【謝らないで】
いつからだろう。
こいつが、いつも張り詰めていると気づいたのは。
初めは、勘違いだと思った。
けど、私は見たんだ。
その日は眠れなくて、仕方なく外に出た。
そうしたら、あいつがいた。
いつもいつも、笑顔で笑うあいつが。
何もないそこで、小さな体をさらに小さくして、自分を抱きしめているそれを。
私は、見たんだ。
声をかけるのさえ躊躇うほどに、苦しそうなあいつの姿。
初めは泣いているのかと思って。
なのに、とても辛そうなのに、あいつは泣いていなかった。
昼間は、あんなに喜怒哀楽の激しいやつが。
まるで、泣くこと自体を知らないかのように。
衝撃だった。
頭を鈍器で殴られたのかと、錯覚するほどに。
何を見ていたんだ、と。
あいつの、何を。
私の中にいるもう一人の私に、問われた気がした。
お前は、いつもそうやっているのか?
誰もいない中で。
暗闇の中で。
世界から身を守るかのように、
世界を拒絶するかのように、
いつもそうやって、震えていたのか?
守ってやりたい。
刃友だから。
それはいつの間にか、
クロが大切だから。
クロが愛しいから。
そういった感情へと、変わっていた。
教えてくれ、クロ。
お前は、何に怯えてるんだ?
お前は、何を怖がっているんだ?
私では、お前を救えないのか?
なあ、教えてくれ、クロ。
私のできる限りのことをするから。
お前のために。
「・・・・・・・・・・」
私のベッド。
力なく眠る、クロがいる。
無理矢理、抱いた。
それなのに。
それなのに。
行為の最中、クロはずっと謝っていた。
本来それを言わなければいけないのは、私のはずなのに。
全て、自分が悪いと思っているかのように。
そんなことないんだ、クロ。
お前が悪いわけじゃないんだ。
違うんだ。
だから、泣きながら受け入れないでくれ。
だから、傷つきながら受け入れないでくれ。
無理矢理抱いておいて、なんて矛盾。
ごめんな?クロ。
ごめん。
お前は、何も悪くないんだ。
誰にも言いたくないこと、お前にもあるんだよな?
私にも、ある。
それなのに、それに苛立ってお前を傷つけた。
「・・・ぁやな・・・・ごめんな・・・さい・・・・」
「っ!」
目頭が熱くなって。
唇が震えた。
「ごめん・・・っ・・・・・ごめん、クロ・・・っ」
情けなく溢れ出る涙を、顔を覆うことで隠す。
「ごめんっ・・・・」
お願いだから。
頼むから。
夢の中でまで、謝らないで・・・っ。
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