【テスト】

	


  「ふう」

「時間になったので、テストを回収します」

 巳星がペンを置いたのと同時に、担当の教師がそう言った。

 由乃にテストを渡す巳星は、いつもの倍くらい満足そうな表情をしている。

「あら、できが良かったの?」

「まあね」

 微かに口端を上げる巳星に、由乃も微笑みを深くした。

「そう。良かったわね」

 頷く巳星。

 何処か、鼻歌でも歌いそうな勢いだ。

 まあ、それほどにご機嫌であると気づけるのは、いつも一緒にいる山百合会メンバーか、蔦子くらい
しかいないのだろうけれど。

「いくつくらいいけると思う?」

 巳星が頭良いことをまだ知らない由乃は、そう問いかける。

「ん?50点」

 さらりと答える巳星に、由乃は笑った。

「50点って、赤点ギリギリの点数じゃない」

「赤点にならなければいいから」

「まあ、人のこといえないけどね」

 巳星は微かに、由乃は楽しそうに顔を見あわせて笑った。



「・・・・・何よ、これ」

 巳星と由乃の担任であり、歴史の教師でもある石塚真生は一枚の解答用紙を見て、唖然としていた。

「あら、石塚先生どうしたの?」

「あ、五十嵐先生」

 そんな真生に声をかけたのは、志摩子と祐巳の担任であり、国語の教師である五十嵐涼子。

「これ、見てよ」

 その解答用紙を、涼子に渡す。

「あら、これ巳星さんのじゃない」

 書かれている名前に、涼子は自然と笑みを浮かべた。

 思い出すのは、つい最近話した巳星との会話。

「そう。きっと、あの時の仕返しなんだと思うわ」

「仕返し?」

 首を傾げつつ、テストの内容を見る。

「プッ!」

 書かれている答えに、涼子は思わず吹いてしまった。

「アハハハ!巳星さんって、やっぱり素敵だわ!」

「素敵じゃないわよ。それも、きっちり50点分は正解なのよ?」

 真生の言葉に、涼子は目を見開く。

「そうなの?」

「ええ。自分で配分考えて、残りの50点分はそういう答えなの」

 ため息をつく真生だが、涼子は感心したように頷いている。

「やるわね、巳星さん。さすがだわ」

「感心しないで」

「でも、純粋に読んだら面白い答えじゃない?注釈もはいっているし」

 涼子はそういい、用紙の一番上へと目をむける。

「まあ、それは否定しないわ」

 苦笑する真生。 一番上には、 




 注釈>  トップ      =水野蓉子

      凸さま     =鳥居江利子

      源氏     =佐藤聖

      眉      =小笠原祥子

      銀杏(王子) =花寺の生徒会長

      銀マニ    =藤堂志摩子

      百面     =福沢祐巳

      ヘタレ    =支倉令

      青信号    =島津由乃
      
      
 と書かれている。




 問) フビライ・ハンは、日本に何をしたかを書きなさい。

  答) 王子が似非笑顔を振りまいて、トップ・凸さま・源氏が起こした自然現象によって銀杏
まみれになった。
     (半径1キロは近寄るべからず)


 問) モンゴルで、英雄と言われている人物の名前は。

  答) 凸さま。
     (額が光って、神々しいから)


 問) 1185年、○○が滅亡し、○○が政権を握った。○○にはいる言葉は?

  答) ヘタレがヘタレ過ぎて滅亡し、青信号が怒ってどつき政権を握った。
     (ヘタレはマゾかもしれない)


 問) 1600年。美濃国(岐阜国)の関ヶ原の戦いで行われた戦いはなんというか。

  答) お嬢さま対決。
     (お嬢さま口調でずっと話す)


 問) その戦いは、誰と誰の戦いか。

  答) 百面と青信号。
     (凸さまとヘタレでも可)


 問) その戦いで、勝利を収めたのはどっちか。
  
  答) 引き分け
     (凸さまとヘタレの場合は、凸さま圧勝)


 問) 1637年。島原・天草一揆(島原の乱)で、大将をつとめていたのは若干17歳の誰?

  答) ヘタレ。それを影で操っていたのが、凸さま。
     実質、凸がボスだった。
     (きっと嗤いながら操ってたはず)




 とまあ、50点分がこのような感じで書かれているのだ。

 他の50点分は、全て正解しているのにもかかわらず。

「本当、巳星さんは面白い子だわ」

「あの子の話を聞いていると、山百合会の子達が身近に感じるわ」

「まあ、これを一般の生徒に見せることは出来ないけどね」

 涼子の言葉に、真生は苦笑しながら頷く。

「そうね。神聖化している子もいるから、見せたらきっとショックを受けるわ」

「ええ。とっても、見せたいけれどね」

「凄くね」

 2人は、クスクスと楽しそうに笑っていたのだった。



「はっくしゅっ」

「あら、巳星ちゃん風邪?」

「いや、どうだろう?」

 小笠原祥子の言葉に、わたしは口端を上げる。

「どういうこと?」

「噂されてるんじゃないかな、と」

 島津由乃に答え、わたしはお弁当のフタを開けた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うそぉ」

 お弁当の中身を見て、わたしはそう呟く。

 いや、呟かざるをえなかった。

「みごとに真っ白ね」

 クスクスと笑うのはトリオ達。

 笑い事じゃねぇ!

 もう、言葉遣いなんて気にしてられるかぁ!(泣

 なんでさ!

 いくら料理が苦手だからって、白米はなくない!?

 せめて、梅干しいれようよ!

 父さんの方ばかりに力を入れるのもわかるけど、娘の方も少しは気合いを入れてください!!

 お願いしますよ!

「相変わらず、巳星ちゃんのお弁当は飽きないわね」

 ニコニコと微笑むのは水野蓉子。

「ソウデスカ」

 箸で、ちびちびと白米を口に入れる。

 ・・・・寂しいね。

 もう、素で泣きそう(涙拭い)

 さすがに頑張り屋のわたしでも、挫けちゃう。

 だって、女の子だもん。

 キモッ(即

「巳星ちゃん、お弁当自分で作れば?」

 そういうけどね?支倉令。

「そうしたいけど、誰かさん達のおかげで毎日疲れてるから、早起き出来ないんだよね」

 そう、誰かさん達のせいでね?

 全員を見渡す。

 特に、トリオ達を。

 口笛を吹いて目を逸らすという古風な行動をするのは佐藤聖のみで、水野蓉子と鳥居江利子はニッコリと
微笑みながらわたしの視線を受け止めている。

 その様子は、まるで『私じゃないわよね?』といっているかのようだ。

 ・・・・・あんたらだよ。

 あんたら以外に、誰がいるよ。

 ヤバイ、ため息つきまくりだ・・・・。

 わたし、幸せになれないかも(泣

 いや、かもじゃなくて、確実になれないね。

 はは・・・・・。 






    あとがき。

 元案はミユさま。
 こんな感じでどうでしょう?笑いは少な目に仕上がりました。
 もっとギャグをいれたかったけど、頭が作動しなくてこんな感じに・・・・・。
 この話は、一応4話以降の話となります。
 いわゆる、高校に入って初めての実力テストみたいな感じです。
 
          

 

トップに戻る 小説入口へ戻る  目次


 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送