【初接触】
「ちょっとそこのお姉さん」
「俺達と、良いところに行かない?」
祥子は男達の言葉を無視して、歩き続ける。
しかし、男達はそれで諦めるはずもなく、祥子の肩に手をいてきた。
「無視しなくても良いじゃん。な?」
「そうそう。俺達は、優しいんだぜ」
男達はそう言うけれど、彼らの容姿は世に言うヤクザのそれだった。
「離してください!」
触られた途端、祥子はぎっと男達を睨みつける。
が、女子高生である祥子の睨みなど、男達に聞くはずもない。
むしろ、男達は片眉をあげると、祥子の肩においた手に力をこめた。
その途端、痛む肩。
「っ離してください!!」
痛みに声を荒げ、男の手を振り払おうとする祥子だったけれど、反対にその手をとられてしまう。
「お嬢ちゃん。親から言われなかった?ヤクザには逆らわない方が良い、って」
「あんまり拒否されると、俺達傷ついて何するかわかんないよ?」
もしかしたら、顔に傷つけちゃうかも。
そんなことを言いながら、祥子の手を掴んでいる手に力をこめる男達。
鋭い睨みの恐怖と、男達に触れられているという嫌悪。
「離し―――っ!!」
「君ら、もう少し女性の扱い方勉強した方が良いよ」
そこで聞こえたのは、呆れたような声。
同時に、祥子の体は何者かに引き寄せられていた。
「んだテメェ!!」
「大丈夫?」
男の怒鳴り声を無視して、その人物は祥子を抱きしめたまま顔を覗き込んできた。
祥子の目に入ってきたのは、自分よりも幼い顔立ちをした少女の顔。
「あ、ありがとう」
急なことに戸惑いながら、それでも何とか感謝の言葉を紡ぐ。
少女はそんな祥子を安心させるように微笑み、頭を撫でてやる。
「もう、大丈夫だからね」
「無視してんじゃねぇ!!」
「俺達が組のもんだと知ってんのか!?」
乱入してきた少女に、顔を怒らせて怒鳴るヤクザ男達。
そこに、
「お嬢、どうなさいました」
ヤクザの男達よりも、背が高く、ガタイも良い男がやってきた。
黒スーツに、黒いサングラス。
上格のヤクザであるのが、その姿と雰囲気でわかる。
「「なっ!?」」
現れた、あきらかに自分たちも強いであろう男に、ヤクザ男達は驚きの声をあげた。
「組のやつらさ。上杉、この人を車で家までおくってあげて」
「かしこまりました」
再び、どこからか同じような男が現れた。
「え?」
祥子は少女の口からでた言葉に、驚き見つめる。
それに気づいた少女が、ニッコリと無邪気な笑顔を祥子に送る。
「心配しないで良いよ。こんな姿だけど、信用出来る人間だから」
「お嬢。車をお持ちしました」
3人目の男が現れ、運転席から出てきた。
「ありがとう。さ、のって」
「え、でも」
「また、こいつらみたいなのに出会うかもしれないし。ほら」
困惑した様子の祥子を、無理矢理黒塗りのベンツに乗せ、ドアを閉める。
祥子を乗せた車は、さっさと発車してしまった。
車が見えなくなると、少女は2人の男に恐怖し、固まっているヤクザ男達へと目をむけた。
その表情は、呆れ。
「馬鹿だね〜。自分の親の娘が、誰だか知らないなんて」
その言葉に、目を見開くヤクザ男達2人。
「お嬢、この2人はどうしますか?」
上杉と呼ばれた男が、少女に伺いをたてる。
少女は、祥子がいた時とはうって変わって、刃のような雰囲気を醸し出していた。
表情も、氷のように冷たい。
「殺せ」
少女は、表情と同じ、氷のような声で男達に告げた。
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