【ようこそ】




















「それでは、明日から令と巳星ちゃん、祥子に、アストラエアに短期入学してもらう、ということで」


 水野蓉子が締めくくるように言った。

 良いんだけどさ、一つ聞きたいことがあるんだけど。


「なんで、わたしと支倉令、小笠原祥子なわけ?」

「「「面白いから」」」


 うわ、異口同音に言いやがった、こいつら。


「それと、祥子、令、巳星ちゃん。これがカメラ」

「お姉さま?何故カメラなんて・・・・」

「まず一つ、令には巳星ちゃんの制服姿を撮ってほしいから」

「もう一つ、祥子にも、巳星ちゃんの見慣れない姿をとってほしいから」

「巳星ちゃんには、2人の制服姿ね。あ、令の珍妙な姿は特にお願いね」


 小笠原祥子がもっともな質問をしてくれる。
 
 が、水野蓉子、佐藤聖、鳥居江利子がにっこりと、そんなことをのたまった。


 ・・・・・・・・ちらりと、支倉令へと目を向ける。

 あ〜、隅のほうでいじけてるよ。


「っていうか、たかだか制服でしょ?珍妙になるはずないじゃん」


 フォローする。

 フォローの『ふ』の字にもなってないって?

 ま、良いんじゃない?

 良くある良くある。


「フフフ。それは、ねぇ?黄薔薇さま?」

「そうよね。行ってからのお楽しみ、よね?白薔薇さま?」

「そうそう。もちろん、制服以外の着用は却下だからね」

「・・・・・・令、祥子、ずっごい嫌な予感」

「巳星ちゃんも?わたしも、さっきからずっと頭の中で警告が鳴ってるんだけど」

「私もよ。ああいうお姉さま方の笑顔は、危険だわ」


 お互いに顔を見合わせ、ため息をつく。


「祥子さま、お姉さま v 巳星さんの写真、綺麗に撮ってくださいね♪」

「お2人の(撮った写真の)お帰り、お待ちしていますvv」

「え、えと、お姉さま、令さま、巳星さん、お体にお気をつけてくださいね?」


 猪娘と銀杏卿(狂でも可)、そして心優しい令を除いた常識人な福沢祐巳の言葉に、泣きそうになる。

 というかよしのんも銀マニも、わたしのことは一切触れんのか。

 いや、小笠原祥子と支倉令に向けたような励まし(?)は別にいらないんだけどね。


「それと、制服については、すでに向こうが用意してくれているようよ」

「向こうに着くまでの秘密、ですって。あそこの理事長も面白い方よね」


 うふふ、とか笑うな、トップに凸。


「はぁ。カメラちゃんがいけないのは、痛いな〜」


 勝手に痛がってろ、そこのオヤジ。



 











「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」


 わたしたちは今、アストラエアの門の所に来ています。

 森の中にあるような、アストラエア3校。


「・・・・・でか」

「お、大きいね」

「ひ、広いわね」


 さすがの小笠原祥子も、そう言っちゃうくらい大きいです、この学校。


 っていうかすいません、あそこに見える連なった塔みたいなのはなんですか?

 何用の建物なんですか?


 きっと、今のわたしたちはさぞマヌケな顔をしていたに違いない。

 いやだって、リリアンの比じゃないよ、この広さ。

 まあ、3校揃ってるんだし、仕方がないとも思うけど・・・・。


「・・・・・・令、祥子、迷ったら命はないと思おう」

「・・・・・そうだね」

「・・・・・・そのようね」

「とりあえず迷ったら、狼煙を上げて。すぐに行くから」

「うん、わかっ・・・って、持ってないよそんなの。由乃じゃあるまいし」

「由乃ちゃんは持ってるのっ?」

「あ、うん。なんか、通販で買ったって」

「あの子も、変わってるわね・・・・」


 よしのん、持ってんのかよ、狼煙。

 まあ、それくらいじゃないと、あの学校じゃ埋もれちゃうしね。

 個性強いから、うちの学校・・・(遠い目


「うふふ。リリアン女学園の方々ですわよね?」


 ハッとして振り向けば、黒髪で頭の両側に赤いリボンをした人が笑いながら近づいてきた。


「はい。私、リリアン女学園で紅薔薇のつぼみをしております、小笠原祥子と申します」

 
 さすが小笠原祥子、驚いてなんていません、みたいに自己紹介。

 でもね、紅薔薇とかいっても、わからないと思うの。

 そう思うのはわたしだけ?


「存じておりますわ。小笠原の名前は、有名ですもの」

「ありがとうございます。それで、こちらが」

「初めまして、青薔薇さまの須加巳星です」


 結局、わたしも職名暴露。

 だって、小笠原祥子が言ってわたしが言わないのもねぇ? 


「は、初めまして、黄薔薇のつぼみで支倉令です」

「初めまして。源千華留と申します」


 自己紹介しつつ、わたしたちの目線は違うところを見ていた。

 3人揃って、彼女の足。

 いや、変な趣味があるわけではないよ?

 ただ、ね。


「?私の足がどうかなさいましたか?」

「あ、いえ。ね、令、祥子」

「は、はい。すいません、無遠慮に見てしまって」

「も、申し訳ありません」

「いえいえ。ではご案内しますので、ついてきてくださいね」


 彼女のあとについてしばらく歩いていると、目に入る3種類の制服を着た生徒達。

 そこでもわたしたちは、やはり足に目がいってしまう。

 これって、もしかして職業病?


「・・・・・ねえ、祥子さん、令さん。どの制服も、スカート短くありませんか?」

「み、巳星ちゃんも思った?わたしもさっきから、そればっかりが気になって」

「私たちも、あれを着なければいけないの、よね?」

「・・・・あんなの、屈んだら下着見えるって」

「あ、巳星ちゃんでも、そういうこと気にするんだ」

「いや、するでしょ。特に、リリアンの長いスカートで慣れてるし。私服でスカートなんてはかないし」

「だよね・・・。わたしも、制服以外はパンツしかはかないんだけど」

「私は良くはくけれど、あんなに短いのはさすがに経験ないわ・・・・」


 3人とも、変態さんよろしく、な感じで目に入る生徒の足ばかりを見てしまう。

 そう、あの祥子までもが。

 きっと、自分も着なければいけないからだろう。


 ああ、そこの人、別に怪しいもんじゃないよ?

 だから、顔を赤くして逃げないで。

 いやだから、逃げないでって!


 とりあえず、これ以上誤解されるのはいただけない。

 何とか頑張ってスカートから目を離す。

 もう、溜息ばっかりだよ。


「トリオが妙に楽しそうにしてたのは、これか・・・・」

「そのようね・・・・・」

「みたいだね・・・・」


 ああ、ムカつく!


「うふふ。確かに、リリアンのスカートは長いですわよね」


 急に振り向かれ、柔なハートは土っ器土器。


「そうですね。引き摺りそうになるくらい長いですから」

「ふふ、そうね」

「いや、巳星ちゃん、祥子。それはさすがに」

「冗談だよ、気付け」


 小笠原祥子は、ちゃんと理解できたぞ?


 軽く支倉令の頭を叩いておく。

 情けない顔をするでない。


「うふふ。仲が宜しいんですのね」

「まあ、それなりに」

「ええ、それなりに」

「それなり!?」

「黙れ」

「うるさくってよ、令」

「うふふ。リリアンはお嬢様学校だと伺いましたが、あなた方のような方もいらっしゃるんですね」


 まあ、お嬢様学校だけど・・・・。


「人には個性というものがある。お嬢様、というのも個性と見られがちだけど、そんなのは所詮、親がお金持ちだからに過ぎない。お嬢様と一括りにされては困ります。お嬢様にだって、ちゃんと個性があって、普通の人たちと変わらないのですから」

「・・・・・それは、そうですわね。失言でしたわ」

「いえ。・・・・・で、何でさっきからこっちを凝視してるわけ?令は」

「巳星ちゃんが、敬語つか、いたっ!」

「お前、ほんと黙れ」

「酷いよ、巳星ちゃん。祥子も驚いたよね?」

「いえ?私はみんなよりも長く、巳星ちゃんに敬語を使われていたもの」

「ずるいよ、祥子」

「どうとでも仰い。事実なのだし」

「うふふ v 」


 楽しそうに笑われてますよ?令嬢?

 まあ、失笑じゃなくて良かったね。

 
「キリッとしてたら、格好良いんだけどね、令も」

「え、本当っ?」

「それはどうかしら?結局令だし」

「あ、そっか。キリッとしてる令は、支倉令じゃないよね」

「あ、酷い、2人とも」

「うふふ、本当、仲が宜しいですね、お3方は。でも、出来れば巳星さん、私とも仲良くしてくれると嬉しいわv」


 と、何故か急に腕に抱きつかれた。

 ど、どうしたの?この人。

 口調も、少しフランクになったし。


「あ!ち、千華留さん、離してください!」

「・・・・・・・・・・(ムス」

「さ、行きましょう、巳星さん。祥子さんと令さんもv v」


 令、君初めての学校ですでに、無視されてるよ?

 問題ありじゃない?それ。

 威厳皆無じゃない?

 いや、今更だけどさ。


 って、引っ張らないで!




















「さ、これがお3方の制服よv あの部屋で着てきてくださいな」


 思わず、目の前でそれを広げてしまう、わたしと小笠原祥子、支倉令。

 
 ・・・・布の面積、狭くないですか?

 特にスカート。


「・・・・・これを、着るの?」

「改めて見ると、本当に短いわね・・・・・」


 なんとなく、支倉令も小笠原祥子も、顔が青い。

 うん、気持ちわかる、


「うふふ v 、巳星さんの制服は聖スピカ女学院のものよ。令さんのが私の学校の聖ル・リム女学校のもの。祥子さんのが聖ミアトル女学園のなの」


 行ってらっしゃい、という感じで背中を押され3人でその部屋の中に入る。


「・・・・悪夢だ」

「祥子の良いな。その長さだと、膝まではありそう」

「そうね。あなたたちの布切れと比べると、酷くホッとするわ」


 布切れとか言われたよ、スカート。

 わたしと令はその布切れを見て、それから顔を見合わせ、ため息をついた。

 それは深い深い、崖のようなため息。


「がんばろーね、令ー(棒読み」

「そうだね・・・・」

「はぁ・・・・。これから数日、この制服を着なければいけないなんて・・・・」

「「言わないで」」


 











「あぁ、もう、ほんと、マジやだ」

「「・・・・・・・・・・・・」」


 その沈黙が痛いわ!

 どうせ、似合わないよ!!

 ああ、知ってるよ!

 だからどうした!!


 ・・・泣かせて・・・・っ(切実



 ―――カシャカシャ


「って、なに写真撮ってるわけ!?」


 それも2人して!!

 お前らは某桃色夫婦か!!


「これは、お姉さま方が写真を強要した意味が、やっとわかったわ」

「なんていうか、スカートを押さえてる感じが、良い・・・・」


 うわ、『良い』、ってなに!?

 顔、凄い緩んでるよ!?支倉令!!

 なんか、色々とヤバイよ!?


 って、いい加減写真撮るのやめろ!!


「なんだか、見えそうで見えないのが、誘うわよね」

「何を!?」


 自分、なに言ってますか!?小笠原さん!!


「うん。男性の気持ち、わかったかも」

「なんで!?」

「それにしても、令、あなたあまり似合わないわね」


 ええ!?

 急に話し変りますか!?

 ついてけねぇよ!


「そ、それは言わないで。祥子は良いよね、なんか、制服に違和感ないから」

「・・・・・確かにね。ただ、リリアンみたいにワンピースじゃないから、身体の線はっきりしてはいるけどね」


 いわゆる、ぼんっきゅっぼんっ。だね。

 
「っていうか、足寒すぎ」

「うん。スースーする」

「巳星ちゃんや令は、特にいつもが長いから違和感を強く感じるでしょうね。それにしても・・・・・」


 何故か、急に小笠原祥子が、人の足をじっと見てきた。

 それから、徐々に上がっていく視線。


「綺麗よね、身体」

「え、な、なにが?」

「いえ。こういう機会がないと、巳星ちゃんの生足なんて見る機会ないじゃない?ましてや、そんな体の線がよくわかる服なんて着ているの、見たことないもの」

「うん。同感。目に焼付けとかないと」

「なに言ってるの。旅行にも行ったことあるんだし、銭湯にだって行ったことあるじゃん」

「「それとこれとは別(よ)」」

 
 習うように、支倉令までじっと見てくる。

 
 い、異様にハズイ。

 スカートの短さも相まって、ドン、倍!みたいな。

 わからない?

 なら、ニュアンスで理解して。



 ―――コンコン


「お3方とも、着替え終えたかしら?」

「ええ。今行くわ。行きましょう、巳星ちゃん、令」

「りょ、了解」

「うん。あ、最後に一枚」

「消えろ」


 そのカメラ、壊してしまいたい。







「・・・・・素敵・・・・ v v v 」

 
 何故か、こちらを見てうっとりとしたような表情をする、源千華留嬢。

 その視線が、ちょっと危ない、というか危険です。

 主に、わたしの身が。

 
「巳星さん、あなた勿体無いわ!」

「え、な、何が?」

「細く、すらりとした足!きゅっと締まった、折れてしまいそうなほどに細い腰!綺麗なお胸!それを、リリアンの制服で隠してしまうだなんて、勿体無さ過ぎるわ!!」


 そ、そんなこと力説されても。

 いや、そこで何を頷いている、馬鹿2人。


 いまだ続く演説(?)に痺れを切らして、というかいい加減聞きたくなくて、両隣にいる2人の脇をつついた。

 真剣に聞いてる場合じゃないんだってば!

 『ええ、わたしもそう思うわ』『わたしも同感』、なんて、相槌うってる場合じゃないだろ!!


「まさに、巳星さんはこの世に使わされた天―――」

「千華留さん。そろそろ、案内を再開してくださると嬉しいのだけれど」

「あ、そうよね。ついてきてくれるかしら?」


 小笠原祥子の言葉に、瞬時ににっこりとした微笑へと変え、歩き出す源千華留嬢。

 な、なんなんだろう、あの人。

 もしかして、ここも不思議学園?


 
 
















 あとがき。

 
 試書き?

 この続きを書くかは不明。

 ノリにのったら書くかもしれません。

 巳星を久しぶりに書きましたが、結構早く書けました。

 意外と楽しかった(満足)。

 でも、巳星のキャラちょっと違うかも。

 あ、スカートの短さに恥ずかしがっているのは、間違いじゃありません。たぶん。






 
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