【ニニンがニン】






























 この世には、普通の人達が知らないモノが存在する。

 たとえば、殺し屋。

 あれ、本当にいるんだよ?

 あとは、忍者、とか。

 いるわけないじゃん、とか思ってるそこの人、見たこともないのに最初っから否定は駄目だよ?

 ん?

 見たことがないから、否定するのかな?

 まあ、良いや。

 とりあえず、いるんです!

 何でそんな自信持って言えるかって?


 だって、わたしが忍者だもん!




 忍者といえば、徳川家康に仕えた、服部半蔵が有名だよね。

 知ってると思うけど、服部半蔵って1人じゃないんだよ?

 ようは、受け継がれる名前、ってことだね。

 それで、実はわたしの家も、服部半蔵の末裔なの。

 詳しく言うと、分家、みたいなものなんだけどね。

 けど、一応徳川家康の家臣だった服部半蔵の血は受け継いでいるの。

 苗字が何で服部じゃないか?

 よくわからないんだけど、世間の目をくらますため?

 あ、忍者だからって、別に暗殺とかやってないよ?我が家は。

 従姉妹の家は暗殺専門だけど、我が家は護衛専門の忍者なの。

 まあ、小さい頃から、それ系統の忍術や武術は習うんだけど。

 だって、護衛でもそういう状況になる場合あるでしょ?

 そういうこと。


 と、なんだか長々と説明しちゃったけど、眠くなってない?

 大丈夫かな?


 あ、自己紹介してなかったね。

 多分、予想ついてる人がほとんどだと思うけどね、一応。


 わたしはリリアン女学園中等部3年の、福沢祐巳、よろしくね!












「祐巳、お前に仕事だ」

「今度は誰?」

「小萬寺の住職からで、娘さんを護衛してほしいらしい」


 父親、祐一郎の言葉に祐巳は首をかしげた。


「なんでお寺の住職から、そんな依頼が来るんだよ」

 
 年子の弟、祐麒も疑問に思ったらしく、ご飯を食べる手を止めてそう問いかけた。


「それが、娘さんが最近ストーカーされてるらしくてな。警察に言っても、あそこは事後じゃないと動かないだろう?事後じゃ遅いからな、父親としては心配らしい」

「うわ、ストーカーかよ。最近、多いって言うもんな」

「ああ。彼女も祐巳と同じリリアン生らしくて、俺たちがやるよりも、祐巳に任せたほうが良いと思ってな」

「良いよ。名前教えてくれる?」

「ああ、藤堂志摩子さんだ。同じ学年だし、友達にでもなったらどうだ?」

 
 その名前を聞き、祐巳は驚いたように目を見張った。


「志摩子さん!?」

「ん?知っているのか?」

「同じクラスだし、もう友達だもん!でもそっか・・・、志摩子さんって小萬寺住職の娘さんだったんだ・・・」

「驚くことか?祐巳なんて、リリアンに通ってながら忍者なんだぞ?」

「あ、そっか」

「ま、なんだ。彼女のこと、よろしく頼むぞ」

「うん、わかった」


 祐麒の言葉にポン、と手を叩く祐巳に苦笑しながら祐一郎がしめるように言えば、祐巳はそれに笑顔で頷いた。



















 志摩子と祐巳はよく話をする。

 普通、とは言いがたいが、周りが特別視するほど凄い人物ではない、と祐巳は思っている。

 話をしてわかったが、志摩子の好きなものが和風なものだったり、数学が苦手だったりと別段普通の少女なのだ。

 かなり銀杏が大好きなみたいだが。


 だから、祐巳は周りの子達と違って、志摩子と話をするのに緊張することはなかった。

 もともと、祐巳があまり緊張というものをしないのだから当然だ。

 忍者だし。



「し〜まこさん♪」

「祐巳さん。ごきげんよう」

「ごきげんよう、志摩子さん」


 教室に入ってすぐ、祐巳は志摩子の元へと向かった。

 志摩子は祐巳を見ると他の人には向けない、嬉しそうな笑みを浮かべた。

 志摩子も、普通に接してくれる祐巳に好感を持っているのだ。


「なに読んでたの?」

「源頼朝について書かれた本よ」

「ああ、源頼朝」

「知っているの?」

「初めて武士による政権である鎌倉幕府を作った初代鎌倉幕府将軍。源氏の棟梁源義朝の三男として誕生。『鬼武者』という幼名で呼ばれた人で、平治の乱に敗れた父・義朝は鎌倉に落ち延びる途中で殺され、頼朝は捕らえられ、伊豆の蛭ヶ小島に島流しとなり。そんな中で、伊豆の土豪・北条時政の娘・北条政子と結婚した人、だよね」


 笑顔で、つっかえることなく長い説明をさらさら述べる祐巳。

 志摩子はそんな祐巳に慣れているため、笑顔で頷いた。


「ええ、正解。でも、よく知っているわね。また祐麒さんに?」

「そう。一日に1人は必ず、歴史上の人物のこと細かく説明して来るんだもん」


 不満そうに口を尖らせる祐巳に、志摩子は口に手をあてて笑う。


 実際、祐麒は歴史オタクと言っても良いくらい、詳しいことを知っている。

 昨晩は、平清盛のことを延々と聞かされ続けた。

 必然的に、祐巳も歴史に詳しくなる、というわけだ。


「それにしても、祐巳さんて不思議よね」

「え?どこが?」


 不思議そうに首を傾げる祐巳に、志摩子はもう一度クスリ。


「だって祐巳さん、歴史はもちろんとして、化学、英語、保険体育、数学。どれもこれも私より出来るじゃない?それなのに、テストではいつも平均点よりも少し上くらいだわ」


 そうなのだ。

 祐一郎とみきの教育方針により、祐巳も祐麒もかなり頭が良い。

 現代の忍者は、様々な分野で長けていなければいけない!が、2人の教育文句だから。


「あ、あぅ・・・。だってだって、テストだと何でかスコーンって忘れちゃうんだもん・・・」


 ただ、カモフラージュとして、それをあまり公にはしないこと、とも言われている。


 そんな家庭の事情を知らない志摩子は苦笑して、項垂れている祐巳の手をとった。


「祐巳さんは、色々なことを知る前に、過度に緊張してしまう癖を治した方がいいわね」

「が、頑張ります」


 ますます項垂れる祐巳を、志摩子は優しい笑みを浮かべて見つめていたのだった。

















「祐麒、いくつ?」

「68。祐巳は?」

「69・・・・」

「「はぁ・・・・」」


 お互いにため息をつく福沢姉弟の手には、返ってきた答案用紙が。


「なんかさ、わざと間違えてるってわかってるけど、切ないよな・・・・」

「切ないよね・・・」

「良いじゃない。実際には、全部わかるんでしょう?」


 そんな暗い2人を見かねたのか、母親であるみきが苦笑しながらテーブルに夕食を並べつつそう宥めてくれる。


「当たり前だろ?」

「そうそう。それに、今までの平均点からみて今回は平均点がどれくらいの数値になるかを計算した後、点数配分も計算して、どれくらい間違えなくちゃダメか、っていうのも毎回計算してるんだよ?」

「そ。間違えるのも、大体みんなが間違えそうなのを選んで間違えないといけないしな」


 うんうん頷いている祐巳と祐麒。


「大変ね」

「「母さん達のせいじゃん」」


 呆れる姉弟に、みきは微笑み返すだけ。

 2人はそれにため息をついた。


「あ〜あ、少しは頑張ったね賞をくれても良いよな〜」

「うんうん。頑張ってる息子娘を見て、もっとさ」

「はいはい。今度は何が欲しいの?」


 みきの言葉に目を光らせる2人。


「俺、新しい薙刀が良い!」

「わたし、新しいクナイ!」

「また?前も同じだったじゃない。前回買ってあげたのはどうしたの?」

「祐麒の力が強すぎて、刃がかけた」

「祐巳の力が強すぎて、刃が折れた」


 お互いがお互いを指差す2人。

 だが、互いに相手の言い分が納得できず。


「あれはわたしのせいじゃないでしょう!?祐麒がちゃんと毎日手入れしてないからだよ!」

「してるに決まってるだろ!だいたい、普通クナイで薙刀が折れるなんて聞いたこと無いぞ!?」


 怒鳴りあいに。

 その内容に、みきはこめかみを押さえた。


「ストップ!」
 

 ピタッと止まる両名。


「良いわよ、買ってあげる。けど祐巳ちゃん、あなた祐麒よりも強いんだから、もう少し考えて使いなさい。祐麒の言う通り、普通はクナイなんかじゃ薙刀は折れないわ」


 そう師匠でもある母に言われ、2人は複雑そうな顔をした。


「普通は、折れないんだ・・・」

「確かに、祐巳の方が強いけど・・・・」


 その言葉に、みきは自分の失言に気付き、口を押さえた。


「と、とりあえず、夕飯を食べてしまいましょう」


 みきはリビングを出て祐一郎を呼びに行き、残った両名はキッと睨み合うように目を見合わせた。


「「食べ終えたら、勝負!」」


 こうして日々、祐巳と祐麒は腕を上げているのだった。






















 一言。


 凄っい、意味不明。

 




















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