうかなぁ。


 キヒヒヒッ。






















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