【不快】
【お前なんか、産むんじゃなかった!!】
【化け物!!】
【お前なんか、要らないんだよ!!】
「っ!」
目に入ってきたのは、見慣れた光景。
それに安堵の息をついて、けどそんな息を吐いてしまう自分を嫌悪した。
「ふざけるな・・・・」
いつまで、人の安眠を潰せば気が済むんだ、あいつらは。
両親、と呼ぶことさえもおこがましい、あの女と男は。
他人の寝息。
苛々する。
・・・・殺してしまおうか?
いや、そんなことをしても、無意味なだけだ。
私にデメリットが発生するだけだ。
メリットなど、一切ない。
隠し持っている刀を取り出したくて震える左手を、必死に押さえる。
それに、殺すならあいつらが良い。
そうすればきっと、あいつらの幻影に苛立つこともない。
ああ、けど、あいつらの居場所なんて知らない。
生きているかどうかも。
そんなこと、興味もない。
落ち着け、黒鉄はやて。
自らに言い聞かせ、私は同室の彼女が起きないようにベッドから出た。
鏡の前。
交わる、自らとの視線。
左右、色の違う瞳が、私を射抜く。
反射的に腕を振り上げていて、私は慌ててそれを止めた。
叩き割る直前で止まった腕をおろせば、鏡には小さくひび。
「くそ・・・っ」
本当、苛々する。
全てに。
熱くなった頭を冷やすために、私は外に出た。
外は静まり返り、虫の鳴き声一つしない。
世界に、1人になったような感覚。
世界で、1人になれたような感覚。
冷たい風にあたってしばらく。
けど、そんな私を邪魔する知ってるやつの気配。
それを、後ろから感じた。
「何かよう?」
振り返ることなんてしない。
そんなめんどくさいこと、するはずもない。
「祈紗枝」
「あら、気づいていたのね」
「隠してるつもりだったの?」
「ええ、これでも、ね」
抱きしめられた体。
こいつは、良くこんなことをしてくる。
それは、周りに人がいないときだけだけど。
そんなこと関係なく、不快。
「離してくれる?」
「い・や」
「殺すよ?」
「あなたに殺されるなら本望だわ」
本当に不快だ。
私の言葉に怯えず、離れないからじゃない。
こいつのその言葉が、本心だから。
あまりにもイラついた時、こいつを本気で殺そうとした。
なのに、こいつは嬉しそうに笑ったのだ。
まるで、今にも感謝しそうな、そんな笑顔を。
だから、不快なんだ、こいつは。
まるで、人を恋人でも見るように見てくるから。
「綺麗な瞳ね」
「やめろ」
「どうして?とても綺麗だわ。私はね、この瞳に魅了されたの」
撫でてくる頬を、振り払おうとなんて思わない。
こいつには、何をしても無駄なことを知っているから。
なら、何もしない方が良い。
無駄な体力を使うだけだ。
「隠された瞳はとても綺麗なのに、その瞳に宿るのは底のみえない闇。それが、さらにこの目を綺麗に見せているわ」
落ちてきたキス。
それを拒まないのは、どうでもいいと思っているから。
こいつが、泣き出しそうな顔で笑ったりするからなんかじゃない。
こいつに何をしても無駄だと、知っているから。
決して、同じように暗い何かを持つこいつを、守りたいなんて思ってるからじゃない。
「愛しているわ、はやて」
「ふざけろ」
けど、その顔はとても不快だ。
私は一体何をしているんだろうな。
「紗枝・・・・!」
「はやて!?」
なんで私は、こいつを抱きしめている?
抱きしめて、なんで連れ去ろうとしている?
「チビ!?・・・・ちっ!さっさと逃げろ!!玲一は、あたしが何とかしてやる!!」
「邪魔するな、玲!!紗枝!どこに行こうとも、見つけてやるか―――ひぃっ!!」
なんで私は、叫ぶあいつに向かって殺気を放っている?
何を怒ってるの?
理解できない。
理解できない。
「はやて・・・来てくれるなんて、思ってなかった・・・!」
「・・・・気の迷いだよ。勘違いしないで」
「ありがとう、はやて」
こいつのキスを、何故私は喜んでいる?
こいつがいることを、何故私は歓喜している?
決して、こいつが好きなわけじゃない。
こいつのしつこい行動がないと、苛々するから。
こいつが傍にいないと、不快だから。
こいつを、愛しいと思っているからじゃない。
決して、違う。
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