【踊る私】





























 私はどちらかというと、人を手玉に取るタイプで。

 手の平で踊るみんなを見て、一人笑っているタイプ。

 今までずっとそうであったし、これからもずっとそうであると思っていた。


 いいえ、実際にそう。

 ただ、一人の子以外は、というだけ。


 その子の名前は福沢 といって、苗字からもわかるだろうけれど祐巳ちゃんの妹。

 妹(プティ・スール)の方ではないわよ?


 彼女はとてつもない魅力をもっていて、私でさえ心を惹きつけられる。

 妖艶で、大人っぽくて、色っぽい。

 彼女を表現しろといわれたら、その言葉しかでないくらいに。

 私たちよりも3つも下だとは、思えない。

 そんな子。


 彼女は、誰も彼も虜にする。

 蓉子たちとの争奪戦の末、ようやく手に入れることができたのに。

 それなのに、彼女は抱きしめようとする腕をするりと避けて。

 キスをしようとしても、さらりとかわされてしまう。

 近づけば遠のかれて、遠のけば近づかれて。

 思い通りになんて、ならない。


 それらは全て、実質的な意味ではなくて、心的な意味で。


「・・・・・昨日、蓉子とキスしていたでしょう?」

「あら、見ていたのね」


 くすりと笑うその笑みの、なんと妖艶なことか。

 こちらが追求しているのに、私が壁際に追い込まれているような、変な感覚。


「・・・・・あなたは、私の恋人でしょう?」

「そうだったかしら?」

・・・・っ」

「嘘よ、そんな顔しないで」


 触れる程度のキス。

 舌を絡めると、当然のように応えてくれる。

 14歳らしからぬ舌使いに、翻弄されるのは決まって私。


 たぶん、にとってはキスなんて浮気に入らないのだろうけど、私にとっては浮気だわ。

 それでもは、恋人以外と一線を越えることは絶対にしない。

 けど、それ以外ならば、甘受する。


 ねえ、あなたは知っている?

 私がその度に、悲しくなることを。

 その度に、嫉妬をしてしまうことを。


 恋が、こんなに醜い感情を呼び起こすものだなんて、今まで恋なんてしたことのない私は知らなかった。


 何度、他の人を見つけようと思ったかしら。

 けど、駄目なのよ。

 あなたという存在を知ってしまった私には、あなた以外をそういう対象で見ることはできないの。

 私には、あなただけなのよ。


「悲しそうな顔」

「誰のせいよ・・・」

「私かしら?」


 クスクス笑うその華奢な体を、その場に押し倒した。

 抵抗もせず、は私を見上げてくる。


「私だけでは不満?物足りないの?」

「そんなことあるはずないじゃない」

「なら!私だけを見なさいよ!私以外と、キスなんてしないでよ!」


 目頭が熱くなって、私はあわてて顔をそらした。

 まさか、泣いてしまうなんて・・・!


 けれど、の手によって、彼女のほうに向かされてしまう。


「やめて・・・!」

「あら、どうして?」


 目元に、繰り返されるキス。

 それは、腹が立つくらいに優しくて、私はそれに酔ってしまう。

 これが、彼女の持つ甘い毒。


 私を含め、大多数がそれに酔いしれ、我を失うのだ。






















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