【一緒だと思ってた】




































「今日は水上ではなく、陸地を歩いてもらいます!」

「また始まったぞ、祐巳さんの突飛な行動」

「あらあら、素敵だと思うわ」

「・・・・・(こくん)」


 祐巳の発言に晃が呆れたようにいうが、反対に賛同するアリシアとアテナ。


 祐巳がこちらに来てから、2ヶ月ほどがたった。

 その間に晃たちも、祐巳には敬語を使わなくなっていた。

 さらに言うなら、アテナはさりげなく祐巳を姉さん、と呼んでいたりもする。


「良いから良いからv」

「しょうがねぇから、付き合ってやるか!」

「あらあら」

「・・・・・(こくん)」

「なら、出発進行!」


 むん、と胸をはる晃と口癖をいうアリシア、当然、とばかりに頷くアテナ。

 そんな3人に笑顔を返し、祐巳がもはや恒例のように腕を勢いよくあげ、3人も一緒に腕をあげた。


「の前に。まず、このなぞなぞの答えを3人には探してもらいます」


 差し出された、小さな小箱。

 アリシアが受け取り、それを開けると中には小さな紙が。

 両側から覗き込んでいた晃とアテナと一緒に、アリシアは祐巳を見る。


「それは、今回特別に貸してもらったものなんだ。それを使ってなぞなぞを全てクリアしたら、素敵なプレゼントを贈呈します!」

「『この地図を手にいれし者よ・・・我の言葉に従いて汝が宝を手に入れよ』って。んだ?これ」

「『長靴カッレで高らかに・・・元気に足踏み一休み』・・・・」

「あすこよね?」

「ナゾナゾ、挑戦する?」


 3人の顔をそれぞれ見て、祐巳は首をかしげる。

 アリシアたちは顔を見合わせ、にっこりと、にやりと、はにかみを浮かべた。


「当然!」

「うふふ」

「・・・・・(拳グッ)」

「では改めて、出発進行!」




 なんてこと、他にもたくさんのことをした。

 練習を続けている中で、思い出したように3人を休ませて、楽しませてくれる祐巳。

 3人は、これからも、こうやってずっと一緒にいられると思っていた。







 しかし、別れは突然やってくる。
















「晃ちゃん、アリシアちゃんのこと気にしすぎ」

「だって、あいつが一番上手いし・・・・」

「それは良いけど、ただの真似になったら駄目。3人には、それぞれ良いところがあるんだから。それを活かそうよ」


 ね?

 自分より少し低い晃の顔を覗き込み、祐巳は笑顔を向ける。

 晃は拗ねたように口を尖らせた。

 祐巳はしょうがないな、と柔らかく苦笑してしまう。


「姉さん・・・」

「うん?どうかした?アテナちゃん」

「名前で、呼んで・・・」

「え?名前で呼んでない?」


 舟(ゴンドラ)を止め、そう言ってくるアテナに祐巳は首をかしげた。


「うふふ。アテナちゃんは、呼び捨てにしてほしいのよ。ね、アテナちゃん」

「・・・・・・(こくん)」


 それを聞きつけたのか、晃が少し遠くのほうから慌ててこいで近づいてくる。


「私も!」


 祐巳は期待の顔で見つめてくる3人にきょとん、としたあと、柔らかく笑った。

 それから、意地悪い笑顔に変わる。


「それじゃあ、いつも練習しているコースを20分以内に終えたら、呼んであげる」


 祐巳がさした場所は、今彼女がいる島から50メートルほど先にある浮きまで行って戻ってくる、というもの。

 海流の激しいここでは、その練習コースに20分前後かかってしまう。

 ようは、ギリギリということだ。


「やってやるさ!」

「あらあら、いけるかしら」

「・・・・・・(拳グッ)」


 すわっと叫ぶ晃と、頬に手をあて微笑むアリシア、無言で拳を握り締めるアテナ。

 それぞれの反応を見ながら、祐巳は笑みを深める。


「それじゃあ、位置についてーー!」


 すっと綺麗に横一列に並んだのを見届け、上げていた右腕を勢いよく降ろした。


「スタート!!」


 3人が3人とも、いつもよりも真剣にこいでいるその様に、祐巳は思わず呆れた顔をしてしまう。


「練習も、それくらい真剣にやってくれたら良いのに」


 だが、その行動は祐巳にそれほど呼び捨てで呼んでもらいたいことのあらわれ。

 祐巳はむずかゆさを感じながら、座って待っていることにした。


 そのとき、祐巳はあることに気づいた。

 なんと、自分の体が透けているのである。


「っ!?」


 慌ててアリシアたちを見れば、もう少しで浮きに着きそうなころ。

 そうこうしている間にも侵食が進んでいき、もうすぐで消えてしまいそうだ。


「っアリシア!晃!アテナ!」


 3人が一斉に振り返った。


「あれ?祐巳さん、どこに行ったんだ?」

「??」

「隠れているのかしら?」

「ま、それより早く行かなくちゃな!私が一番について、名前で呼んでもらうんだ!」

「あらあら、それはいくら晃ちゃんでも譲れないわね」


 そんな会話をしている2人を無視して、アテナは小島へとUターン。


「あ!アテナ、お前ずるいぞ!」

「アテナちゃん、抜け駆けはいけないわ」

「・・・・・・・(無視)」


 3人が祐巳に名前で呼んでもらおうとがんばっている中。

 今まで祐巳がいたところには、ずっと誰もいなかったかのように静まり返っていた。















「ほえ〜〜〜!?」

「なによ、うるさいわね!!」

「藍華ちゃん!人が浮いてるよ!」

「はい!?あ、灯里!近づくから回収!」

「はひっ!」















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