【恋人】

	  










「好きだよ、巳星ちゃん」





 ・・・・・・・・・・・・・・・・。




「いや、違う。なんか違うよね」





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




「好きです、巳星ちゃん!」




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




「これも違う」




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




「愛してるよ、巳星ちゃん」




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もう、入って良いかな?

 にしても、もう10分くらいこんなことやってるよ?この人。

 っていうかね?

 薔薇の館で、告白の言葉練習すんなよ。

 そりゃあ、初めは驚いたけどさ・・・・・。

 10分もこんなの聞かされ続けたら、飽きるっちゅうねん。

「世界で一番、愛してるよ」

 くさっ。

「これだ!」

 何が、これだ!だよ。

「あのさ、もう少しシンプルに言った方が良いと思うよ?」

 思わずドアを開け、声をかけてしまう。

「え゛・・・・・」

 ドアを開ければ、顔を凍らせた支倉令。

「み、巳星ちゃんっ!?」

「裏返ってるから、声」

 苦笑しながら言うと、支倉令は途端に顔を真っ赤にした。

「いいいいいい今の聞いてたの!!?」

 どもり過ぎだから。

「うん。10分くらい」

「えええええ!!!?」

「声デカッ」

 そう呟くも、支倉令の大声にかき消された。

 腹式バッチリだね w

「それより、ここ一応、人が来る薔薇の館だからさ、あんまりそういうの練習しない方が良いと思うけど」

 とりあえず、注意をしておく。

「ごごごごごめんねっ!」

「で、今のって、本気なの?」

 あ、湯気が出た。

 そんな幻覚が見えるほどに、支倉令の顔は真っ赤になった。

 それでも、支倉令は頷く。

「ほ、本気っ」

「ふ〜ん」

 そう返すと、泣きそうに目尻を下げる支倉令。

「ふ、ふ〜ん、って・・・・・」

「良いよ、付き合おう」

「へ?」

 マヌケな顔になった支倉令に笑いながら、わたしはもう一度言った。

「だから、付き合おうよ」

「え?え?ええええ!!?」

 だから、声でかいって。

「いっ、良いの!?」

「うん。だって、わたしも支倉令のこと、好きだし。そういう意味で」

「・・・・・・・・・・ええええええええ!!?」

 ・・・・・・耳の鼓膜、破れるかも。








「まだ、耳痛い」

「ご、ごめんね?」

「良いけど」

 可哀想なくらい項垂れる令の肩を叩く。

「なに?」

「ねえ、ちゃんと言って」

 なんのことかわかったらしい令は、顔を赤くしながらも真剣な表情でわたしを見つめてきた。

「巳星ちゃん、好きだよ」

 わたしは、それに笑みを返す。

「わたしも、令のこと好きだよ」

 そう言うと、恥ずかしそうな笑みを浮かべる令。

 そんな令に、わたしは寄りかかった。

「いつからわたしのこと好きだったの?」

「実は、初めて見た時から。巳星ちゃんは?」

 嬉しそうにわたしの顔をのぞき込む令に、わたしは笑う。

「わたしは、たまたま剣道部を覗きにいった時、竹刀を振るう令を見て好きになったの」

 ・・・・・ちょっと、頬熱いけど、気にしない。

「そっか」

 腰に、令の腕が回った。

「大好きだよ、巳星ちゃん」

「うん」

 そう答えた時、頬に柔らかい感触。

 顔を令へと向けると、耳まで赤くした令がいた。

 わたしはそんな令に笑みを浮かべ、お返しに同じ場所にキスをした。       







   

 

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