【奇想天外】
「私が、江利子と・・・・・?」
「何でもありね・・・・」
「だから言ったでしょう?後悔しませんか?と」
呆然とした様子の2人に、祐蘭は冷めてしまった紅茶を飲みながら淡々と言う。
「だってまさか、江利子と結婚だなんて・・・・・」
「ええ。想像だってしてなかったわ」
お互いに顔を見合わせ、それからため息。
「「あり得ないわね」」
そんな2人に、なんとなく全員がホッとしたように息を吐き出した。
「そうですね。向こうのお2人は常に一緒で、授業中以外はずっと手を繋ぐくらい仲良しでしたから」
「うぇ。見たくない光景」
聖が顔を歪め蓉子と江利子を見れば、蓉子は睨み返し、江利子はふふんと笑った。
「あら、恋人の折檻が怖くて学校まで辞めてしまった人には言われたくないわね」
「それ、別にわたしのことじゃないし!」
「もう1人のあなた、ということは、その可能性もあったはずでしょう?」
「それを言うなら、江利子と蓉子がラブラブな可能性もあるんだよね?」
「「それは言わないでくれない?」」
笑っていない笑顔の3人に、気圧される祐巳たち。
反対に、祐蘭は気にした様子もなく優雅に紅茶を飲んでいる。
「私のことも、聞いても良いかしら?」
「あ、それなら、わたしも!」
祥子と令の言葉に、3年生組み以外がジッと答えを求めるように祐蘭を見つめた。
「構いませんが。祥子さまには私は、聖さま同様、実際に会ったことがありませんよ?」
「え?」
「なら、祐蘭ちゃんの世界では、祥子はリリアン生じゃないっていうこと?」
「リリアン生ではない、というよりも、こちらも同様にリリアン生ではなくなった、と言った方が正解ですね」
「ということは、祥子さまも逃げ・・・」
「由乃ちゃん?」
「なんでもないです」
祥子と由乃の漫才を、令、志摩子、祐巳が苦笑しながら見ている。
そんな彼女達を横目に見、祐蘭はポツリと呟いた。
「いなくなったんですよ」
「「「「え?」」」」
「小笠原祥子、という人は、いなくなったんです。一学年の、3学期に」
「「「「「「「「っっ!!!????」」」」」」」」
予想もしていなかった言葉に、全員が息をのんだ。
「うそっ」
そう呟いたのは祐巳で、その声に全員がハッとした。
「嘘!嘘でしょっ!お姉さまが死んじゃったなんて!!そんなの嘘だよね!!?」
ボロボロと涙を流し、縋るように祐蘭に問う祐巳。
祥子は悲しそうな、嬉しそうな表情をすると、そっと祐巳を抱き寄せる。
が、
「え?死んでませんよ?」
「「「「「「「「・・・・・・へ?」」」」」」」」
涙を拭おうとしていた全員の手が止まった。
「私の世界の彼女は、サチコ・キネンシス。という名前に改名して、アメリカでミュージシャンとして活動していましたから」
「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・サチコ・キネンシス?」」」」」」」」
「はい」
しっかりと頷く祐蘭。
「紛らわしい・・・・・」
「っていうか、ダサい名前」
「本当ね。もうちょっと、捻った名前にすれば良いのに」
死んだのではない、とわかった途端、蓉子、聖、江利子が呆れたようにいった。
本人ではないのだが、一応自分も小笠原祥子。
その言葉を聞き、喜ぶはずがない。
眉をピクピクと痙攣させ、それでも怒鳴らないようにと我慢している。
その間も、祐巳を抱き締めたままだが。
「・・・・祐巳さん、どんまいv」
「人だもの。間違えることはあるわ」
優しい同級生の励ましに、祐巳は感激(?)の涙を流す。
「(紛らわしいなぁ、本当)」
我関せずに紅茶を飲んでいる、外見は祐巳とそっくりだが、中身はまったく違う祐蘭をちらりと見ながら令は苦笑をこぼした。
「(でも、わたしのこと聞くの、ちょっと嫌になってきたかも)」
自分は、どんな弾けっぷりを祐蘭の世界ではやらかしているのだろう。
そう想像して、令はさらに深いため息をついたのだった。
聞きたくないかも、なんて思っている令に気付かず、祐蘭は要望どおり令のことを。
「令さまは、武嶋蔦子さんと恋人となり、彼女の盗撮の被害者の文句を全て引き受け、ストレスによる胃潰瘍で入院していました」
「・・・・・・・・・・・ダサ」
聖のこの言葉はきっと、全員の思いの代弁だったのではないだろうか。
令は黒い影を背負い、隅のほうで凹んでいたりする。
「でも、蔦子さんとお姉さまがなんて・・・・。並行世界って、予想がつかないわね」
「由乃さんは、運動神経抜群でしたよ」
「え?そうなの?」
心臓病を抱えているためか嬉しそうに問い返す由乃に、祐蘭は頷いて続けた。
「ですが、勉強は全然駄目で、別名、運動馬鹿、と呼ばれてもいましたが」
笑顔のまま、ピキリ、と由乃のこめかみに青筋が立つ。
ぶっと吹き出す聖と江利子。
肩を震わせる祥子と蓉子。
祐巳と志摩子は、笑っても良いものなのか判断に困り、きょろきょろ。
令はいまだ、深い瞑想に入っている。
時々「わたしなんて」とか「ヘタレだもの、どうせ」なんてことを呟いているが。
「志摩子さんは、実家から持ち出した数珠を首に巻いていました」
さらっと問題発言。
ぎょっと目を見開く志摩子を筆頭にした者達。
志摩子など、顔面蒼白にして、体を震わせている。
が、それも続けられた言葉に止まる。
「小萬寺。それが志摩子さんの家の名前なのですが、志摩子さんは菩薩様とマリア様を同様に愛していたようで、常に十字架と数珠を首から下げていました」
「それは、なんと、まあ・・・・・」
「ファッション意識、皆無ね・・・・・」
「十字架と数珠を併用って、効果あるのかしら?」
「効果はあるようですよ。それについて注意した教師全員が、必ず翌日に原因不明の腹痛に陥っていましたから」
「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」
志摩子を抜かした全員の視線が、志摩子へと、というよりも、志摩子の首周りへと注がれた。
「あ、あの、併用なんて、していませんよ?」
「そ、そうだよね」
「さすがにね」
「つまらないわね」
あはは、うふふ、ぶすっと、聖、蓉子、江利子が続けた。
「向こうの世界の志摩子さんは、呪術が得意だったようなので」
「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」
またしても集まる、志摩子への視線。
「あの、呪術なんて、出来ませんから」
「そ、そうだよね!」
「別に、気にしていなくてよ?」
焦った様子の令に、目を逸らしながら祥子。
「さらに言えば、一年に一人、生贄を捧げてもいた、という噂を耳にしました」
「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」
三度集まる志摩子への視線。
「あの、生贄なんて捧げたことありませんから」
「だ、だよね!」
「し、志摩子さんが、そんな事するはずないって、わかっていたわっ」
焦りまくりの祐巳と、引きつりながらもにっこり笑顔の由乃。
志摩子の家がお寺だとかそういうことは、これといって誰も注目していないらしい。
それに1人、志摩子は安堵していた。
・・・・・お寺云々よりも、祐蘭の世界の、志摩子の奇行のインパクトが脅威なほどに強かっただけなのだが。
「じゃ、じゃあ、わたしは?」
「あなたは、目の前に居るではありませんか」
「あ、そっか」
話題を変えようとしたのだろう祐巳の言葉に、けれどさらりと返されてしまった。
「ところで、なんで祐蘭さんは敬語なの?別に、普通で良いのよ?わたしたちは同じ歳なんだし」
「私が敬語なのは、元からです。それに、並行世界に居る間私は歳をとりませんし、もとの世界でも時間が進まないので、実際にはあなた方よりも年上です」
「え!?そうなの!?」
「なら、祐蘭ちゃんは今、いくつなの?」
祥子が不思議そうに問えば、祐蘭はさらり。
「さあ。200歳を過ぎた辺りから、数えるのをやめましたから」
「「「「「「「「200歳!!!??」」」」」」」」
本日二度目、薔薇の館が揺れた。
あとがき。
かなり前に書いたものですので、ちょっと(かなり)意味不明です(汗
ブラウザバックでお戻りください。
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